夜の頻尿、実は生活習慣病のサイン 若者も含め「意外と多い」 改善へ琉球大学教授がアプリ開発中

image

「夜間頻尿アプリ」の開発を主導している琉球大学副医学部長で教授の宮里実さん=11日、西原町・琉球大学医学部

夜間頻尿は体調悪化のサイン-。夜中に尿意・排尿で起きる回数や時間を記録し、生活習慣の見直しなどにつなげる「夜間頻尿アプリ」の開発が進んでいる。主導する琉球大学副医学部長で教授の宮里実さんは「夜中の排尿は生活習慣病のサインの可能性がある。生活習慣の改善や健康維持につながるアプリを多くの県民に使ってもらいたい」と一般運用に向け意気込んでいる。(学芸部・勝浦大輔)

 泌尿器科の臨床医を26年間勤めた宮里さんは「排尿が医師として大きなテーマになった」と振り返る。「排尿はとても大事なことだが、社会的認知度が低く、どこかタブー視されている」。排尿障害だと知って初めて慌てる患者のケースをこれまでの臨床で見てきたという。

関連記事

 その経験の中で、生活習慣病などの病気を持つ人は、夜間頻尿など排尿障害を持つ人が若者も含めて「意外と多い」ということに気付く。少しずつ独自に調査を進めると、高齢者は(夜間頻尿に)「意外と悩んでいない」ということも分かった。高齢者は過食でなく、農作業などで体を動かす習慣があり日常生活動作(ADL)がよいことが理由だと考えられた。

 琉大に活動の場を移し、排尿と生活習慣病の関連について研究を進めてきた宮里さんら研究グループは、2017~20年に実施された内閣府の社会実証事業「久米島デジタルヘルスプロジェクト」に参画。島民を対象に排尿を自動記録する特殊な装置を使い、排尿と肥満などの生活習慣病との関連を調べ、関係性を実証したという。「この新しい知見を社会に還元し、健康改善につなげたい」と、アプリ開発の構想に至った。

 開発中のアプリでは主に(1)就寝時間(2)夜中に(尿意、排尿で)起きた時間(3)朝起きた時間-を入力、記録する。そうして得られる健康についてのデータやその対策(運動が必要など)の情報が利用者にフィードバックされる仕組みを想定している。診療で使われる「排尿日誌」にもなり、クリニックや病院でアプリのデータを提示すれば、医師の診療の一助にもなる。

 アプリ開発資金はクラウドファンディングで支援を募った。目標額500万円として今年4月に募集を始め、締め切りの5月末までに565万円の寄付が集まった。目標額を超えた金額分は、アプリ機能の追加開発に充てる予定。若者から高齢者まで幅広い年齢層が利用できるよう、アプリ操作はなるべく使いやすいつくりを目指す。「早く実用化してほしい」「困っている人は多い」など応援メッセージも寄せられた。

 アプリは本年度中の開発・試験運用を経て、来年4月の一般運用を目指している。アプリのダウンロードも利用も無料の予定だが、調査研究のため、同意を得られる利用者の成果を追跡することも検討している。

image