「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」呪文のような謎の歌詞に秘められた意味とは

ビートルズからMrs. Green Appleまで、耳に残る名曲たちを大解剖

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ザ ・ビートルズ 写真/AP/アフロ

(小林偉:大学教授・放送作家)

「ケセラセラ」が広まったきっかけ

 現在ヒット中の、Mrs. Green Apple「ケセラセラ」。

 テレビ朝日系ドラマ『日曜の夜ぐらいは・・・』の主題歌として書き下ろされ、SpotifyのCMソングにも採用されていますから、彼らのファン以外の方も数多く耳にされていることと思います。

 この「ケセラセラ」というのは、スペイン語圏では「なるようになるさ」というような意味を持つ、自分や他人を励ます呪文のような言葉として使われているようですね。Mrs. Green Appleの曲中でも、冒頭から♪ケセラセラ、今日も唱える・・・って歌われていますし。

 この「ケセラセラ」という言葉を広く知らしめたのは、1956年に公開されたアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『知りすぎていた男』。劇中、主演俳優の一人であるドリス・デイが歌ったこちらの曲です。

 この曲はアカデミー歌曲賞も受賞。歌手でもあるドリス・デイは2019年に97歳で亡くなってしまいましたが、彼女にとっての生涯の代表曲でもありました。

 この曲中でも「Que Sera, Sera, Whatever Will Be, Will Be」と英語でダメを押すように「なるようになるさ」と歌われています。

 そんな歌詞の持つ普遍的なメッセージ力からか、コニー・フランシスやメリー・ホプキン、ナタリー・コール、石井竜也など世界中で数多くのカバー・ヴァージョンが生み出されています。中でもファンク・バンド、スライ&ザ・ファミリー・ストーンによる脱力系(?)カバーは、筆者イチ推しです。

 さて、この「ケセラセラ」のように、一見すると呪文のような謎の言葉をタイトルにした曲って、意外にたくさんありますよね。例えば、こちら・・・。

ビートルズの名曲

 ご存知、ビートルズの「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」。現在もホンダのCMに採用されている超有名曲ですが、よく考えてみると、こちらの意味も不明。


 ご存知、ビートルズの「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」。現在もホンダのCMに採用されている超有名曲ですが、よく考えてみると、こちらの意味も不明。

 実はコレ、作者のポール・マッカートニーの友人であるナイジェリアのコンガ奏者、ジミー・スコットという方の口癖だったようで、それを気に入ったポールが作ったもの。曲をジャマイカ発の、オフビートを強調したスカのリズムにしているところも、当時の西洋音楽界ではユニークでした。

 歌詞の内容は、市場で働くデスモンド・ジョーンズと、歌手をしているモリーが恋をし、結婚し、子どもを授かり、逞しく生きていく物語。その中で繰り返し、♪Ob-La-Di,Ob-La-Da, Life Goes On Bla, Lala how The Life Goes On・・・とにかく、人生は続くんだ。前を向いて行こうと歌われています。「Ob-La-Di,Ob-La-Da」という言葉自体が、一種の呪文なんでしょうね。

 さらに呪文と言えば、「アブラカダブラ」という言葉もよく使われますよね。これをタイトルにしたのがこちら。

 1970~80年代に人気を博した、アメリカのバンド、スティーブ・ミラー・バンドが1982年に大ヒットさせた曲です。

 この「アブラカダブラ」という言葉は、何でも紀元2世紀に記載された文献が発見されているとか。しかし、その語源には様々な説があるようです。

 意味としては「私は、私の言葉の如く、物事を成すことができる」ということのようで、後に手品師などがこの言葉を使ったことで、一般化したみたいですね。スティーブ・ミラー・バンドのミュージック・ビデオでも、様々な手品が登場しています。

 ちなみに、サザンオールスターズや米米クラブにも「アブラカダブラ」というタイトルの曲がありますから、これも洋の東西を越えた呪文ですよね。

 最後は、筆者がこのタイトルってどういう意味って思ったこちらの曲。

アメリカの3兄弟バンド

 アメリカのバンド=ハンソンが1997年に大ヒットさせた「キラメキ☆mmm Bop」。ハンソンは3兄弟で結成されたバンドですが、この曲リリース当時、ドラマーで3男のザッカリーがまだ11歳だったことでも話題になりましたよね。

 実は、この「mmm Bop」というのは、「アッと言う間」というような意味の慣用句だそうで、歌詞も「人生なんて、アッと言う間なんだから、今の友だちとかは大切にしないと、年をとったら誰も相手にしてくれないよ」という、10代のバンドにしては、とてもシニカルな内容を持っています。そのギャップも大ヒットの要因かもしれませんね。

 メロディも超ポップ、ヴォーカルの次男=テイラー(リリース当時14歳!)の歌声もソウルフルで、年を喰った筆者は今でも愛聴していますよ(笑)。

 ・・・ということで呪文のような謎の言葉って、曲のタイトルやテーマにする場合は、夢の実現や、うまくいかない人生の応援歌みたいになっているんだなぁという発見が、今回調べてみて分かったことでした。