政権交代に現実味は? 6か月連続で支持率は過去最低を更新…与党内には焦りの声

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最新のJNN世論調査で岸田内閣の支持率は22.8%で6か月連続で過去最低を更新。次の衆議院選挙で「自民・公明による連立政権の継続をのぞむ」か「立憲民主党などによる政権交代をのぞむか」を聞いたところ、「政権交代をのぞむ」声が自・公政権継続を大幅に上回った。政権交代に現実味はあるのだろうか?与党内には焦りの声が広がっている。

全世代で「政権交代」が「自公政権継続」を上回る結果に

「各世代」と「性別」でより詳細に分析したところ、全世代で「政権交代をのぞむ」声が「自公政権継続」をのぞむ声を上回っている。(30歳未満女性のみ同率)

過去の民主党政権を覚えている世代と、知らない世代で結果が分かれるかと思ったが、とくに「世代別」「性別」で特徴が明確にでることもなく、全世代で「政権交代」を望む声が上回った。しいて言えば、「女性」のほうが、どちらも判断つかず「無回答・わからない」割合が多い傾向にあった。「全体」でも「無回答・わからない」は25%にのぼっている。

勢いづく立憲民主党 安倍派幹部の地元で「裏金一掃行脚」をスタート

「これは結構まずい」
ある自民党重鎮議員はこの結果に危機感を示した。これまで岸田内閣の支持率は低迷しても、自民党支持率が一定水準で保たれていることや、野党の支持率が伸びないことから、自民党内には楽観視する傾向にあったが、自民党の派閥パーティーの裏金事件が発覚してからその景色は一変した。別の閣僚経験者も「民主党政権の3年3か月を覚えている人はどんどん減っている。今は自民党いかがなものかと思う層が確実に増えてきている」と警鐘を鳴らしている。

「この板橋は意味のある場所になってませんか。相手は誰ですか。安倍派の幹部だったんじゃないですか。だから来たんですよ。一緒に裏金議員を一掃しようじゃないですか。私はこの政権交代行脚、まっとうな政治行脚、裏側一掃行脚をこの板橋からスタートさせました」

一方、立憲民主党は攻勢を強めている。
3月29日。野党第一党・立憲民主党の泉健太代表は東京・板橋区の成増駅で、完成したばかりの「まっとうな政治へ」と書かれたのぼりを立て、街頭演説を行った。ここは安倍派の事務総長をつとめた下村博文元文科大臣の地元だ。泉代表は「自民党の党内処分はとにかく甘い。自ら処分できないのであれば国民が処分するしかない」と語り、次の衆院選で、政権交代することの必要性を強く訴えた。
さらにこの日、安倍派「5人衆」のひとり萩生田光一前政調会長の八王子市でも街頭演説を行い、「裏金議員一掃行脚」をスタートさせた。立憲が独自で調査した直近の情勢調査で、好調な結果が出たことも攻勢に拍車をかけている。

政権交代“前夜”は自民・民主の支持率拮抗・・今回の政権交代望む声に「ほんまかいな」

しかしながら、自民党の支持率が25%(前回調査から+0.3)であるのに対し、立憲の支持率は6.1%(前回比ー1.0)、維新は4.3%(前回比+0.3)。自民と立憲などその他の野党との間には、支持率に大きな差がある。
岸田内閣が発足した21年10月から2年半、立憲民主党は4~9%の間で支持率が推移している。
一方、2009年9月、自民党が野党に転落する直前の自民と当時の民主党の支持率は、数か月にわたり両者が拮抗、民主党が追い抜く月も多く、今日とは随分風景が異なる。

今回「立憲などによる政権交代をのぞむ」声が「自公政権継続をのぞむ」声を上回ったことへの立憲内の意見は様々だ。「ついにここまで来たか」と勢いづく声もあるものの、立憲の支持率があがっていないことから、この結果に実感をもてない人も多い。
静岡県知事選の対応を巡り4月3日、取材に応じた立憲の渡辺周衆院議員はJNNの世論調査の結果に思わず「ほんまかいなっていうぐらい。今ちょっと支持率は上がってないんだけど」と漏らした。
これに対し、自民党関係者も「前回(09年)の政権交代の時よりも有権者は冷めている。あの時は一度民主党(当時)にやらせてみようという雰囲気があった。今は野党もダメなので、政治全体への見方が冷めている」と話した。

内閣支持率は6か月連続過去最低を更新 「岸田総理も処分を」が6割超

岸田内閣の支持率は22.8%で6か月連続で過去最低を更新。不支持率も75.0%でこちらも3か月連続で過去最高を更新した。裏金事件発覚から、岸田総理は意表を突く「岸田派」の解散、政倫審の自らの出席など“奇策”を打ったが、支持率は下げ止まらない状態だ。

