家じまいの費用はいくら?手順や空き家を放置するリスクを解説

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子どもが独立して、高齢者だけの世帯が激増している背景があり、今世の中は「終活ブーム」とでもいうべき状態になっています。その終活ブームのなかで、もっとも重要なのは、やはり「家じまい」でしょう。

当記事では、家じまいのやり方や家じまいにかかる費用などについて、徹底的に解説していきます。家じまいを検討中の方はぜひ参考にしてください。

1. 家じまいとは

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長年生活した家を自分で処分することを、一般的に「家じまい」といいます。家じまいの理由は人それぞれ違いますが、終活の一環として自分の住む家を売却し、別な場所へ引っ越すケースがほとんどです。

具体的な方法としては、大きく以下の3点が考えられます。

  • 老人ホームに入居
  • 賃貸住宅を借りる
  • 子ども世帯と同居
  • どの方法を選ぶにせよ、家じまいは、自分の意志でおこなう点が大きなポイントです。

    両親が他界し、誰も継がない実家を子どもが処分するのは、通常「実家じまい」と呼ばれます。名前は似ていますが、内容はまったく異なるので、混同しないようにしましょう。

    また、家じまいの当事者からすると、自分の老いや死とも向き合う必要があり、寂しさや喪失感を伴うことも少なくありません。しかし、家じまいは、人生の後半戦をスムーズに過ごすために欠かせない重要なステップです。あとから後悔することのないよう、今回紹介する内容を上手に活用していきましょう。

    2. 家じまいを考える主な理由・きっかけ

    家じまいといっても、家じまいを検討するきっかけは人それぞれです。今回は、よく耳にする3つの理由をピックアップして解説していきます。

    誰も家を継がない、継いでくれる人がいない

    現代社会では、「家を継いでくれる人がいない」という状況が増えています。「核家族化の進行」「子どもの都市部への移住」「単純に子どもがいない」など、理由はさまざまです。

    どういった理由があるにせよ、自分たちより若い世代が家に住んでくれなければ、家じまいを選択するしかありません。

    その際は、自宅を処分するか、そのまま残しておくかの選択を迫られます。心情的には、思い出の詰まった家を手放したくないという人も多いでしょう。しかし、自宅を残したまま親世帯が死亡すれば、子どもに実家じまいを丸投げすることになってしまいます。

    賃貸に出す方法もありますが、遠方にある実家の管理をするのは、想像以上に負担がかかるものです。そういった面倒事を子どもに残さないように、生前に家じまいをする人が近年増えています。

    施設に入所する、空き家になる

    高齢化社会の進行に伴い、「施設に入所するため実家が空き家になる」という状況が増加しています。昔は3世帯が同居するのは当たり前で、近所には親戚や古くからの友人がたくさんいる状況も珍しくありませんでした。

    しかし、親世代のみで暮らす世帯が多い現在、介護が必要になっても、自宅で世話を受けることは現実的にむずかしいでしょう。そこで多くの人は、将来的なことを考えて、まだ自力で生活できるうちに介護施設への入所を選択します。

    もちろん、いくら施設へ入所したといっても、親が存命のうちは家じまいに対する抵抗感があるものです。しかし、子ども世帯が引き継ぐ可能性がないなら、できるだけ早く処分するほうが賢明でしょう。

    放置しておけば家は一気に劣化してしまいます。そうなればいざ売却することになっても、売却価格は極端に安くなってしまうでしょう。

    維持費が払えない

    住宅を所有していると、固定資産税をはじめ、保険料・修繕費がかかります。退職後に収入が年金だけになると、これまで維持できていた維持費が、段々と大きな負担になってくるものです。

    築年数が数十年ともなれば、屋根や外壁もかなり劣化しています。劣化したまま放置しておくと、建物の寿命が一気に短くなるので、15〜10年ごとのメンテナンスは欠かせません。吹き替えや再塗装になれば、屋根・外装ともそれぞれ100万円以上はかかります。

    また、給湯器やエアコンなどの設備機器も10〜15年で寿命がくるため、毎回数十万円単位の出費は覚悟しておく必要があるでしょう。

    こうした維持費は、住宅を所有している限り、必ず発生します。家を手放す決断は容易ではありませんが、維持費用の負担が生活を大幅に圧迫する場合、家じまいは合理的な選択肢のひとつになるはずです。

