【老人ホーム】”特養なら安い”は実はウソ!? 住民税非課税世帯でも「資産が多いと対象外」タンス預金や投資信託はどうなる?「資産要件の対象になる資産」とは<特別養護老人ホーム費用の減免制度の盲点>

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来たる2025年は、いわゆる「団塊の世代」がすべて後期高齢者となる年。高齢の親を持つ世代のみなさんの中には、介護施設への入居費用について漠然とした不安を持つ方も少なくないでしょう。
特別養護老人ホームなどの介護保険施設には、住民税非課税世帯など所得が少ない方が施設に入所しやすいように、いくつかの減免制度が用意されています。

その中の1つである「負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」制度は、申請し認められると、所得や資産状況に応じた食費と居住費の減免が受けられる制度です。
ところが、2021年の制度改正により、住民税非課税世帯であっても、負担限度額認定制度の対象外となるケースが増加しました。対象外の場合は、食費と居住費を全額自己負担することになります。

では、どのような場合に、住民税非課税世帯の方が対象外となるのでしょうか。
そこで、今回は、特別養護老人ホームなどの介護保険施設で食費と居住費の減免を受けられる条件について解説。
最終ページでは、その「資産要件の対象となる資産」についても整理してお伝えしていきます。

1. 【資産が多いと対象外!?】「居住費と食費の減免」が受けられる条件

【資産が多いと対象外!?】特別養護老人ホーム(特養)の「居住費と食費の減免」が受けられる条件

出所:LIMO編集部作成

介護保険の負担限度額認定を受け、居住費と食費の減免を受けられるのは、次の3つのいずれにも該当する方です。

  • 本人及び同一世帯全員が住民税非課税であること
  • 本人の配偶者(別世帯も含む)が住民税非課税であること
  • 預貯金などの合計額が、基準額以下であること(次章を参照)
  • 特別養護老人ホームなどの介護保険施設で、食費や居住費の減免を受けるには、市区町村から交付された「介護保険負担限度額認定証」を施設に提示する必要があります。

    認定証の有効期間は1年間で、自動的に更新されないため注意が必要です。毎年7月が更新月となるため、施設入所を継続する方は、忘れずに更新手続きをおこないましょう。

    2. 負担限度額認定の利用者負担段階と利用者負担段階別の負担限度額(日額)

    次に、負担限度額認定の利用者負担段階と負担限度額を見ていきましょう。

    以下の表のように、負担限度額認定は、対象となる人の所得状況によって負担段階が区分され、区分ごとに負担限度額(施設に支払う1日当たりの金額)が決められています。

    2.1 【一覧表】利用者負担段階と負担限度額

    利用者負担段階と負担限度額

    負担限度額認定の一覧表。色は緑。

    出所:出雲市「介護保険負担限度額の認定について」をもとにLIMO編集部作成

    ■第1段階の認定要件
    所得要件

    • 市町村民税非課税世帯で老齢福祉年金受給者
    • 生活保護の被保護者

    資産要件

    • 1000万円(夫婦の場合 2000万円)

    ■第2段階の認定要件
    所得要件

    • 市町村民税世帯非課税世帯
    • 年金収入+その他の合計所得金額が年80万円以下の者

    資産要件

    • 650万円(夫婦の場合 1650万円)

    ■第3段階(1)の認定要件
    所得要件

    • 市町村民税世帯非課税世帯
    • 年金収入+その他の合計所得金額が年80万円超から120万円以下の者

    資産要件

    • 550万円(夫婦の場合 1550万円)

    ■第3段階(2)の認定要件
    所得要件

    • 市町村民税世帯非課税世帯
    • 年金収入+その他の合計所得金額が年120万円を超える者

    資産要件

    • 500万円(夫婦の場合 1500万円)

    たとえ住民税非課税世帯であっても、一定額以上の資産や収入がある方は、限度額が厳しくなるため、負担限度額認定の対象外となることには注意が必要となります。

    3. 特別養護老人ホームにおける第1段階から第3段階(2)までの負担限度額(日額)

