桜を家の庭に植えると「縁起が悪い」といわれる理由 植えたいときの注意点は? プロが解説

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桜の季節が到来(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 今年も桜の季節がやってきます。お花見を予定している人も多いでしょう。桜は日本を代表する花木ですが、家の庭木としては昔から「縁起が悪い」と言われ、避けられる傾向にあります。なぜなのでしょうか。フラワー&グリーンコーディネーターののなかりえこさんのお話とともに紹介します。

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春の風物詩の桜は古くから親しみのある花木

 桜は、古くから日本人にとって親しみのある花木です。桜の「さ」は春に里へ舞い降りる田の神を、「くら」は神が降り立つ座のことを意味し、桜は神様の宿る木と考えられていたといわれています。

 平安時代の貴族は、桜の花を愛でるために宴を開いて歌を詠みました。また農家では、桜の下で田の神様を迎え豊作を祈願し、桜の咲き方でその年の収穫を占うなどしていたといわれています。江戸時代になると、春の行楽として花見に出かけ、宴会を楽しむ風習が庶民の間にも広まりました。現代でも、桜の開花は春の風物詩として日本人の暮らしに根づいています。

 その一方で、家の庭に桜を植えることは「縁起が悪い」といわれ、昔から忌み嫌われてきました。理由のひとつには、花がすぐに散ってしまうことが「短命」や「離散」を連想させるからとする説が。桜を家の庭に植えると、その家が繁栄せずに廃れてしまうと考えられ、縁起が悪いとされる言い伝えが生まれたといわれています。

 もちろん桜と短命に関係性はなく、単なる迷信にすぎません。しかし、実際に桜の木を家の庭に植えると、管理が大変で家屋に影響を及ぼすといったリスクもあるようで、安易に植えてはいけないことの戒めとする説が有力です。

家の庭に植える木に桜が向かない理由とは

 もし自宅の庭に桜の木を植えるとしたら、具体的にどのようなリスクや注意点があるのでしょうか。フラワー&グリーンコーディネーターののなかりえこさんに話を伺いました。

――桜を家の庭に植えてはいけないといわれる理由は、どんなところにあるでしょうか。

のなかさん(以下、同)「桜の木は成長が早く、枝が横に広がります。公園で見る桜を思い返していただくとわかるように、大きく育つ樹木です。道路や隣家に枝を伸ばしてしまうこともしばしば。また、根の張りも強いため、十分な広さがある場合を除き、建物の基礎部分を壊すリスクがあります。街路樹の桜が、アスファルトを持ち上げてしまっているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。そのため、家の庭木としては不向きといわれています。

 桜は品種が多く、なかには大きく育たないものもあります。どうしても桜を家の庭に植えたい場合は、庭木を扱うお店のスタッフなど専門家に相談してみましょう。同時にどんな手入れが必要かも認識しておく必要があります」

――桜の手入れは大変なのでしょうか。具体的にどういった注意点がありますか。

「花びらや落ち葉の掃除が大変です。また、害虫がつきやすいので、消毒をする必要が出てきます。ご自身の敷地内のみであればまだ良いのですが、敷地外に影響が及んでしまう場合は、それらの点にも気をつけなければいけません。台風などの強風で枝が折れてしまうこともあります。ご近所への配慮が必要です。

『桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿』ということわざがありますが、それは桜が剪定に弱いことを表しています。枝を切ると、そこから菌が入って腐ってしまうことがあるからです。切り口には保護剤を塗るなどしなければなりません。消毒も、大きな木に薬を散布するのは大変な作業です。剪定や消毒はプロにお任せするほうが良いでしょう」

――自宅で桜を楽しむ方法として、何かありましたら教えてください。

「鉢植えや盆栽でも楽しむことができるほか、季節になると、花店に桜の切り枝が並びます。大きな花瓶を用意して部屋に飾ると良いでしょう。枝の先を十字に裂くようにして割り、やや深めの水に浸けて水揚げしてから飾ると、水の吸いが良くなります。長く楽しみたいときは、つぼみが多いものを選びましょう」

(Hint-Pot編集部)

のなか りえこ

フラワー&グリーンコーディネーター。インテリア商材を扱う仕事から花の世界へ。現在はフリーで活動中。花と植物に関する提案・制作(装花・装飾・植栽など)を中心に行う。
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