信頼のある国際機関としては初めて
WHO(世界保健機関)の傘下にある国際がん研究機関がこの7月、人工甘味料のアスパルテームを「発がんの可能性があるリスト」に掲載することが明らかになった。
この物質はコカ・コーラプラスやペプシ〈生〉ゼロといった「カロリーゼロ」を謳った炭酸飲料の他、ミンティアやフリスクのような菓子など多くの加工食品に使用されている。
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これまでも、人工甘味料の健康被害についてはさまざまな研究が行われ、議論を巻き起こしてきたが、信頼性のある国際機関が発がん性を警告するのは初めてだ。ボストン在住の内科医・医学博士、大西睦子氏が解説する。
「WHOはすでに5月の時点で、アセスルファムK、サッカリン、スクラロース、ステビアなど人工か天然を問わず、すべての甘味料の摂取を減らすべきだと勧告しました。
アスパルテームは肥満になる可能性があるとして問題視されてきたものの、発がん性に関しては食品業界からの反対意見もあり、なかなか評価が難しい状況が続いてきました。」
「カロリーゼロ」はリスクゼロ?
「そんななか、昨年3月にフランス、ソルボンヌ・パリ北大学のシャルロット・デブラス氏らの研究チームが、同物質の発がんリスクを指摘し、注目されました。食品業界は反発していますが、WHOが一歩踏み込んで警告したことの意味は大きい」
アスパルテームは他にも脳血管や心臓の疾患リスクを高めたり、神経細胞に悪影響を及ぼして知能を低下させることが懸念されている。
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「今回の警告で、ただちに各国で人工甘味料の使用が禁止されるということはないでしょう。
マーガリンなどのトランス脂肪酸が心臓疾患と関連があるとわかったときも、使用禁止が決定するまでに長い時間がかかりました。人工甘味料に関しても、十分にデータが蓄積するのは先のことでしょう」(大西氏)
「カロリーゼロ」はリスクゼロではないことを肝に銘じたい。
「週刊現代」2023年7月15・22日合併号より