    3. 家じまいをせず、放置するリスク

    注意点
    前述の通り、家を所有していれば、固定資産税や維持費がかかります。もちろん、家じまいを放置するリスクは、それだけではありません。今回はとくに影響の大きい3つのリスクに焦点を当てて、解説していきます。

    災害・犯罪・害虫問題

    家じまいをせずに空き家のまま放置すると、災害・犯罪・害虫(害獣)という3つの大きなリスクに頭を悩ませることになります。

    まず、放置された家はどうしても自然災害時のリスクが高くなります。湿気やホコリを起点に大量発生したカビや虫により、建材はどんどん劣化。屋根や外壁もメンテナンスされていないため、いつか必ず雨漏りが発生します。

    そういった状態で、大きな地震や台風・大雪が発生すれば、建物が倒壊する確率は高いです。仮に、隣家へ壊れた屋根が落下したら、賠償問題に発展しかねません。

    次に、犯罪の問題もあります。空き家は不法侵入が簡単にできてしまうため、実家が犯罪の温床になる可能性もあります。また、犯罪のアジトとまではいかなくても、ゴミや雑草が放置された空き家は、放火のターゲットにされることも少なくありません。

    さらに、害虫や害獣の問題も無視できないでしょう。空き家は、ネズミ・ゴキブリ・シロアリなどの害虫や害獣にとって、絶好の住処です。害虫・害獣問題は、近隣にも影響をおよぼすため、近隣住民との人間関係にも悪い影響を与えてしまいます。

    固定資産税が6倍に

    放置している空き家が「特定空き家(近隣に悪影響をおよぼす可能性のある空き家)※」に認定されると、固定資産税の特例措置が適用除外になります。

    住宅が建っている土地は、面積ごとにそれぞれ以下の計算式で課税額が決まります。

  • 小規模住宅用地(200m2までの土地):固定資産税評価額 × 1/6 × 1.4%
  • 一般住宅用地(200m2を超える部分の土地):固定資産税評価額 × 1/3 × 1.4%
  • 最近よく「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」と聞きますが、それは上記の1/6という軽減率が適用されなくなってしまうからです。

    なお、負担調整が入るため、実際の固定資産税の増額は6倍ではなく3〜4倍となります。とはいえ、固定資産税の負担が大幅にアップするのは間違いなく、できるだけ早い対応が求められます。

    出典:東京都主税局 「特定空家等」

    相続問題の複雑化

    家じまいをせず実家の放置が長期化すれば、子ども世帯以降へ、将来的に相続問題を背負わせることになります。自分の子どもならともかく、孫やひ孫まで相続問題が繰り延べられれば、相続問題が複雑化してしまう可能性は高いです。

    まず、代替わりをすれば付き合いも減り、連絡先すら知らない相続人とやり取りをしなければなりません。売却益が出るならともかく、何年も放置され老朽化が進んだ家を進んで欲しがる人はいないでしょう。そのため、交渉は難航を極めることが容易に予想できます。

    さらに、相続を放棄しても相続人全員が相続放棄すれば、相続人全員に空き家の管理義務が発生する可能性も出てきます。最終的に、「相続財産管理人」を選定して権利を放棄するまで、この管理義務はなくなりません。

    もし、その間に建物の崩壊による事故が発生すれば、損害賠償をされる可能性もゼロではないのです。家の放置により、こういった負担を子孫に押しつけていることを、しっかりと認識しておきましょう。

    4. 家じまいの手順

    掃除
    家じまいをしないリスクがわかったところで、今度は大まかな家じまいの手順を見ていきましょう。

    親族の意向確認

    家じまいをする前に、なにを置いても、親族(子どもがいない場合は、兄弟や親戚)の意向確認が必須です。もちろん、家じまいの主体は、実際に住んでいる親世帯でしょう。

    しかし、現在別世帯として暮らしていても、子どもにすれば実家は生まれ育った大切な場所です。なにも知らずに実家がなくなることにでもなれば、寂しい気持ちになって当然だし、最悪の場合は親子関係に亀裂が入ってしまう可能性もあります。

    まずは、年齢的に家じまいの検討中である旨を、しっかりと子どもに伝えてください。そうすれば、子どもが保管してある荷物を引き上げる時間的余裕もできるし、親子双方の将来を考えるよいきっかけになるはずです。

