日本がすでに直面している「少子化」の厳しすぎる現実…都道府県の人口差が30倍になる未来

人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が「10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか?についての明らかにした書だ。

※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。

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少子化を傍観した平成

日本が少子高齢社会にあることは、誰もが知る「常識」である。だが、自分の住む地域の変貌ぶりをわかっている日本人は、いったいどれくらいいるだろうか?

平成を振り返ってみると、私は「少子化を傍観した時代」であったと捉えている。平成の歩みは、イコール出生数激減の歩みだったからである。

平成元年である1989年は「少子化日本」にとって象徴的な年であった。合計特殊出生率(1人の女性が生涯に出産する子供数の推計値)が1.57となり、丙午(ひの えうま)だった1966年の1.58を下回ったのだ。いわゆる「1.57ショック」である。

その事実が判明した際、メディアは大々的に取り上げた。しかしながら、バブル経済に踊っていた国民の関心が長く続くことはなかった。

「1.57ショック」以降も、少子化をめぐる深刻なニュースは続いた。合計特殊出生率が過去最低の1.26にまで下がり、厚生労働省の人口動態統計で初めて人口減少が確認されたのは2005年のことである。だが、この時も国民は深刻に受け止めることなく、政府や国会議員が対策に本腰を入れることはなかった。

平成時代に「大人」であった世代は、この問題に見て見ぬふりを続けたといえよう。自戒を込めて語るならば、地方消滅や年金制度破綻の危機が叫ばれてから慌てる姿は、あまりにも滑稽である。もし「1.57ショック」を契機に国民がもっと強い危機感を抱き、適切な対策が講じられてきたならば、日本社会は全く違うものとなっていただろう。

歴史を紐解くと、改元はその時々の「国難」を打開せんがために行われることが少なくなかった。そうした意味では、今回の改元によって社会の空気が一新され、現在の「国難」である少子高齢化が少しでも和らぐことを願わずにはいられない。

とはいえ、厳しい状況に追い込まれている現実がある。過去の出生数減少の影響で出産可能な年齢の女性数も激減していくため、日本の少子化は簡単には止まらないからだ。

出生率が多少改善したとしても出生数は減っていくという事実から顔を背け、目を閉じていたのでは何も解決しない。

人口減少は2段階で進む

実際のところ、日本の人口減少は加速してきた。厚生労働省の人口動態統計(年間推計)によれば、2018年の減少幅は44万8000人となり、ついに40万人台に突入した。
減少幅は年を追うごとに拡大していく。2050年代には毎年、毎年90万人ほど減る。みるみるうちに、この国は小さくなっていくことだろう。

国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の「日本の将来推計人口」(2017年)によれば、わずか40年後には9000万人を下回って、現在より3割ほど少ない「7割国家」となる。そして、100年も経たないうちに人口は半減する。

われわれはIT技術を進化させ、縦横無尽に交通網を築き上げてきた。そのような複雑な社会にあって、こんなスピードとボリュームで人口が減り、少子高齢化が進むのでは、経済活動はもとより、国民生活に思いもよらない影響が生じるだろう。

意外と知られていないことだが、人口減少は2段階で進む。

第1段階は2042年までだ。この時期は若者が減る一方で高齢者数は増え続ける。すなわち、これからの四半世紀、われわれは高齢者対策に追われることになる。

そして、2043年以降が第2段階だ。高齢者も減り、若い世代はもっと減っていく時代だ。高齢者も若者も減るのだから、この頃から人口が急落する。しかも総人口の4割近くを高齢者が占めるようになるため、社会の担い手が不足して日常生活がいろいろな形で麻痺してくることだろう。

この点を理解せずに対策を講じても、方向違いのものとなるだけだ。高齢者施設を考えれば理解できよう。「いま入所待機者が多い」からといって、せっせと特別養護老人ホームの増設を進めたならば、建築がすべて終わる頃には入居者が不足する事態となりかねない。