なぜ国民は声を上げない? 株や不動産など“日本の資産”が暴落する「凶悪な未来」

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

私は日本の将来に対して強い危惧を抱いている。それは恐怖と言っても良いものだ。今後、高齢化がさらに進展するため、社会保障財政がひっ迫し、日本経済の生産性は低下する。そして対外収支も悪化する。だが政治家は目先のばらまき政策にしか関心がない。それでもなぜ、国民は声を上げないのか。

執筆:野口 悠紀雄

image
停滞する日本はどんな未来をたどるのか

世界初の「超高齢化社会」で何が起きるのか?

 日本はこれから超高齢化社会に突入する。それは、世界のどの国も経験したことがないものだ。医療や介護の需要が激増することは、目に見えている。また、年金財政の悪化も避けられない。
 支給開始年齢が引き上げられる事態も十分あり得る。そうなれば、老後資金の準備が十分でないために、生活保護を申請する高齢者世帯が急増するだろう。こうした事態の対処が急務であるにもかかわらず、何の手当ても準備もなされていない。

画像恐怖すら感じる経済衰退。日本沈没の日が来るのか…?

(Photo/Shutterstock.com)

 高齢者が多くなれば、労働人口は増えない。そのため、日本経済の生産性は現在よりもさらに低下する。
 医療や介護分野での人手不足は、ますます深刻化する。外国人に頼ろうとしても、日本の国際的な地位が低下してしまうので、人材を集めることもできない。それだけではなく、日本の若い人々が、高賃金を求めて海外に流出する。
 2022年以降の急激な円安の中で、こうした動きはすでに現実化している。そのため、要介護状態になってもケアを受けられない高齢者が続出するだろう。
 こうした状況の中で、不満が鬱積して凶悪事件が多発し、治安が悪化する危険もある。その兆候はすでに現れているのかもしれない。

日本が賞賛された時代は“夢”だったのか…?

 一方で、こうした状態に対処するための技術が開発されている。デジタル技術の進展によって、リモート医療が可能になった。世界では、コロナ下でリモート医療に向けての大きな進展があった。しかし日本では、医師会の反対によって進展していない。
 新しい技術への日本の不適応さは、医療だけでなく、他の分野でも著しい。世界経済が大きく発展する中で、日本は古い産業構造から脱却できず、国際的な地位が低下している。
 さまざまな国際ランキングで、日本の位置は最下位から数えた方が早くなってしまった。かつて、「ジャパンアズナンバーワン」と賞賛された時代があったことなど、夢のようだ。
 そして、状況は悪化の一途を辿っている。5月22日6月5日の本欄で触れたように、2000年の沖縄サミット時にG7の中で最も豊かな国だった日本は、2023年の広島サミットでは最も貧しい国になった。