    今後年齢を重ねるごとに、子どものサポートが必要になるケースは確実に増えてきます。勝手な家じまいで関係を損ねることのないよう、くれぐれも注意してください。

    家じまい後の住まいの検討・準備

    家じまいとは、「住み慣れた家を離れる」と、同義語です。家を処分して移り住む必要があるからこそ家じまいを決断したはずですが、その後の住まいをしっかり考えておかないとあとから後悔することになりかねません。

    具体的な家じまい後の住まいとしては、前述の通り以下の3パターンが考えられます。

  • 老人ホームに入居
  • 賃貸住宅を借りる
  • 子ども世帯と同居
  • 上記の選択肢に、絶対的な正解はありません。

    健康面に不安があれば、メディカルケアの充実した老人ホームはおすすめです。子どもと関係もよく、都心部への転居がOKなら、子どもと同居という選択肢もありでしょう。同居までいかなくても、子どもの家の近所にマンションを借りるという方法もあります。

    家じまいの方法の検討

    家じまいのあとに住む場所が決まったら、そこで終わりではありません。現在住んでいる自宅を手放す方法についても、しっかりと考えておく必要があります。

    具体的な方法としては、大きく3つのパターンが考えられます。

  • 売却
  • 不動産買取業者に依頼
  • 資産活用
  • 可能であれば、自宅を売却できればベストです。税金や維持費の負担がなくなり、ある程度まとまったお金も手に入ります。その他の方法については、のちほど詳しく解説します。

    片付け

    ある意味、家じまいのメインとなるのが、「家の片付け」になります。ひと言で片付けといっても、これまで何十年もかけて蓄積された物品を整理するのは、相当大変です。捨てるものと新居へ持っていくものを分類するだけでも、最低数ヶ月は必要でしょう。

    本当に必要なものの選別以外は、思い切って不用品回収業者へ依頼するのもひとつの方法です。ただし、田舎の大きな家なら、一般的な2tトラックが最低でも2〜3台分は必要になります。

    15〜25万円程度の費用はかかりますが、面倒な片付けをすべてお任せできると考えれば、決して高くはないはずです。なお、契約の前に、必ず複数の業者から見積もりをもらってください。1社だけの見積もりしかないと、見積もりの比較による相場の確認ができません。

    5. 家じまいの方法

    家じまいの方法は、大きく売却・資産活用・無償譲渡の3種類です。ただ、同じ売却でも更地での売却や不動産買取サービスの利用なども考えられます。それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

    そのまま売却

    売り物件
    家じまいでまず考えるべきは、解体をせずにそのまま売却する方法です。建物ごと売却できれば、解体が必要ないので、手間とコストを大幅に削減できます。築年数が古くても、立地条件と価格のバランスがよければ、売却はそれほどむずかしくありません。

    とはいえ、大規模な修繕が必要な場合は、購入後の出費が敬遠されて、なかなか売れない可能性が高いです。そのまま売却か、それとも解体して更地で売却するべきか、まずは複数の不動産業者に相談してみましょう。

    持ち家の売却は、適切な不動産業者の選定がキーポイントです。どの不動産会社にも、得意な分野があります。マンション売買を得意とする会社もあれば、賃貸を得意とする会社もあるでしょう。

    家じまいで狙うべきは、当然戸建住宅の売買に強い会社です。ホームページやポータルサイトを中心に、販売実績や口コミなどをしっかりとチェックしてください。

    解体後、土地を売却

    リフォームで対応できる程度の劣化なら、まずは建物つきで売り出すものいいかもしれません。しかし、建物の劣化が激しい場合は、建物を解体して土地だけ売却するほうが、メリットは大きいです。

    更地なら解体費用が発生しないので、新築を検討中の人もターゲットに入ってきます。とくに立地条件がよく土地の価値が高い場合は、更地にして駐車場や商業施設の開発業者にアプローチするほうが、高額での売却を期待できるでしょう。

    もちろん、更地にすれば、解体費用がかかります。建物の大きさ・構造体・周辺状況にもよりますが、40坪の木造住宅でおよそ120〜200万円は必要です。

    当たり前ですが、いったん解体すれば元には戻せません。解体を決定する前に、解体費用と売却価格のバランスを慎重に検討してください。

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    40坪の家の解体費用はいくら?費用相場と安く抑えるポイントを解説!

