「エンジンオイルはこまめに換えろ!」は時代遅れって本当?プロの言葉は信じていいのか

「車の血液」とも表現される車のエンジンオイル

image
©Avantgarde/stock.adobe.com

脱炭素社会の実現という名目で世界的に電気自動車の普及が推進されていますが、それでも自動車の動力源の主流はいまなお内燃機関です。

電気自動車は電力、内燃機関を搭載する車はガソリンや軽油などの燃料を消費することで走る乗りもの。しかし、内燃機関の場合は燃料のほかにも、エンジンを冷やす冷却水やエンジン内部を循環するエンジンオイルなどさまざまな油脂類が必要です。

中でも、エンジンオイルはエンジン内部の潤滑や冷却、洗浄、密閉、防錆などさまざまな役割を持ち、エンジンが本来の性能を長期間発揮するために、その管理は重要なものとなります。その重要性は「人間でいえば血液」と例えられることがあるほど。

ただし、健康な人間の血液は体内を循環しながら古い血液から新しい血液に入れ替わるのに対し、エンジンオイルは交換されたときから次の交換があるまで劣化するいっぽうです。

潤滑・冷却・洗浄・密閉・防錆とさまざまな役割を持つエンジンオイルが劣化すると、エンジンは性能を発揮できなくなるほか、最悪の場合は車が自走不可となります。

ちょい乗りはエンジンオイルやバッテリーの寿命を縮める

「車の寿命」の概念は時代とともに変化した?エンジンオイル交換サボると寿命が“縮む”

©Gunter_Nezhoda/stock.adobe.com

「“車の寿命”は10万km」という認識が一般的だった時代もありますが、現代的な国産車であれば10万kmや20万kmを超えても問題なく使用できることがほとんど。修理に必要が部品の在庫がメーカー欠品になったとしても、3Dプリンター等で作成できるようデータがユーザー間で共有されていることも珍しくありませんので、「その車を使えなくなる=“車の寿命”」という概念は薄れつつあります。

かわりに、自然故障が発生したときの修理費用が、車体の価値を超えるようになったら「寿命」と捉える人が増え、修理費用の同額で同じ車が買えるかどうかが、“車の寿命”のひとつの目安となっているようです。

エンジンオイルを交換しなかったことによる故障ではエンジン内部に大きなダメージが発生している場合が多く、その修理は高額な重整備になることがほとんど。安い中古車が買えるような金額にはすぐ達してしまいます。

そのため、エンジンオイルを交換しないことは、「“車の寿命”は10万km」と言われていた時代ではもちろん、現代でも“車の寿命”を縮めることになります。

「5000キロで交換」「3ヶ月に1回交換」そんなにこまめに換えないとダメ?

エンジンオイルを交換しないことは“車の寿命”を縮める行為であるものの、エンジンオイルを交換すればするほど“車の寿命”が伸びるというものでもないことを覚えておく必要があります。

早めに交換するのは車にとってデメリットがあることではないものの、新しいオイル代や工賃、抜いたオイルの廃棄料などはタダではありません。

古い車であったり、過酷な使い方をしていたりなど、特別なケアが必要な場合は別ですが、一般的には払ったコストに対して得られるリターンはそこまで大きくなく、極端な言い方をすれば無駄です。

メーカーは、メーカー推奨のエンジンオイルを使ってそのエンジンの耐久試験を行っており、さらに十分なマージンをとったうえでエンジンオイル交換の推奨走行距離を定めて性能を保証しているため、メーカーが想定する範囲内で車を使用しているのなら取扱説明書に記載されている走行距離や期間で交換を行って問題ありません。

高性能車などでは「5000kmまたは6ヶ月ごと」等であることが多いですが、ここ数年以内に新車として登場した一般的な車であれば「10000kmまたは12ヶ月ごと」など、そう高くない頻度での交換が推奨されていることがほとんどです。

長く乗るためにはマメなメンテナンスは必須だが…

エンジンオイル交換のタイミングは車や使用頻度によってさまざま

©New Africa/stock.adobe.com

店舗スタッフや自動車ジャーナリストの中には、どんな車でも「3000kmから5000km」や「3ヶ月に1回」など高頻度での交換を促す場合があります。

前述のとおり、早い頻度で交換するのは車にとっては特にデメリットがないため、可能であるなら実施しても良いでしょう。しかし、発生する費用と得られるメリットで考えるとそこまで効果が見込めるものではありません。

もちろん、使用状況や車の年式などによっては早めに交換したほうが良い車もありますが、ごく一般的な車をごく一般的に使い、メーカー指定のエンジンオイルを使用しているのであれば、高頻度で交換する必要はないでしょう。「早めに交換したほうがいい」という言葉は嘘ではないのですが、「いい」の部分があまりにも薄いというケースがほとんどと考えられるため、断ってしまっても不安に思う必要はありません。

なお、「ごく一般的でない使い方」とは、オフロード走行やアップダウンのはげしい山道など、エンジンの回転数が高い状況での走行が多かったり、エンジン始動と停止の繰り返しを短い距離で頻繁に行うような使い方や牽引に使うなどエンジンへの負荷が高かったりする場合などを指します。「シビアコンディション」と呼ばれることが多く、これを指摘された場合は交換しておいたほうが安心です。