「電池技術の世界市場」徹底図解、トヨタも取り組む全固体電池の将来と地域別シェア

全固体電池(Solid State Battery=SSB)技術は、エネルギー密度、安全性、コストといった電池技術に対する要件をすべて充たす次世代電池として、電池技術市場において現在注目を集めています。この記事では、世界的な市場調査会社MarketsandMarkets(マーケッツアンドマーケッツ)社の市場調査レポート「電池技術の世界市場:種類別(リチウムイオン(コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム)、鉛蓄電池(浸漬式、制御弁式)、ニッケル水素、フロー、金属空気、ニッケルカドミウム、全固体電池)・業種別・地域別の将来予測(2027年まで)」から、全固体電池および電池技術の世界市場について紹介します。

編集協力:グローバルインフォメーション

photoSSB用の負極材別にみる収益成長率(後ほど詳しく解説します)

転換期を迎える脱炭素化

生成AIで1分にまとめた動画

  化石燃料のエネルギー密度と燃料の扱いやすさの組み合わせは、今のところ他の追随を許さず、世界経済の原動力としての役割を担っています。しかし、化石燃料の排出は地球温暖化の原因であり、世界的な脱炭素化への動きは転換期を迎えています。
 排出ガスを削減し、地球温暖化にブレーキをかけるためには、バッテリー電気自動車(BEV)の普及が不可欠です。ただし、最初のBEVが登場したのは1800年代後半であり、自動車のパワートレインの進化においてBEVは目新しいものではありません。

EV業界注目の全固体電池技術

 過去数十年の技術開発により、自動車用途において化石燃料以外のエネルギー源を強化するルートが提供されてきました。主にバッテリー技術の開発は、パワートレインの電動化とBEVの普及を促進し、電気自動車(EV)の義務化と排出ガス規制への対応のために必要不可欠でした。

画像種類別にみる電池技術のエネルギー密度の違いとは

(MarketsandMarkets調査をもとに編集部作成)

 xEV(電動車の総称)のブレークスルーは、ニッケル水素(Ni-MH)電池の使用であり、次にリチウムイオン電池の使用により普及率は増加しました。それに伴い、課題を解決し、増え続けるパフォーマンス向上への要求に応えるための開発が加速しています。
 電池技術に対する要望は、主にエネルギー密度、安全性、コストに焦点が当てられ、次いでサイクル寿命、急速充電容量となっています。よく言われる走行距離の不安は、上記の要素と充電ネットワークの有無から派生したものです。そこで登場したのが、上記すべての要件を充たす全固体電池(Solid State Battery=SSB)技術です。

技術革新による次世代電池

 SSBの主な差別化要因は、従来のリチウムイオン電池の液体電解質と比較して、固体電解質を使用することです。この固体電解質は、コンパクトなパッケージでありながら、安全性に優れています。規模が大きくなれば、生産コストはリチウムイオン電池よりも抑えられることが予想され、電池技術に求められる上記3つの要件を充たすことができます。さらに、急速充電もSSBでは可能です。
 ただし、固体電解質のメリットは上記に限定されるものではありません。アノード開発の集積知が、真の次世代ソリューションを提供します。合金、シリコン、リチウム金属などの新しい負極材料は、高い比容量を提供できるため、広く関心を集めています。固体電解質と高比容量の負極を組み合わせることで、機械的・電気化学的特性によりエネルギー密度が向上します。

画像SSB用の負極材の収益は今後どのように成長していくのだろうか

(MarketsandMarkets調査をもとに編集部作成)

 リチウム金属電池SSBがリチウムイオン電池より優れている点として、固体電解質がリチウム金属負極(LMA)の使用を可能にすることが挙げられます。LMAは、現在のグラファイト(Graphite)負極の10倍以上という最高度の比容量を有するため、電池技術の「聖杯」と呼ばれています。LMAの使用はまた、負極レス設計と負極のin-situ形成を促進し、製造の複雑さを解消しコストを削減します。
 しかし、LMAにはデンドライト(樹状突起)の形成やセルの膨張といった独自の課題があり、電池全体の寿命に影響を及ぼすという難点がありました。当然ながら、これはセル開発者とOEMにとって重要な課題となっていましたが、材料と機械設計の革新によって大きなブレークスルーが達成されています。

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