NHK受信料「10月から1割値下げ」…今から「12ヵ月前払」「6ヵ月前払」すると損? 受信料を安く抑える方法を解説

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2023年6月21日、総務省は、NHKが申請していた受信料の値下げを認可しました。10月から適用されます。これに伴い、複雑だった受信料の体系が整理されてシンプルになります。また、同時に、学生の受信料免除の範囲が拡大されるなどの改定があります。本記事では、新しい受信料の体系・制度を前提として、受信料をできるだけ安く抑える方法・制度について、解説します。

NHKの受信料のしくみ

NHKの受信契約は「地上契約」と「衛星契約」の2種類があり、それぞれについて受信料が定められています。受信契約の申し込みは「受信機を設置した月の翌々月の末日まで」に行う必要があります。

衛星放送を受信できる場合、地上デジタル放送しか観ていなくても、「地上契約」ではなく「衛星契約」を選ばなければなりません。

契約は1世帯につき1契約です。これは、テレビが1台のみでも複数台でも同じです。ただし、テレビ放送を受信できるものであればすべてテレビとみなされます。

たとえば、テレビを視聴できる携帯電話や、自家用車のカーナビも、テレビに含まれます。

「値下げ後」は支払方法による受信料の差がなくなる

新しい料金制度の大きな特徴は、「1割値下げ」がされるとともに、「支払方法による金額の差」がなくなることです。

以下、具体的に説明します。

◆現行の受信料体系(2023年9月30日まで)

まず、現行の受信料の体系です。

地上契約と衛星契約いずれも、「沖縄県」と「それ以外の都道府県」とで別々に定められています。また、まとめて複数月分を支払う「支払いコース」によって割引がなされます。

それに加え、払込方法による金額の差が設けられています。「振込」→「口座振替・クレジットカード払」の順に安くなります(【図表1-1】【図表2-2】参照)。

NHKホームページより

【図表1-1】地上契約の受信料(沖縄県以外)NHKホームページ「放送受信料のご案内」より

NHKホームページ「放送受信料のご案内」より

【図表1-2】地上契約の受信料(沖縄県)NHKホームページ「放送受信料のご案内」より

NHKホームページ「放送受信料のご案内」より

【図表2-1】衛星契約の受信料(沖縄県以外)NHKホームページ「放送受信料のご案内」より

NHKホームページ「放送受信料のご案内」より

【図表2-2】衛星契約の受信料(沖縄県)NHKホームページ「放送受信料のご案内」より

したがって、現在の制度では、「12ヵ月前払」かつ「クレジットカード払」を選ぶのが最も安いことになります。

なお、「クレジットカード払」にすると、還元率に応じたポイントがつくので、その分だけ割引されるのと同じ効果があります。

◆新しい受信料体系(2023年10月1日以降)で一番お得なのは?

次に、新しい受信料について説明します。

2023年10月1日以降、受信料が10%値下げされ、かつ、受信料額が払込方法にかかわらず一本化されます。

その結果、新しい受信料の体系は、「振込」「口座振替払」「クレジットカード払」を問わず【図表3-1】【図表3-2】のようになります。

NHKホームページより

【図表3-1】2023年10月1日以降の受信料体系(沖縄県以外)NHKホームページより

NHKホームページより

【図表3-2】2023年10月1日以降の受信料体系(沖縄県)NHKホームページより

このことからすれば、新しい受信料体系の下では、最も安くなるのは、支払い方法を問わず「12ヵ月前払」ということになります。

ただし、「クレジットカード払」にすると還元率に応じたポイントがつくことを考慮すれば、実質的にみて「12ヵ月前払」の「クレジットカード払」が最も割安といえます。

◆補足|ケーブルテレビ加入者は「団体一括払い」で月200円割引

なお、補足すると、ケーブルテレビ加入者には「団体一括払い」による割引があります。

ケーブルテレビ事業者にケーブルテレビ利用料とNHK受信料をまとめて支払うものです。1件あたり月額200円の割引(年間2,400円)となります。

今「6ヵ月前払」「12ヵ月前払」を選ぶと損する?

