意外と知らない、2045年の「日本社会の姿」…高齢者数のピークを迎えた後、何が起こるのか

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日本にとって避けて通れない重大な問題です(写真:Auris/iStock)

人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか?についての明らかにした書だ。

※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。

リタイア世代の中心市街地回帰

2045年の政令指定都市の特徴として、中心市街地に人口集約が進むことを挙げたが、政令指定都市以外の県庁所在地や地域経済の核となっている都市も、2045年頃にはこうした傾向が鮮明となる。

これを道府県単位で見れば、全体では人口が大きく減るのに、県庁所在地や県内トップの経済都市ではあまり人口が減らない「県内偏在」として現れる。

人口が最少となる鳥取県の2045年を見てみると、鳥取市が15万7404人、米子市が13万9073人となり、県民の3分の2が両市に住んでいる。一方で、2015年比62.6%減の日野町や61.3%減の若桜町など4町では人口が2000人を下回る。

2045年にかけて41.2%減と減少率が最も大きくなる秋田県の場合でも、秋田市に限れば28.5%減で県全体と比べれば小さな数字だ。秋田県に占める秋田市の人口比率を調べてみると、2015年は30.9%だが、2045年には37.6%に高まる。これを全都道府県庁所在地で計算してみると、那覇市以外のすべてで上昇する。しかも東京23区の上昇率を上回る伸び率のところが少なくない。

言い方を変えるならば、東京の都心部への集中以上に、地方圏では各県庁所在地の便利な市街地への人口集中が進むということだ。

政府がコンパクトシティを唱えるまでもなく、郊外に住宅を求めたリタイア世代のうち、引っ越すだけの経済的なゆとりのある人々は、全国規模で各地域の中心市街地へと回帰が進んでいくともいえよう。

とりわけ人口規模の小さな県庁所在地などの場合、中心市街地は地域にあっては交通の便もよく、買い物や医療機関へのアクセスもよい。バリアフリーといった生活環境面も郊外に比べれば進んでいる。「年を取って行動範囲が狭まる前に住み替えておこう」という考え方の人が増えるということだ。

同一県内2地域居住

2045年の日本社会は、2042年に高齢者数のピークを迎えた直後の時期でもある。

社会の支え手が減る中で、とりわけ大きな課題となるのが、中山間地など郊外にまばらに住み続ける高齢者への公的サービスの提供である。その点、インフラの整った地域に高齢者が集まり住むことになれば、行政コストの圧縮を含めたメリットは大きい。

だが問題もある。政令指定都市や県庁所在地の中心部はビジネス優先、若者中心に町づくりをしており、高齢者の急増となれば対応しきれない。引っ越してきた高齢者がさらに高齢化したときを想定した受け皿の整備が急がれる。

もう一つの懸念は、とりわけ人口減少スピードの速い地方都市のケースだが、中心市街地であっても高齢者の流入以上に若い世代の流出が多くなりかねない点だ。幅広い世代の流入が見込める大都市部と異なり、バランスが大きく崩れれば、いくら中心市街地といえども高齢者向けサービスを維持できなくなる。

他方、中心市街地へ移り住みたいのに経済面や健康面の理由から叶わない人は、引き続き郊外に住み続けることになる。もちろん、そもそも移り住む意思がない人のほうが多いだろうが、県庁所在地などへの集中が進むと、周辺市町村の人口減少スピードは速まる。

2045年に人口が2000人を下回る自治体は、離島を含めて197だ。1万人に届かない自治体も674となる。救急告示病院や税理士事務所、カラオケボックスなどは、1万7500人を下回ると立地できなくなってくる。

紳士服小売店や介護老人保健施設の立地のボーダーラインは人口9500人だ。こうしたサービスがかなりの地域で見られなくなるだろう。そのすべてをインターネットによる通信販売で賄えるわけではない。

当たり前のことだが、生活に必要なサービスの撤退は、暮らしそのものを困難にする。2045年に至るまでもなく、全国の多くの地域で「同一県内2地域居住」をはじめとするコンパクトシティ化が避けられなくなるだろう。