白内障・緑内障・加齢黄斑変性…加齢によりリスク高まる「目の病気」の症状と手術&予防法

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加齢とともに発症リスクが上がる目の病気ですが、きちんと対策をしていれば発症や進行を遅らせられたり、早期治療で治したりすることもできます。『歳をとっても目が悪くならない人がやっていること』(アスコム)を眼科専門医・森下清文さん監修の元で上梓した、わかさ生活代表取締役社長の角谷建耀知さんに、目の病気を悪化させないための予防法を教えてもらいました。

目の病気の代表格「白内障」とは

目の病気の多くは加齢が関係しており、その代表格ともいえる「白内障」。これは、カメラのレンズの役割をしている水晶体が、加齢とともに濁ってしまい、視力が低下する病気です。加齢以外でも、糖尿病やアトピー性皮膚炎、外傷などによって発症することもあります。

「水晶体の中の、核、皮質、水晶体嚢のうち、どの部分が濁るかによって症状は異なります。加齢によるもので多いのは『皮質白内障』と『核白内障』の混合型です」(角谷さん・以下同)

白内障は治療可能。セルフチェックで目の状態を確認

加齢によって発症しやすい白内障ですが、きちんと治療を受ければ治る病気です。いざ発症した際に慌てないよう、そして間違った対応をしないよう準備しておくことが大切です。そのためにまず、セルフチェックで自分の目の状態を、片目ずつ確認してみましょう。

《白内障セルフチェック【1】》
下記の項目で該当するものがあるかチェックしてください
・全体的にぼやけてみえる
・ものが二重、三重に見える
・視力が低下した
・明るいところで異常にまぶしく感じる
・薄暗いところで異常に見えにくい
・老眼鏡が不要になった
・青系の色が見えにくい
・ものの境界がはっきりしない
・薄い赤色やピンク色で書いた文字が読めない

《白内障セルフチェック【2】》

「あいうえお」と書かれた画像

上のイラストの5文字が読めるかチェックしてください。

白内障の治療法は点眼薬と手術

白内障の治療法は基本的に点眼薬と手術の2つ。見え方にそれほど支障を感じていない人は、初期の段階では点眼薬で様子見。これだけで水晶体の濁りがなくなるわけではなく、あくまでも進行を抑えるためのものですが、ほとんど自覚症状のない状態で進行を抑制できれば、手術が不要になることもあります。

複数個並んだ目薬

一方、見え方に大きく支障が出ている場合は手術が必要です。

「手術は、水晶体嚢で包まれた濁った水晶体を超音波で砕いて取り除き、代わりに人口の眼内レンズを入れます。局所麻酔(目だけの麻酔)で行われる手術は、痛みを感じることはあまりなく、手術中も会話ができます」

日常に支障が出たら手術を

白内障は合併症を発症しない限り失明することはないため、日常に支障が出ていなければ手術を焦る必要はありません。支障が出ているかどうかの判断も人それぞれですが、「もっとよく見えるほうがいい」と感じたときが手術のタイミング。また、転ばぬ先の杖として手術を選択するのも1つの対策です。

「白内障が進行してしまうと、緑内障の原因になったり、手術自体が難しくなったりするリスクもあります。定期的に眼科医と相談して、むやみに進行させる前に手術をしておいたほうが安心でしょう」

手術を遅らせるためには酸化予防

厚生労働省のデータによると、80歳以上になるとほぼ100%の人が白内障を発症するとされており、誰もがいつかはなる病気です。手術で治る病気ではありますが、手術を遅らせたい場合は、水晶体の濁りの原因といわれる酸化から目を守るようにしましょう。

