意外と知らない「透析患者」ってどんな患者さん? 災害時に特に気を付けないといけないことは?

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みなさんこんにちは!CEなかむーです!今回は日々人工透析を行っている透析患者さんについて深堀していこうと思います。

腎臓の機能と腎不全

「透析患者」と呼ばれる患者さんはなんらかの原因で慢性的な腎不全となり、人工腎臓で治療を受けている患者さんを指します。

そこで、透析患者さんについての説明をする前に、まずは腎臓はどんな機能を持つのかを解説したいと思います。

私たち健康な人は毎日食事を摂り、生命を維持するために体に必要な水分や栄養を補給しています。その副産物として便や尿(おしっこ)が体外へと排泄されています。

食物は胃や小腸といった消化器官を通り、大腸から肛門を通過した後、便として体外に排泄されます。尿は腎臓で生成され、膀胱にある程度溜めることができ、尿意とともに体外へ排泄される仕組みになっています。

実は腎臓には「尿を生成する」という排泄機能以外にも様々な機能があります。以下に腎臓の機能についてまとめてみました。

腎臓の主な機能

腎臓の機能として主に尿や水分を排泄したり、ナトリウムやカリウムなどの電解質を調整したりする「排泄調整機能」、血圧や造血、骨に関連するホルモンを分泌する「内分泌機能」の大きく分けて2つの機能があると言えます。腎臓の機能が何らかの身体の異常や病気によってうまく機能できない病態を「腎臓が機能不全状態である」とし、これを「腎不全」と呼んでいます。

腎不全の状態になると、正常な腎臓で行っていた機能がうまく機能せず、尿が出なくなったり、吐き気がでたり、あるいは貧血や体の電解質バランスが崩れるなどたくさんの症状が出現してきます。学校や職場の健康診断でおしっこの検査をすることがあると思いますが、この腎臓の機能を正しく評価し、異常を早く見つけるために行っています。

この腎不全状態の患者さんを人工の腎臓で代行治療し、正常に近い状態まで治療する方法が血液浄化療法(人工透析)ということになります。

「透析患者」と呼ばれる患者さんはなんらかの原因で慢性的な腎不全となり、人工腎臓で治療を受けている患者さんを指します。

ダメージを受けた腎臓は肝臓のように再生することができないため、一度人工透析治療を始めると、一生涯この人工透析治療を受けていく必要があります。

週3日ほど決められた時間に受診し、病院のベッドや専用の椅子の上で治療のために毎回大きな注射針を2本手に刺し、全身の尿毒素の除去をするには4~5時間の治療を受ける必要があるため、自身の生活や仕事、家庭との両立がとても大変な治療となります。そのため身体障害者1級の認定を受けています。

この大きな針を毎回患者様に刺すことも臨床工学技士の大事なお仕事となります。

透析患者さんの特徴

さて、腎不全状態で血液透析を導入した「透析患者さん」にはいったいどういう特徴があるのか以下に示します。

上記のようにいろいろな日常生活の制約や症状がありますが、「腎臓の機能が低下している」ということ以外は健常な方と変わりなく生活ができることが特徴であるともいえます。

原則的に週3回の治療ができていれば、仕事もできますし、旅行に出かけたりすることも可能なので、自身のライフワークにどのように血液透析治療を取り入れていくかが大切になります。

さらに若い女性の透析患者さんにおいては、きめ細やかな透析管理は必要になりますが、妊娠することも、出産することもできます。また、治療を受ける患者さんや透析管理をしている医療施設のサポート体制にもよりますが、在宅透析といって患者さん自身の自宅で透析治療を実施している方もいらっしゃいます。

子供の透析患者さんが少ないことにはいくつか理由があるのですが、多くは「成長」という子供の特性と学校活動の面からではないかと思います。

子供の腎不全患者さんについては自身のお腹の中にある「腹膜」という生体膜を利用して行う腹膜透析が一般的です。腹膜透析についてはまた深堀していこうと思います。

災害と透析患者さん

先日の能登半島地震においてたくさんの病院や透析施設で断水し、今現在もなお避難生活を余儀なくされておられる透析患者さんも多くいると思います。

実は透析治療は大量の水を精製して治療に用いているため、災害等で断水になると透析治療自体が全くできなくなってしまいます。患者さん1人につき1回の治療でだいたいお風呂の浴槽1杯分(120L)程度の水を利用するため、透析患者さんにとってはまさに「命の水」ということになります。

そういった場合には被災していない近隣の透析施設や隣県等の施設へ患者さんを移送し、透析治療を継続するために支援する場合もあります。一刻も早く断水が解消することを願うばかりです。

透析治療も一つの個性 -私の母の話

実は私の母も透析患者さんなのです。私が中学2年生のときに透析治療を導入し、今年で透析生活27年目をむかえます。

母はもともと看護師だったので、病院で働きながら透析治療を受けてきました。母が血液透析を導入し、腎不全状態から復活したあとも食事療法が必要だったこともあり、低たんぱくゼリーや減塩しょうゆなど私の食事にも取り入れられていて、いろいろ試された記憶があります。

透析治療に関しては母から学ぶことも多く、水分が欲しくなったら氷を舐めるといいとか、治療の時間は長い方が身体の負担が少なくなるから帰るときも楽だとか。母の「透析自己ルール」のようなものが我が家では「普通」となっていたようにも思います。

一般的には透析の患者さんは「果物は摂らないでください」と言われることが多いかもしれませんが、母はそれだけでは納得しません。「食べたいものを適度に摂る」というのが「ルール」であり、それが自身のアイデンティティであるかのように話します。

「透析患者はあれもだめ!これもダメと言われると何も食べるものがなくなってしまう!」というのが口癖です。もうすぐ70歳になる母は私よりも元気です。

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このように意外と「透析患者さん」は身近な存在であることも多く、社会復帰できる方が増えていることも透析治療の技術が進歩してきた賜物であるのではないかと思います。

また、母のように「自己ルール」をもっている患者さんも多く、時にはその「ルール」が医療者側にとってはとても高いハードルになることもあります。

透析患者さんは曲者が多いと揶揄されることも実は多いのではないかなと思います。しかし、それはその方の生き方であり、キャラクターであり、生きる上で大切にしていることなのかもしれないと考えると、私はとても愛すべき点になるのではないかなと考えることもあります。

まとめ

透析治療を受けている方は治療の性質上、様々な制約がありますが、多くの方は社会復帰して自身の生活に「透析治療」をうまく取り入れながら元気に透析生活を送っておられます。

あなたの周りにも透析治療を受けている方がいるかもしれませんね!

次回も臨床工学技士のお仕事について深堀していきましょう!

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【著者紹介】なかむー(中村 隆志・なかむら たかし)

熊本総合医療福祉学院(現:熊本総合医療リハビリテーション学院)出身
臨床工学技士のフリーランスCE-WORKS 代表
慢性期血液浄化療法からロボット手術まで幅広く臨床工学技士業務従事。
18年の臨床工学技士経験をもとに令和3年4月に国内でもあまり事例がない臨床に携わる
フリーランス臨床工学技士として業務に従事。
病院の「外」でも働ける臨床工学技士の仕事創りに取り組んでいます。
将来の夢は臨床工学技士人材だけで会社を創ること!