では、これから受信料の値下げ前、つまり2023年9月以前に新たに受信契約を結ぶ場合、どの料金プランを選べばよいでしょうか。

「6ヵ月前払」「12ヵ月前払」をした人は損してしまうのでしょうか。

結論からいえば、そんなことはありません。

NHKの「受信料の窓口」に、以下の記載があります。

「2023年10月以降分を値下げ前の受信料額で前払いしていただいた場合、2023年10月以降のご請求時に精算させていただきます。」

つまり、受信料改定前に支払った分と新受信料との差額については、精算されて翌期の受信料に充当されるということです。

したがって、これから受信契約を申し込む場合も、「6ヵ月前払」「12ヵ月前払」を選ぶのがお得だということになります。

割引、免除・減額の制度

次に、受信料の割引、免除・減額の制度を紹介します。

◆家族割引

まず、「家族割引」です。以下の場合は、「連続6回不払いをしていない」などの所定の要件をみたせば、受信料が半額になります。

【家族割引の対象となる場合】

・同一生計で学生が親元から離れて暮らしている場合(※別途、免除の制度あり(後述))

・同一生計で単身赴任等のため自宅から離れて暮らしている場合

・別荘・別宅等でテレビを設置している場合

◆学生の「全額免除」の制度(2023年10月から改定)

親元から離れて暮らす学生については、前述の「家族割引」とは別に、所定の要件の下、全額免除を受けられる制度があります。

これについては、10月1日以降、受信料の値下げ改定と同時に、対象となるケースが広がることになりました。

まず、現行制度における要件は以下の通りです。

【現行制度で学生が全額免除を受けられるケース】

・経済的理由の選考基準がある奨学金を受給している

・経済的理由の選考基準がある授業料免除制度の適用を受けている

・親元等が市町村民税(特別区民税を含む)非課税世帯である

・親元等が公的扶助受給世帯である

「経済的理由の選考基準がある奨学金」は、日本学生支援機構、地方自治体、学校、公益法人が実施するもののほか、それらと趣旨目的が一致するとNHKが認めたものも含みます。

上記に加え、2023年10月以降は、以下のケースにまで拡大されます。

【2023年10月1日以降、新たに全額免除の対象となるケース】

・年間収入が一定額(130万円以下)以下である

・国民民年金保険料の学生納付特例の対象になっている

・国民年金保険の修学特例対象になっている

なお、このことに伴い、7月下旬以降、NHKホームページで免除申請の事前受付が開始される予定です。

◆その他の免除の制度

その他にも免除の制度があります。「全額免除」と「半額免除」に分かれており、それぞれ以下の通りです。

【全額免除になる場合】

・公的扶助受給者(生活保護等)

・市町村民税非課税の身体障害者

・市町村民税非課税の知的障害者

・市町村民税非課税の精神障害者

・社会福祉施設等入所者

【半額免除になる場合】

・視覚・聴覚障害者(身体障害者手帳を持っている)

・重度の身体障害者(障害等級1級・2級で身体障害者手帳を持っている)

・重度の知的障害者(判定を受けている)

・重度の精神障害者(障害等級1級で精神障害者保健福祉手帳を持っている)

・重度の戦傷病者(障害程度が特別項症~第1款症で戦傷病者手帳を持っている)

以上、述べてきたように、NHK受信料の支払で最もお得なのは、2023年10月の受信料改定の前後を問わず、「12ヵ月前払」でかつ「クレジットカード払い」を選ぶケースであるといえます。

また、同じく2023年10月から対象となるケースが拡大される「学生の免除」の制度をはじめ、各種の「割引」「免除」「減額」の制度もあるので、それらの条件を満たす場合は、積極的に活用することが推奨されます。