湯替え年2回の大丸別荘 前社長、遺体で見つかる 福岡の山道

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老舗旅館の「二日市温泉 大丸別荘」=福岡県筑紫野市で2023年2月24日、桑原省爾撮影(画像の一部を加工しています)

 福岡県筑紫野市の老舗旅館「二日市温泉 大丸別荘」が大浴場の湯を年2回しか入れ替えず、県に虚偽の報告書を提出したとされる事件を巡り、県警は12日、公衆浴場法違反(虚偽報告)容疑で捜査していた運営会社の前社長の男性(70)が死亡したと発表した。同日朝、市内の山道で遺体が見つかった。現場の状況などから、県警は自殺とみている。

 県警によると、12日午前6時55分ごろ、筑紫野市内の山道で前社長の遺体を通行人が見つけ、110番した。駆け付けた救急隊員が、その場で死亡を確認。検視の結果、同日午前6時ごろに亡くなったとみられる。近くには前社長が使っていた車が止まっており、車内から遺書とみられる紙が見つかった。

 同旅館では、県保健所が2022年8月に実施した立ち入り検査で、大浴場の湯から基準値の2倍のレジオネラ属菌が検出。旅館側は翌9月、法令に従い週1回以上は湯を入れ替えていたなどとする報告書を県に提出したが、11月の再検査で今度は基準値の最大3700倍の菌が検出された。

 旅館側はその後、8月の調査で示した管理簿の内容は虚偽で、湯の入れ替えは年2回だけで、消毒も不十分だったと認めた。前社長は23年2月に開いた記者会見で謝罪した上で「利用者が少なく、19年12月ごろから従業員に湯の入れ替えはしなくてよいと自ら指示した」と説明。県に虚偽の報告をしたことも認め、3月2日付で社長を辞任した。

 県は8日に刑事告発し、県警は10日に旅館と前社長宅を同容疑で捜索。ノートパソコン2台と段ボール10箱分の資料を押収し、捜査を進めていた。

 県警によると、前社長への任意の取り調べはこれまで1回、10日に実施。休憩と弁護士の接見を除き計6時間17分間かかったが、前社長は淡々と応じたという。翌11日午後4時過ぎにも前社長に出頭を求め、押収したパソコンについて約10分間、確認した。12日は取り調べの予定はなかったという。

 県警生活経済課の児玉英治次席は「亡くなられたことは大変残念であり、心を痛めております。ご冥福をお祈りいたします。警察の対応に問題はなかったとみています。引き続き捜査を進めていきます」などとコメントを出した。【土田暁彦】

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