日本人がいよいよ「絶滅危惧種」になる…この国がもう一度「豊かな国」になる「たったひとつの方法」

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人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が「10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか?についての明らかにした書だ。

※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。

三大都市圏も終わりを迎える

維持できなくなるのは「47都道府県」だけではないかもしれない。これまで国土計画は「東京圏」と「関西圏」(大阪圏と同じ。本書では関西圏に統一する)、「名古屋圏」という三大都市圏を軸として考えられてきた。だが、こうした“現在の三大都市圏”でさえいつか終わりのときを迎えることになるかもしれないのだ。

とりわけ人口の減り方が著しいのが関西圏である。前出の「日本の地域別将来推計人口」は、2015年を「100%」として2045年の指数を予測しているが、大阪府は17.0%減、京都府と兵庫県が18.1%減、奈良県26.8%減と大きく縮小する。この減り方は、地方圏に属する県と比べても激しい(滋賀県10.6%減、広島県14.6%減、岡山県15.7%減)。

もちろん、地域の人口見通しは全国規模で考えるのとは異なり、人々の移動が大きく影響する。2025年には大阪・関西万国博覧会が開催されることもあり、政府の推計値とは全く異なる未来が到来する可能性だって小さくない。

だが、都道府県の再編や「関西圏」の縮小が現実味をもって語られるほどに、人口減少スピードの地域差はわれわれに激烈な変化を求めてこよう。

都道府県の再編や国土軸が大きく変わる時代が来たとしても、「地域の暮らし」が突如として消えるわけではない。だが一方で、人口激減下の日本で地域の暮らしを守ろうと思うならば、住民側も価値観や意識を変える必要がある。人々が協力しながら、コンパクトでスマートな社会を築いていくしかないのだ。

「ドット型国家」への移行

政府や与党内には、いまだに「国土の均衡ある発展」を掲げ続けようという動きが残っている。高速交通網の整備などに代表される大型開発計画を地域経済の起爆剤にしようという発想もある。だが、それは田中角栄政権の“日本列島改造論”に代表されるような、人口が増えていた時代の理想であり、人口減少が避けられなくなったいまは求めようがない。

いま、わが国に求められているのは、人口減少を前提として、それでも「豊かさ」を維持できるよう産業構造をシフトさせていくことであり、国民生活が極度の不自由に陥らぬよう社会システムを根本から作り替えていくことである。

いつまでも「国土の均衡ある発展」にしがみつくならば、日本にとどめを刺すこととなりかねない。いまの日本には、一から開発している時間的余裕などないのだ。いい加減、われわれは「日本が内側から崩壊し始めている」という厳しい認識を持たなければ、取り返しがつかなくなる。

他方、人口減少が深刻化しているにもかかわらず、道州制構想を唱える声がなくならない。人口規模を拡大させて課題を乗り切ろうとした「平成の大合併」を思い出すべきであろう。その大半は、過疎地域を拡大させたばかりか、少なくなった自治体職員のひとり当たりの「受け持ちエリア」を増やす結果に終わった。同じ愚を繰り返してはならない。

私は、旧来の発想を転換して「戦略的に縮む」ことを提唱している。多少は小さな社会になろうとも、「豊かな国」は実現し得ると考えるからだ。

「戦略的に縮む」には、「国土の均衡ある発展」から路線転換し、「拠点型国家」へと移行する必要がある。地図に落とし込めば点描画となるような「ドット型国家」への移行だ。

ここでいう拠点とは、少人数でも高い利益を上げられるビジネスが存在し、高齢者が歩ける範囲で日常生活を完結できるスマートな暮らしが待っているエリアのことである。

こう説明すると、コンパクトシティと同じではないかと思われるかもしれないが、政府などが語るコンパクトシティとは、既存自治体を前提とし、その中心市街地に人口集約を図ろうという考え方だ。これに対して、私が提唱する「ドット型国家」とは、既存自治体の枠組みにとらわれず、もっと狭いエリアごとに“ミニ国家”(=王国)を作るイメージである。これまで語られてきたコンパクトシティとは全く別の考え方だ。

これならば、「地方の切り捨て」にはならない。「ドット型国家」への移行こそ、日本が人口減少下でも豊かさを維持し続ける唯一の策であり、真の意味での地方創生となろう。

拠点を築くためには、地域の強みを知ることはもとより、人口減少が日本列島をどう変貌させていくのか、エリアごとの推移を知る必要がある。拠点の完成には、その地に住む人々だけではなく、様々な分野の連携が不可欠だからだ。他地域の実情や地域差を知れば補完関係を築けるし、個々に異なるニーズに応えることがビジネスチャンスともなる。

人口減少社会では、暮らしにおいても、行政サービスやビジネスを展開するにしても、「エリアマネジメント」を抜きにしてはうまくいかない。それぞれの拠点において、そこに住む人々が豊かさを維持するための独自の方策を自ら考え、決めていくことが不可欠となる。住民を支えるビジネスも、それぞれの拠点の実情をよく見極め、個々に最も適したサービスや製品を提供しなければ成り立たなくなるだろう。

河合 雅司

作家・ジャーナリスト