「合法的なキックバック」の発案者は? そこにいた安倍派幹部が誰も「覚えていない」不思議 政倫審

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に関する衆参両院の政治倫理審査会(政倫審)は、18日に安倍派の会長代理を務めた下村博文氏が出席し、派閥幹部らの弁明が出そろった。一度はキックバック(還流)の廃止を決定したのに復活した経緯や「合法的な代替案」を検討した議論のやりとりなど、国民からの疑惑の目が注がれる「闇」はどの程度、明らかになったのか。(井上峻輔)

◆違法性の認識があったのではとの疑い

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衆院政治倫理審査会に出席した下村博文元文科相=18日、代表撮影

 安倍派では、西村康稔前経済産業相、塩谷立元文部科学相、世耕弘成前参院幹事長と並んで裏金づくりの実態を知り得る立場とされる下村氏。2022年4月当時、派閥会長の安倍晋三元首相が還流廃止を指示した会合と、安倍氏の死後に還流の扱いを協議した22年8月の会合に4人はいずれも出席している。

 だが、下村氏は冒頭から「事務総長時代に、(派閥の)収支報告書について相談、指示をしたことはない」と政治資金への関与を全面否定。還流廃止を決めたのは、不記載という違法行為を知っていたからではという疑念に対し、下村氏は「不記載であるとか、違法であるとかいう話は出ていない。不記載を知ったのは昨年暮れ以降」と潔白を主張した。西村氏ら他の3人と同様に違法性の認識を否定し続け、新たな事実は解明されなかった。

◆150万円以内を意味していたと釈明

 22年8月の会合で議論された還流の「代替案」も大きな疑問点の一つ。還流継続を求める議員の声に応え、議員個人のパーティー券を派閥が購入する案で、下村氏が今年1月の記者会見で「ある人から、合法的な形で出す案が示された」と発言し、誰が発案者かに注目が集まった。

 「合法的」は、それまでの還流の違法性を理解していたとも受け取れる表現。西村氏ら3人は「誰のアイデアだったかは覚えていない」と異口同音に語り、下村氏も「いろいろな議論があったが、誰が最初に言ったのか実は私も覚えていない」と口をそろえた。「合法的」という表現は、1団体が購入できるパーティー券が150万円以内という政治資金規正法の上限を意味していたと釈明した。

 下村氏は他の派閥幹部と違って、かつての派閥会長で今も強い影響力を誇る森喜朗元首相と疎遠で確執を抱える。森氏は裏金づくりが始まったとされる時期に派閥会長を務めており、下村氏が踏み込んだ発言をするのではとの臆測も飛び交ったが「確定的にいつからということは分からない」と述べるにとどめた。

◆自民党の幹事も「疑問が残っている」

 実態解明にはほど遠い安倍派幹部らの弁明に対し、自民の政倫審幹事の丹羽秀樹氏ですら「私自身も疑問が残っている」と首をかしげるほど。立憲民主党の安住淳国対委員長は「全員が自分に都合のよいうそをついている」と切り捨てた。