目のアップ

「外に出るときはサングラスをかけ、食事では抗酸化作用のある成分が含まれる食べ物を積極的に摂るようにしましょう」

発症者の9割が無自覚な「緑内障」

加齢によって有病率が増える「緑内障」。緑内障は視神経に圧力がかかり、障害を起こす病気で、日本人の中途失明原因の第1位です。

「目の病気のなかでも最も怖い病気かもしれません。患者数の割合は年齢とともに増え、70歳以上になると10人に1人が発症するといわれます」

緑内障セルフチェックで目の状態を確認

緑内障についても、片目ずつ目の状態をチェックしてみましょう。

《緑内障セルフチェック【1】》

下記の項目で該当するものがあるかチェックしてください

・視野の一部が見えなくなる
・視野の上のほうがよく見えない
・光のまわりに虹が見える
・目がかすむ
・視力が低下した
・暗いと以前より、見えにくく感じる
・運転中に信号を見落とすことがある
・目を休めても症状が変わらない

《緑内障セルフチェック【2】》

黒い点が描かれた新聞

【1】新聞の株式欄を準備し、中央にマジックで5mmぐらいの大きさの点を書く
【2】新聞を目から約30cm離し、片目をふさいで、塗りつぶした点をもう片方の目でじっと見る

セルフチェック【1】で1つでも該当する項目があったり、【2】で視野に欠けたところがあったり、一部分が暗く見えたりした人は、緑内障の可能性があるため、きちんと眼科で検査を受けましょう。

「『視野が欠ける』とよく言われますが、実際の患者さんは『なんとなく見えにくい』『その部分がぼやけて見える』といった症状の方が多いようです」

発見が遅れやすい緑内障

日本人に多いのは、視神経が敏感でちょっとした刺激に対して反応してしまっている状態である「正常眼圧緑内障」。視神経にダメージを受けると少しずつ視野が欠けていきますが、進行は遅く、欠けている状態に目が慣れてしまうため、視野が欠けていっていることに気が付きづらいという特徴があります。

「緑内障の初期は鼻側階段という視野の変化から始まることが典型的とされます。鼻側階段は、鼻側(右目であれば左側、左目であれば右側)の上のほうで視野が欠けた状態になります。この部分の視野変化は、片目のみが欠けていても反対の目がカバーしてくれるため、自覚症状が出にくいのです」

緑内障治療は点眼薬、レーザー、手術

緑内障治療の最初の選択として多いのは、点眼薬で眼圧を下げる治療。眼圧を下げると緑内障の進行が遅くなるためです。点眼薬で効果が出ない場合はレーザー治療を検討し、レーザー治療でも眼圧が下がらないときは、手術が検討されます。

「緑内障手術は最近になって飛躍的に進歩し、比較的目にやさしい手術が可能となってきました。術後のトラブルが少ないため、よく行われるようになってきています」

緑内障から目を守るには早期発見と早期治療

緑内障から目を守るために大切なのは、やはり早期発見と早期治療。次の項目に該当する人は、緑内障になりやすいため、60歳を超えたら定期的に目の点検をしましょう。

・強い近視の人
・親や兄弟に緑内障の人がいる人
・ステロイドホルモン剤を使用している人
・目をケガしたことがある人
・血流が悪く体が冷えやすい人
・低血圧の人

このほか、眼圧を上げない工夫をすることでも緑内障の進行を抑えられるため、眼圧を上げないように気を付けることも大切。長時間うつむいたままの仕事や、長時間のスマホや読書も眼圧を上げる可能性があるため、姿勢を戻して眼圧を元に戻すようにしましょう。

「また、眼球を強く押したり、首が強く締まるような洋服を着たり、ネクタイを強く締めたりしても眼圧が上がると言われます。緑内障を遠ざけるために、できることから始めてみることにしましょう」

主に加齢が原因の「加齢黄斑変性」

主に加齢が原因で起こる「加齢黄斑変性」は、目の網膜の中心部にある黄斑部が老化によって変性し、視力が低下したり、ものがゆがんで見えたりといった症状が起こる病気です。

目を押さえる女性

目の網膜にある黄斑部が老化によって変性し、不調の原因に(Ph/photoAC)

「網膜のなかで視力を司る黄斑部は、細かなものを識別したり、色を見分けたりする働きをしています。特に重要な部分が、黄斑部の中心にある『中心窩』。加齢による変性が中心窩まで及ぶと、日常生活に支障をきたすほど視力が低下してしまいます」