岸田総理自らが新たに聴取を行った安倍派4人の幹部の処分を巡っても、自民党の8つの処分のうち最も重い「除名」、次に重い「離党勧告」を求める声が61%にのぼった。さらに岸田派の元会計責任者が政治資金規正法違反で有罪が確定しているが、岸田総理自身も処分を受けるべきかどうか聞いたところ、「受けるべきだ」が62%にのぼった。

4日、自民党の党紀委員会で、処分の内容が正式に決まった。報告書に不記載がないことを理由に岸田総理自らの処分は見送られた。今回の処分内容は国民世論と随分乖離があるのではないか。

「拉致問題解決問わず首脳会談を」37% 岸田総理の訪朝の後押しに?

岸田総理は就任以来、拉致問題など諸懸案の解決のために「条件をつけずいつでも金正恩総書記と直接向き合う」と首脳会談へ意欲を示している。
今回、北朝鮮の金正恩総書記との首脳会談を行うべきかどうか聞いたところ、
「拉致問題の解決にかかわらず会談を行った方が良い」が最も多く37%、次いで「拉致問題の解決が見通せるなら会談を行った方が良い」で29%だった。

ただ、金与正朝鮮労働党副部長は立て続けに談話を発表し、拉致問題を「これ以上解決することもない問題」、首脳会談についても「自分が望むからといって会うことができるわけではない」「首相の人気集めのための構想」などと強く牽制、3月26日には「日本側とのいかなる接触も拒否する」と表明した。
小泉総理時代の2002年は外務省の田中均アジア大洋州局長(当時)が極秘で北朝鮮側と交渉を続けてきたが、今回は金与正氏が「最近あるルートでできるだけ早い時期に(正恩氏に)直接会いたいという意向を我々に伝えてきた」と談話を表明。さらに29日は駐中国大使が日本側からの接触提案があったと暴露するなど、水面下の交渉が難航していることがうかがえる。長年拉致問題に取り組んできた閣僚経験者は「前回は極秘に進んだが今回は筒抜けだ。前回ほど北朝鮮も経済支援を求めておらず、首脳会談を行うことにメリットを感じていない」など首脳会談は容易ではないとの見通しを語っている。ただ一方で「安倍さんだったら頑なに拒否しただろうが、岸田さんだったらまだ可能性はあるのではないか」とも話す。4月10日(現地時間)に行われる予定の日米首脳会談でも、岸田総理が北朝鮮との交渉についてどの程度言及するかも注目だ。

(4月JNN世論調査結果概要は以下の通り)
●岸田内閣の支持率は22.8%。前の調査より0.1ポイントの下落。6か月連続過去最低を更新。不支持率は75.0%で前の調査より0.6ポイント上昇で4か月連続で過去最高を更新。

●政党支持率では自民党の支持が25.0%(0.3ポイント上昇)。立憲民主党は6.1%(1.0ポイント下落)。日本維新の会は4.3%(0.3ポイント上昇)。

●政治倫理審査会に出席した安倍派・二階派7人について、説明責任を「果たした」が4%、「果たしていない」が83%。

●実態解明のため森喜朗元総理への聴取が「必要だと思う」が77%、「必要だとは思わない」が13%。

●新たに聞き取りが行われた安倍派の幹部4人について、「除名」や「離党勧告」といったより厳しい処分が「必要だと思う」が61%、「必要だとは思わない」が26%。

●岸田総理自身も処分を「受けるべきだ」が62%、「受けるべきではない」が23%。

●次の衆議院選挙で、「自公政権の継続をのぞむ」が32%、立憲民主党などによる「政権交代をのぞむ」が42%。

●岸田総理が、北朝鮮の金正恩総書記と首脳会談を行うべきかどうかについては、「拉致問題の解決に関わらず会談は行ったほうが良い」が37%、「拉致問題の解決が見通せるなら会談を行った方が良い」が29%、「拉致問題の解決が見通せないなら会談を行うべきではない」が23%、「拉致問題の解決に関わらず会談は行うべきではない」が9%だった。

●日英伊で共同開発する次期戦闘機を、政府が紛争国は除外し、同盟国などに限定して輸出する方針を閣議決定したことについて、「賛成」が42%、「反対」が40%。

【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。
3月30日(土)、31日(日)に全国18歳以上の男女2190人〔固定910人、携帯1280人〕に調査を行い、そのうち47.3%にあたる1036人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話528人、携帯508人でした。

インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。
より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。

TBSテレビ政治部 世論調査担当デスク 室井祐作