【終活】2024年4月から義務化された「相続登記」結局、何をすればいいんですか?遺言書にまつわるトラブル体験談、70歳代の平均貯蓄額と中央値もチェック

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4月15日は「遺言の日」。近畿弁護士会連合会が1998年に記念行事を開催したことから始まりました。

日付は「良(4)い、遺言(15)」と読む語呂合わせが由来。

遺言というと縁起が悪いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、お金のことも含めて生きているうちに自分の生涯が終わった後のことを考えるのも大切なのではないでしょうか。

ついに2024年4月1日から、不動産(土地・建物)相続登記が義務化されました。

もともと、登記簿を見ても所有者がわからない「所有者不明土地」が全国で増加していたことを背景に、2021年に法律が改正されました。

しかし、実際に相続登記のやり方や親の終活で何をすればよいか、不安に思っている人は少なくありません。

今回は相続登記の概要や気をつけたいポイントとともに、最新の意識調査の結果を見ていきましょう。記事の後半では、70歳代の貯蓄事情についても確認していきます。

1. 【終活】そもそも「相続登記」ってなに? おさえたいポイント3つ

2024年4月1日より義務化される「相続登記」は、以下のような内容となっています。

1.1 相続で取得したと知った日から3年以内の登記

相続人は、不動産(土地・不動産)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、総毒登記することが法律上の義務になります。

この場合、法務局に申請する必要があります。

1.2 相続登記しなかった場合、罰金が科される可能性もある

正当な理由なく相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

1.3 遺産分割の話し合いで得た不動産も登記の対象

相続人が複数いる場合に行われる遺産分割の話し合いで不動産を取得した場合も、別途遺産分割から3年以内に登記をする必要があります。

なお、2024年4月1日以前に相続した不動産についても、相続登記されていないものは義務化の対象です。

期限があり、早めの対応が必要となる場合が多くなるといえるでしょう。詳しくは法務省のホームページやお近くの法務局(予約制の手続案内)をチェックしてみてください。

ひとくちに「相続」と表現されますが、家庭内では何が行われているのでしょうか。次の章から、最新の意識調査から具体的な対策とトラブル体験談をみていきましょう。

2. 【最新】「相続」に関する意識調査データをチェック

株式会社ルリアンが、全国の30歳から79歳までの男女を対象にした「相続に関する全国調査2024」を実施。親の死による相続についての実態が明らかになりました。

調査概要は下記のとおりです。

  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査対象:日本全国の30~79歳までの男女
  • アンケート母数:6850件(うち相続経験者1065件)
  • 実施日:2024年3月1日~2024年3月4日
  • 調査会社:株式会社ルリアン
  • リリース公開日:2024年4月10日
  • 2.1 相続経験者が実際に行った対策は「物の整理・不用品処分」

    【終活】全国1065名の相続経験者に聞いた対策とは

    【終活】全国1065名の相続経験者に聞いた対策とは

    出所:株式会社ルリアン「相続に関する全国調査2024 結果発表第1弾」(PRTIMES)

    調査によると、親の死による相続経験者が行っている終活として最も多かったものが「物の整理・不用品処分」という項目で21.5%でした。

    「遺言書を作成している」という項目は12.7%で、親の死による相続を経験していても調査対象に若い年代の方が含まれていることもあり、全員が自分の終活をしているわけではないみたいですね。

    そんな相続、なにかとトラブルになるというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

    次に相続で起きた遺言書にに関するトラブルについて見ていきましょう。

    2.2 【体験談】遺言書が無効に!? 相続で起きた「トラブル」とは

    遺言書検認時に無効となった割合は14.6%

    遺言書検認時に無効となった割合は14.6%

    出所:株式会社ルリアン「相続に関する全国調査2024 結果発表第1弾」(PRTIMES)

