「裏金問題が許せないから納税拒否!」で受けるペナルティの数々 延滞税、無申告加算税、「無申告逋脱罪」で5年以下の懲役、又は500万円以下の罰金も

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「議員が納税しないなら私も!」は通用するのか(イメージ)

 今年の確定申告シーズンは、SNS上で「#確定申告ボイコット」が拡散。自民党の政治資金パーティーの裏金問題を受け、納税に不満を持った人も少なくなかったようだが、もし本当に裏金問題を理由に納税を拒否したらどうなるのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 会社を立ち上げ、苦労したのは個人の確定申告と会社の決算。そう思うにつけ、絶対に許せないのは議員連中の裏金作りです。国税がヤツらに税務調査をしない限り、こちらも賛同者を募って団結し、みんなで納税拒否を貫きたいほど。このまま私が各種の納税を拒否し続けたら、どういう事態になりますか。

【回答】
 納税拒否を貫徹するのは危険です。税金は国や自治体などの課税主体が納税義務者に対して有する債権です。借金の返済を怠ると、遅延損害金が制裁として加算され、債務は膨らみますが、租税債権でも同様となり、まずは年14.6%の延滞税が発生します。

 また、納税拒否を貫き、納税申告しなくても、税務署は調査して税額を決定できます。そして、税額の10%の無申告加算税が加算されるのです。さらに従業員への源泉所得税の納付をしなければ、不納付加算税も10%加算されます。

 こうした税金を支払わないと、強制的に取り立てられます。一般の債権は、抵当権などの担保がなければ、裁判所の判決や公正証書などの強制執行できるお墨付きが必要ですが、租税債権は強制力があり、裁判手続を経なくても、滞納処分によって納税義務者の財産を差押えできます。そのため、会社の不動産や機械が公売により売却されたり、会社の債権を取り立てられ、税金に充当されます。しかも納税義務の違反で、刑事罰が科される可能性もあります。租税債権を直接侵害する犯罪を逋脱犯といい、税金を誤魔化す脱税犯がその典型で、厳しく罰せられます。

 納税拒否とは、誤魔化しや不正行為をせずに税金を納めないことなので、逋脱犯の一種である無申告逋脱罪になってしまい、5年以下の懲役、又は500万円以下の罰金となります。

 多数の同調者を募り、納税者の反乱を計画し、それを納税拒否の形で実現しようとすると、『国税犯則取締法』が禁止する不納付等扇動犯として3年以下の懲役、又は20万円以下の罰金で処罰されます。結局、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」(憲法30条)のですから、正しく税金を納め、最終的には選挙で賢明な選択をすべきだと思います。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2024年4月26日号