加齢黄斑変性もセルフチェック

加齢黄斑変性についても、片目ずつセルフチェックをしてみましょう。

《加齢黄斑変性セルフチェック【1】》

下記の項目で該当するものがあるかチェックしてください。

・ものがゆがんで見える
・視野の中央がよく見えない
・視野が暗くなる
・ものがぼやける
・視力が低下した
・ものが小さく見える
・色が以前と違った色に見えることがある

《加齢黄斑変性セルフチェック【2】》

黒い点が描かれた方眼紙

黒い点に欠けや歪みがないかチェック(Ph/『歳をとっても目が悪くならない人がやっていること』(アスコム)より)

上のイラストを目線と平行にして30~40cm離し、片目で真ん中の点を見つめ、どのように見えるかチェックしてください。

セルフチェック【1】で該当する項目があったり、セルフチェック【2】で真ん中の黒い点が欠けて見える、歪んで見える、薄暗く見えるといった状態だったりした場合は、黄斑部の病気が考えられるため、眼科検査を受けるようにしましょう。

加齢黄斑変性の治療法

加齢黄斑変性のうち、日本人に多いのは、通常では起こらない血管(新生血管)が伸びてきて悪さをする「滲出型」のタイプ。滲出型タイプの治療で最初に選ばれるのは、「抗VEGF療法」です。新生血管の発達に関係しているVEGFという物質の働きを抑える薬を眼球に直接注射する方法で、注射は1分ほどで終了するそうです。

「ただし、加齢黄斑変性には再発のリスクがつきまとうのも事実です。定期的な治療が必要となる場合が多いことを忘れないでください」

加齢黄斑変性の予防には酸化防止が大切

加齢黄斑変性には加齢が深くかかわっていますが、野菜不足の偏った食事をしていたり、不規則な生活をしていたり、紫外線を浴びていたり、タバコを吸っていたりするとなりやすくなります。

菓子パン

野菜不足や生活習慣も影響する(Ph/photoAC)

「抗酸化作用のある栄養素を摂ることも、加齢黄斑変性の予防や進行を遅らせるのに有効とされています。特に、水晶体や黄斑部に存在する成分であるルテインやゼアキサンチンは、光刺激から網膜を守るといわれています」

目の病気を遠ざけるには定期検診が最重要

加齢とともに発症リスクのあがる目の病気ですが、きちんと治療をすれば治るケースも増えています。「肝心なのは早期に発見し、早期に治療を始めることです」と角谷さん。目の病気の場合、初期段階では自覚症状がない場合も多いため、定期的に眼科健診を受け、気になることがあればすぐに眼科を受診するようにしましょう。

「病気が見つかったときは末期状態ということもあるのが目の病気です。くれぐれも手遅れにならないようにしてください」

◆教えてくれた人:株式会社わかさ生活 代表取締役社長・角谷建耀知さん
かくたに・けんいち。18歳のとき、脳腫瘍の大手術によって視野の半分を失う。自身の経験から、自分のように目で困っている人の役に立ちたいとの想いで、1998年にわかさ生活を創業し、目の健康サプリ「ブルーベリーアイ」などを販売。現在は多数の企業や眼科医と連携して、商品の開発・情報発信を行う。著書に『歳をとっても目が悪くならない人がやっていること』(アスコム)、『長生きでも脳が老けない人の習慣』(同)など。https://ameblo.jp/wakasa-president/

◆監修:医学博士・森下清文さん
もりした・せいぶん。医療法人森下眼科理事長・医学博士。大阪医科薬科大学で研鑽を積み、同大学の講師として、白内障、緑内障、眼底出血などの診療と研究に従事。1991年に大阪市北区で森下眼科を開業。1992年4月から「市民健康講座 目の勉強会」を開始。全国各地で啓発活動を行う。https://morishitaganka.net/

歳をとっても目が悪くならない人がやっていること

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