    故人が遺言書を作成していたという123人を対象として、相続で起きた遺言書に関する出来事について調査を行いました。

    最も多かった項目は「故人が残した遺言書が無効と判定された」で14.6%でした。

    それではトラブルの原因となった遺言書はどのようなものなのでしょうか。遺言書の種類をおさらいしていきましょう。

    3. 遺言書の主な種類3つ:法律違反にも注意して

    一言で「遺言書」と言っても、普通方式の遺言書には様々な種類が存在します。

    3.1 自筆証書遺言

    自筆証書遺言は、自分で作成し、自宅で保管する遺言書のことです。

    日付や氏名、押印がないなど、定められた方式やルールを守らなかった場合に無効となります。

    公正証書遺言と比較していつでも簡単に作成できるというメリットがありますが、無効になるリスクも高くなります。

    3.2 公正証書遺言

    公正証書遺言は公証役場にて公証人が作成することになっており、保管も公証役場が請け負います。

    無効になる確率はゼロではありませんが、自筆証書遺言と比べてそのリスクは極めて低くなります。

    3.3 秘密証書遺言

    秘密証書遺言は自分で遺言書を作成し、公証役場で遺言書の存在を確認したものです。

    補完は自宅になりますが、公証役場で遺言書を確認しているので自筆証書遺言よりも無効になる確率は低いと言えるでしょう。

    子どもであっても親の貯蓄やお金事情について詳しく知る人は、意外にも少ないように見受けられます。

    次の章からは、ひとつの目安として70歳代シニア世代がどれだけ貯蓄しているのか確認していきましょう。

    4. 【70歳代】二人以上世帯の貯蓄額をチェック!

    親にやっておいてほしい終活で1位に挙げられていた「相続財産」の処理。では、現在の70歳代はどのくらいの貯蓄を所持しているのでしょうか。

    金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」より、70歳代の貯蓄事情を確認します(金融資産を保有していない世帯を含む)。

    70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額

    出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

    4.1 70歳代・二人以上世帯の貯蓄額一覧表(金融資産非保有世帯を含む)
  • 金融資産非保有:19.2%
  • 100万円未満:5.6%
  • 100~200万円未満:5.1%
  • 200~300万円未満:4.3%
  • 300~400万円未満:4.7%
  • 400~500万円未満:2.5%
  • 500~700万円未満:6.2%
  • 700~1000万円未満:5.8%
  • 1000~1500万円未満:10.2%
  • 1500~2000万円未満:6.6%
  • 2000~3000万円未満:7.4%
  • 3000万円以上:19.7%
  • ちなみに、70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は1757万円、より実態に近い数値とされる中央値は700万円という結果でした。

    制度の改正や老後への不安などに対する意識から、親や自分の終活についての関心度も高まりつつあります。ぜひ早めに家庭内で話し合う機会を設けてみてください。

    5. 【終活】けっして自分だけの問題ではない! 早めの対策を意識して

    老後資金の計画を早めに立てる人が見受けられる一方で、しっかり終活しても頼れる人や看取ってくれる人が周囲にいないという「おひとりさま」世帯も増えつつあります。

    孤独死が社会的な問題となっている今、そうした課題の解決も急務となっているといえるでしょう。

    そして、相続登記のやり方ついてもおさらいしましたが、やらなかった場合は罰金が科される可能性がある事もあり、就活の中でも相続関係については余裕をもって準備することが重要だと分かりました。

    後悔のないよう、思い切って話し合いを始めることでその準備が活きるときがくるのではないでしょうか。

    ※編集部より:ご指摘を受け、記事の内容を一部訂正しております。申し訳ございませんでした。(2024/04/16 18:40)

    参考資料

  • 法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」
  • 株式会社ルリアン「相続に関する全国調査2024 結果発表第1弾」(PRTIMES)
  • 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
  • 荒井 麻友子

    荒井 麻友子

    株式会社ナビゲータープラットフォーム メディア編集本部

    LIMO編集部記者/金融ライター

    1996年生まれ。千葉県出身。早稲田大学文化構想学部在学中から、まだネガティブなイメージで語られることの多かった「独身女性」が、実際には豊かなくらしを謳歌する「おひとりさま」であると謳う女性サイト編集に従事。

    大学卒業後、株式会社良品計画で東京都内店舗の運営・勤務を経て、ライターおよび編集者として活動。女性のライフスタイルや意識調査と、日本年金機構総務省統計局「家計調査」など公的資料・統計を絡めた記事作成が得意。ビジネス誌『PRESIDENT』、日本経済新聞「xwoman doors」など、紙からウェブまで様々な媒体にて取材・執筆を重ねる。

    現在は、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」のLIMO編集部にて、最新データから読み解く財政事情や資産運用、厚生労働省管轄の厚生年金保険と国民年金貯蓄NISAなどのテーマを中心に編集・執筆。趣味は散歩。(2024年4月10日更新)