    不動産買取をする

    立地条件が悪くてなかなか売れない・できるだけ早く売却したいといった理由がある場合は、不動産買取業者へ依頼する方法もあります。不動産買取は、仲介役として買いたい人を探すのではなく、不動産会社が直接物件を買い取ってくれるシステムです。

    以下に、不動産買取と通常の仲介との違いをわかりやすく表にまとめました。

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    上表からもわかるように、不動産買取には大きく3つのメリットがあります。

  • すぐに現金が手に入る
  • 仲介手数料を払う必要がない
  • 契約不適合責任を問われない
  • ただし、購入した住宅にリノベーションをして再販するシステム上、買取価格は市場価格の70〜80%程度に設定されています。多少安くても確実に実家を手放したいなら、不動産買取を検討してみるとよいでしょう。

    資産活用する

    立地条件がよければ、売却をせずに、他の用途に転用する方法もあります。もっともポピュラーな資産活用は、やはり共同住宅の経営でしょう。賃貸アパートやマンションを建てれば、毎月家賃という定期収入が入ってきます。

    もちろん、空室を極力出さないために、定期的な広告・こまめなメンテナンス・入居者との関係づくりなど、やるべきことはたくさんあります。

    しかし、こういった業務のほとんどは、管理会社への委託が可能です。はじめての賃貸経営でも、しっかりした業者とタッグを組めれば、それほど不安がる必要はありません。

    その他にも、リノベーションをした賃貸一戸建てとして、収益を得る方法もあります。あるいは立地がよければ、更地にして駐車場やコインランドリー、トランクルームなどに転用するのもいいかもしれません。

    いずれにせよ、資産活用を検討する場合は、できるだけ多くの業者(建築会社やコンサルタント会社など)から説明を受けて、こまかく比較検討してください。安易に飛びつくと、大きな損失を出す危険性があるので、慎重に判断しましょう。

    6. 家じまいにかかる費用

    計算をする人
    最後に、家じまいにかかる費用を、大まかに紹介しておきます。

    家のなかの片付けの費用

    家じまいのメイン作業は、やはり家のなかの片付けでしょう。一般的に高齢者の住む家は、ものが多く、必要なものと処分するものを選別するだけでもひと苦労です。

    30〜40坪の一般的な家屋の場合、20万円前後の費用がかかります。もちろん、片付けの費用をケチって、自力でおこなうことも不可能ではありません。しかし、手間と労力を考えたら、不用品回収業者へ整理と処分を一括で依頼する価値は十分あります。

    費用については、家の大きさ・廃棄物の種類と量によって大きく変わります。専門の片付け業者に依頼する場合、基本料金と廃棄物の処分費用を両方請求されるのが一般的です。また、ビアノや高級家具といった傷に弱いものを移動する場合は、割増料金を請求されると考えてください。

    解体する場合の費用

    解体費用は、解体する建物の大きさ・構造・立地、そして廃材の処分方法によって大きく異なります。

    あくまでも概算になりますが、30〜40坪の一般的な木造一戸建て住宅の解体費用は、坪あたり3〜5万円が相場です。30坪なら約90〜150万円、40坪なら約120〜200万円かかる計算になります。

    ただし、この金額はあくまでも概算です。会社によって解体費用は大きく異なるため、必ず複数(できれば3社以上)の見積もりを取ってください。3社以上の見積もりを比較すれば、おおよその相場感は掴めるはずです。

    売却する場合の費用

    売却する場合の主な費用は、以下の表にまとめた通りです。

    〈売却価格3,000万円の一戸建て住宅の場合〉

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    更地での売却の場合は、上記費用にプラスして解体費用と片付け費用がかかります。また売却にかかる費用は、売却価格・物件の種類・立地条件によって、大きく変化します。実際の売却時には複数の専門家に相談し、正確な費用を確認してから売却を決定してください。

    7. まとめ

    家じまいをするには、どういった形にせよ、住み慣れた家を処分しなければなりません。そのため、どうしても家じまいに踏み切れず、あとから問題が複雑化するケースも少なくないのです。

    子どもが実家を継いでくれるならともかく、住む人のいない家を所有していても、余計な維持費がかかるだけです。さらに、劣化が進めば、いざ売却しようと思っても買ってもらえない可能性が出てきます。

    家じまいをする確固たる理由があるなら、今回の記事を参考に、できるだけ早く家じまいに取り組んでください。

    執筆   オウチーノニュース編集部

    マイホーム購入のダンドリ、不動産売却にかかる費用、賃貸物件の探し方など、住まいの基礎知識から契約、税金といった専門的な内容までわかりやすく解説。宅地建物取引士や司法書士、税理士、FPなどの不動産・お金の専門家が、監修・執筆した記事を配信しています。
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