「あまりにも周知されていない 正しく理解して正しくおそれることを」 「南海トラフ地震臨時情報」の意味とは(2)

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2016年4月に熊本地震が発生してから8年が経ちました。巨大地震への備えについて考えます。
【全3回の(2)】
南海トラフ地震の被害が懸念される宮崎県内では、「南海トラフ地震臨時情報」を正しく理解し、対応することが求められます。
発表される条件や種類が複雑な「臨時情報」ですが、宮崎県内の沿岸部の自治体はどのように対応するのか取材しました。

日向灘に面した新富町の場合は

去年6月、新富町役場で初めて行われた訓練。
「南海トラフ地震臨時情報」の発表を想定したもので、小嶋町長をはじめ各課の課長などが参加して、住民に事前避難を呼びかけた際の対応などを検討しました。


新富町での訓練(2023年6月)

(各課の報告)

「延べ人数で126人の対応者が必要になるから業務の停止、縮小をもって、この126人分にあてたい」
臨時情報の「巨大地震警戒」が発表された場合、新富町では、津波からの避難が間に合わない沿岸部や川沿いに住む17世帯19人の住民を、原則1週間、指定避難所に事前避難させることにしています。

まったく準備をしない人も出てくる 逆に過剰に恐れてパニックに

ただ、町の危機管理専門員の黒田 修 さんは、「臨時情報」については課題が多いと話します。
(新富町危機管理専門員・黒田修さん)
「臨時情報というものがあまりにも周知されていない。(情報が出ても)まったく準備をしない人も出てくるだろうし、逆に過剰に恐れてパニックになったり、例えば、コンビニやスーパーのものが買いあさられて、通常の日常の流通でさえそこで滞ってしまうと」

内閣府が去年実施した調査によりますと、南海トラフ地震の被害が想定される自治体に住む住民のおよそ7割が臨時情報について「知らない」、「聞いたことはあるものの、詳しくは知らない」と回答。認知度の低さが浮き彫りとなりました。

制度の複雑さもあり、黒田さんはいざという時混乱が生じないよう、「臨時情報」への対応を社会全体で考えておく必要があると指摘します。

(新富町危機管理専門員 黒田修さん)
「真剣に話し合っておかないとパニックなり、大きなトラブルを生んでしまうのではないかというのが大きな課題。正しく理解して、正しくおそれるといったことをきちんと啓発していく必要がある」

普段から「臨時情報」がどういうものなのか知っておく

内容が複雑なだけに、周知の仕方も課題です。
また、臨時情報の「巨大地震警戒」や「注意」が出た際の対応も各自治体によって異なっています。
宮崎県内沿岸部の10の市と町に取材したところ、例えば、「巨大地震注意」が発表された場合、門川町と川南町は、一部の住民に「高齢者等避難」を発令することにしていますが、ほかの自治体は避難情報は出さず、日ごろの備えを呼びかけるとしています。

自分が住んでいる場所のリスクや自治体が出す情報をしっかり確認することが大事だと思いますが、新富町の担当者の方も話していたように、ちゃんと理解していないと、いざ情報が出たときにパニックになりかねません。
普段から臨時情報がどういうものなのか知っておくことが大切です。【(3)に続く】
※MRTテレビ「Check!」4月16日(火)放送分から