    3.1 【第1段階】

    ■居住費

    • ユニット型個室:820円
    • ユニット型個室的多床室:490円
    • 従来型個室:320円
    • 多床室:0円

    ■食費:300円

    3.2 【第2段階】

    ■居住費

    • ユニット型個室:820円
    • ユニット型個室的多床室:490円
    • 従来型個室:420円
    • 多床室:370円

    ■食費:390円

    3.3 【第3段階(1)】

    ■居住費

    • ユニット型個室:1310円
    • ユニット型個室的多床室:1310円
    • 従来型個室:820円
    • 多床室:370円

    ■食費:650円

    3.4 【第3段階(2)】

    ■居住費

    • ユニット型個室:1310円
    • ユニット型個室的多床室:1310円
    • 従来型個室:820円
    • 多床室:370円

    ■食費:1360円

    第2段階の方は、居住費が部屋のタイプによって370〜820円、食費が390円に軽減されます。(日額)

    4. タンス預金や投資信託は?特養入所で「資産要件の対象となる資産」を知ろう

    具体的な資産要件について確認しておきましょう。対象となる資産は、以下の通りです。

    特養などの入所で「資産要件の対象となる資産」

    出所:各種資料をもとにLIMO編集部作成

    預貯金(普通・定期)

    • 有価証券(株式・国債など)
    • 金・銀(積立購入を含む)など
    • 投資信託
    • 現金(いわゆるタンス預金)

    市区町村の役所に負担限度額認定の申請をする際には、通帳や有価証券の口座残高のコピーを提出します。ローンなどの負債がある場合は預貯金などの合計金額から差し引かれます。

    申請時に虚偽の申告を行い、不正に負担軽減を受けた場合は、それまで受けた負担軽減額に加え最大2倍の加算金(負担軽減額と伴わせ最大3倍の額)を納付することになります。

    5. 【負担限度額認定制度】対象となる「介護保険施設・サービス」

    次に、負担限度額認定制度の対象となる施設・サービスを確認しましょう。
    対象となるのは、以下の介護保険施設とサービスです。

    • 特別養護老人ホーム
    • 介護老人保健施設
    • 介護医療院(介護療養型医療施設)
    • 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特別養護老人ホーム)
    • ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)

    これらの介護保険施設に入所、またはショートステイを利用したときに負担限度額認定制度の適用が受けられます。

    なお、介護保険施設は、ほかの施設より安い費用で利用できるため、入所希望者が多く、申し込みをしてもすぐに入所できないのが実情です。

    5.1 有料老人ホームなどの民間施設は対象外

    民間施設は、負担限度額認定制度の対象外です。具体的な施設の種類は以下の通りです。

    • 有料老人ホーム
    • サービス付き高齢者向け住宅
    • 小規模多機能型居宅介護
    • 看護小規模多機能型居宅介護
    • 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)

    民間施設は、介護保険施設よりも短い待機期間で入居できる場合が多く、負担限度額認定の対象外であっても、比較的安い料金で利用できる施設もあります。

    介護保険施設以外の入居先として検討してみてもよいでしょう。

    6. まとめにかえて

    住民税非課税世帯の方が特別養護老人ホームへ入所する場合、一定額以上の資産や収入がある方は、負担限度額認定制度の対象外となるため、食費と居住費の減免を受けることができません。

    このようなケースでは、特養だけを入居先として検討するのではなく、比較的安価な費用で利用できる有料老人ホームも選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

    参考資料

    • 厚生労働省「介護保険施設における負担限度額が変わります」
    • 出雲市「介護保険負担限度額の認定について」
    • 執筆者

      中谷 ミホ

      中谷 ミホ

      介護福祉士/ケアマネジャー/社会福祉士/保育士/福祉住環境コーディネーター3級

      福祉系短期大学を卒業後、生活支援員として障害者支援施設へ就職。その後、生活相談員、ケアマネジャーとして、養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院に勤め、地域に暮らす高齢者やその家族に対する相談援助、行政機関や地域コミュニティとの連携・調整等の業務に従事した。現在はフリーライターとして、福祉・介護業界での20年間の経験を活かした介護関連の記事を多く執筆している。