日本の健康保険は「国民皆保険」なので、国民はいずれかの健康保険に加入することになっています。
たとえば、会社に勤務している人が加入するのは、「健康保険組合」「協会けんぽ」のいずれかです。
年度末は就職や転職等で、保険証が変わる方も多いでしょう。
しかし、「健康保険組合」「協会けんぽ」に加入しているにも関わらず、その人が世帯主だった場合、国民健康保険の納付書が届くことがあります。
世帯主は「どうして国民健康保険の納付書が届くの?払うべきなの?」と悩んでしまうかもしれません。
今回は、「国民健康保険に加入していないのに請求書が送られてきました。払うべきか?」に対する回答と、国民健康保険料の決まり方、保険料が高くて支払えない場合の対処方法などを解説します。
1. 「国民健康保険に加入していないのに請求書が送られてきました。払うべきですか?」の回答
国民健康保険に関する保険料の計算や納付は、原則として住民票の世帯ごとに行われます。
そのため、世帯主は「健康保険組合」「協会けんぽ」に加入していて、国民健康保険の加入者でない場合でも、子どもが会社を退職して失業中であったり、自営業者などで国民健康保険に加入していたりすれば、世帯主の宛先で通知書や納付書が送付されます。
このように世帯主が国民健康保険に加入していなくても、通知書等の送付先や納付義務者となることを「擬制世帯主」といいます。
ただし、通知書等の宛名の下には「被保険者でない世帯主」と表記してあります。
国民健康保険は、住民票の世帯ごとに計算される都合上、世帯主宛に国民健康保険の通知書や納付書等が届く場合があります。
とはいえ、保険料を支払うべきなのは国民健康保険に加入している被保険者本人です。
届いた通知書や納付書等は、すみやかに被保険者本人に渡してあげましょう。
2. 国民健康保険制度について1:国民健康保険料の決まり方
会社員や公務員であれば、「健康保険組合」「協会けんぽ」「共済組合」のいずれかに加入します。
しかし、退職して現在失業中という場合や、個人事業主などで独立した人などは「国民健康保」に加入することになります。
国民健康保険の加入資格
その際の保険料は前年の所得に対し、請求されます。
国民健康保険料の賦課方法
したがって、前年の所得に比べて今年の所得が著しく少ないという場合でも、請求される保険料は大きいと感じることもあります。
もし、現在の所得が少ない場合、その結果が反映される翌年度になれば、国民健康保険料の負担が減ることもあります。
国民健康保険料については、お住いの自治体の「国保年金課 保険料係」等にお問い合わせください。
3. 国民健康保険制度について2:国民健康保険料が高く納期限までに支払えないときは
国民健康保険料が高く、納期どおりに支払うのが難しい…という場合は、お住いの自治体の「国保年金課 保険料係」等に相談すれば、分割納付などの方法を提案してもらえることもあります。
国民健康保険料を滞納していると、さまざまなペナルティがつきます。
たとえば、
- 保険料に延滞金が加算される
- 通常の保険証ではなく、有効期間が短い「短期被保険者証」に切り替えになる
- 医療機関で医療費をいったん全額自己負担することになる「資格証明書(高校生世代以下の方を除く)」が交付される
などです。
さらには、財産調査をしたうえで、差押の処分(預貯金、不動産、給与等)が行われることもあります。
万が一の病気やケガの際に困るのは被保険者本人です。
国民健康保険料を納期限までに支払えないときは、早めに相談するようにしましょう。
4. 国民健康保険制度について3:国民健康保険料の軽減・減免について
国民健康保険料については、一定の理由があれば負担が軽減されたり減免されたりすることがあります。
主な理由は、以下のとおりです。
それぞれの項目に心あたりがある方は、詳しい内容をお住いの自治体の「国保年金課 保険料係」等に問い合わせましょう。
4.1 非自発的失業者に対する国民健康保険料の軽減
非自発的失業者とは、解雇等による会社都合退職、または病気や介護等の正当な理由による自己都合退職に該当すれば、国民健康保険料の軽減を受けることができます。
4.2 産前産後期間の国民健康保険料の軽減
出産する予定の被保険者又は出産した被保険者の一定期間であれば、国民健康保険料が免除になります。
産前産後期間には、妊娠85日(4か月)以上の分娩(死産、流産、早産)の場合も含みます。
4.3 特例対象被保険者等(非自発的失業者等)に準ずる者に係る国民健康保険料の減免
倒産、解雇、病気などの理由で離職したとき、前述の「非自発的失業者に対する国民健康保険料の軽減」に該当していなくても、保険料の減免を受けられる場合があります。
個別の案内となるため、手続きには自治体の「国保年金課」等に直接行くことになります。
4.4 災害による減免
災害等により生活が著しく困難となった場合、またはこれに準ずると認められる場合、国民健康保険料が減免となります。
5. まとめにかえて
日本の健康保険は「国民皆保険」。
そのため国民は、「健康保険組合」「協会けんぽ」「共済」「国民健康保険」、75歳以上は「後期高齢者医療制度」のどれかに加入することになっています。
もし、国民健康保険への加入が必要なときはすみやかに手続きを行い、保険料の負担が高いときは、担当者に相談するようにしましょう。
参考資料
執筆者
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年勤務したのち、FPとして独立。ひとりひとりのお金に対する価値観を大事にしながら、ムリのない節約術を提案している。他のメディア媒体でも、お金に関する記事の執筆を行う。読者がすっと理解できるよう、文章の構成や表現などを意識している。LIMO編集部では、お金やペットの記事を執筆。自宅では、3匹の猫(12歳~19歳)と暮らしており、猫の健康管理や介護は得意分野。趣味は、落語、宝塚。愛読書は、P・G・ウッドハウスのジーヴスシリーズ(2023年11月20日更新)。