法改正で空き家の税金が6倍に! 住んでいない実家はどうすればいい?

image
急速に増え続ける空き家問題に対し2023年6月に公布された「空き家対策特措法」の改正法。空き家への増税として注目を集めてきましたが、この改正法がついに2023年12月13日に施行されました。

空き家への課税が6倍になる可能性があり、空き家所有者には大きな影響のある改正法なのですが、実はあまり認知度が高くありません。

「相続したものの誰も住んでいない実家がある」という方……まずは改正の内容を知り、所有する空き家の今後について考えるきっかけにしてみませんか?

「空き家対策特措法」の改正 認知度はわずか4割

株式会社いえらぶGROUPが2023年11月に行った「空き家に関する調査」によると、全不動産会社で「空き家対策特措法」の改正について知っている事業者はわずか4割であることが分かっています。
都内の不動産会社ではさらに減少し、わずか3割でした。


株式会社いえらぶGROUP「空き家に関する調査」(2023年12月リリース)

不動産会社の認知度が4割ということは、個人の認知度はさらに低くなるのではないでしょうか。
すでに施行されている法律なので、ぜひよく理解しておきましょう。

「空き家対策特措法」の改正 4つのポイントを知ろう

「空き家対策特措法」の改正について、空き家の所有者に関わるポイントに絞って解説していきましょう。

【改正ポイント①】「管理不全空き家」の新設

これまでの「空き家対策特措法」にあった「特定空き家」に加えて「管理不全空き家」が新設されました。

それぞれ該当する空き家の条件をまとめてみましょう。

【特定空き家】
・倒壊など著しく保安上危険となる恐れがある状態(建物の破損・門の倒壊など)
・著しく衛生上有害となる恐れがある状態(異臭・ゴミの放置など)
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態(木々の繁殖・落書きなど)
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態(不審者の侵入・落雪の危険など)

【管理不全空き家】
放置すれば特定空き家になる恐れのある空き家
(窓ガラスが割れている、建物の一部が破損している、雑草が生い茂っているなど)

「管理不全空き家」とは? ~空き家対策の強化と不動産投資への影響~

【改正ポイント②】「管理不全空き家」も固定資産税の軽減措置対象外へ

「管理不全空き家」として指定されると、行政から改善のための措置を指導されます。換気や通水、庭木の伐採、管理会社への委託など、適切に空き家を管理する努力をしなければなりません。

指導を受けても所有者が改善のための措置を行わない場合、行政は「勧告」を行います。「勧告」を受けると、固定資産税を6分の1に減額することができる住宅用地特例の対象外となります。つまり固定資産税が最大6倍になってしまうということです。(個々の土地の条件によって異なる)

これまでは「特定空き家」のみが固定資産税の軽減措置対象外となってきましたが、その手前の「管理不全空き家」でも税金が高くなる可能性が発生することになります。

固定資産税について詳しくはコチラ
固定資産税はいくらかかる?~お得なクレジットカード払い・スマホ決済時の注意点~
固定資産税減免とは?減免となる代表的な6つの事例

【改正ポイント③】「空家等活用促進区域」の指定

中心市街地や地域再生拠点などの区域の中で、空き家の活用が必要と認める地域を「空家等活用促進区域」として指定する制度が新設されました。
指定区域内に空き家を所有している場合、市区町村長から空き家活用の要請を受ける可能性があります。

また指定区域内においては、行政が建て替えに関する規制緩和措置を講じることが可能です。
前面道路の幅員制限・用途制限などが緩和され、建て替え・改築・用途変更がより容易になるでしょう。

【改正ポイント④】緊急代執行

「代執行」とは、行政からの指導や勧告に対して空き家の所有者が適切な措置を行わない場合に、行政が所有者に代わって強制的に措置を講じることです。

今回の改正では、倒壊の危険性が高い建物など緊急で除去が必要な空き家に対し、命令などの事前手続きを経ずとも代執行することができる「緊急代執行」の制度が創設されました。

代執行にかかる費用は、裁判所の確定判決なしで直ちに所有者から強制徴収されます。

住んでいない実家……6倍課税とならないためにやるべきこと

空き家所有のきっかけの多くが相続です。
「実家を相続したが誰も住んでいない」「自宅から遠く管理できいない」など、放置している空き家がある方向けに「管理不全空き家」「特定空き家」と指定されないために気を付けてほしいポイントを紹介します。

定期的に管理状況をチェックして補修・清掃する

空き家のままにしておく場合は「管理不全空き家」に指定されないようしっかり管理しましょう。

まずは
・屋根、外壁など建物の破損部分がないか
・雨漏りやシロアリ被害がないか
・不法投棄されていないか
などをチェックします。

そして、
・破損個所の修理
・雑草、樹木の手入れ
・換気
・清掃
などの対応をしましょう。

自分で管理できない状況であれば、空き家管理の専門業者に委託すれば適切に管理してもらえます。

賃貸に出す

空き家を賃貸に出して活用する方法もあります。

物件の状態や所有者の予算によって、
・そのまま賃貸に出す
・リフォームして賃貸に出す
・解体した後、新たにアパートを建てて賃貸に出す
・更地にして駐車場やコインパーキングとして運営する
などの方法があります。

自治体によっては空き家の利活用にかかるリフォーム費や解体費の助成制度があります。

詳しくは「空き家課税が続々始まる!? そろそろ始めたい『実家の終活』」の記事を参考にしてください。

売却する

管理し続けることが難しく、また賃貸物件としての活用もできない場合は、売却を検討しましょう。

・そのまま売却
・リフォームして売却
・更地にして売却
など、物件の状況によって選択肢は異なります。

売却できるかどうか、いくらで売却できるか気になる方は、ぜひLIFULL HOME’Sの「売却査定」を活用してみてください。
買い主と同意していれば無償譲渡も可能です。

また相続した空き家を所定の要件を満たしたうえで譲渡した場合、3,000万円の特別控除が受けられる制度もあります。チェックしてみましょう。
【参照】:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

不動産会社を通して処分する

個人の買主相手だけでなく、不動産会社を通して売却・処分することもできます。

・価値が付く物件なら、不動産会社に直接買い取ってもらう
・価値が付かない物件なら、不動産会社に有料で引き取ってもらう

その他、要件に合致すれば「相続土地国庫帰属制度」を利用して有料で国に土地を引き取ってもらう方法もあります。
【参照】:法務省「相続土地国庫帰属制度について」

空き家を活用した不動産投資にも影響が

「空き家対策特措法」の改正により、今後多くの空き家や更地が売りに出される可能性が高いです。条件の良い空き家や土地に出会う確率が上がることは、空き家投資を狙う人にとってプラスになるでしょう。

一方で、市場に多くの物件が出回ることで物件価格が下がったり、競合が増えたりする可能性もあります。
すでに空き家投資に取り組んでいる場合や、所有する空き家の売却を考えている場合には、今後の市況を注意して見ていくと良いでしょう。

空き家投資について詳しくはコチラ
高利回りは本当?空き家不動産投資のメリット・デメリット・リスク
【失敗回避】ボロ戸建てのリスクと失敗しないために重要な5つのポイント

空き家に関する情報収集にはぜひこちらのサービスを活用してください。
LIFULL HOME’S「空き家バンク」
LIFULL HOME’S「地方創生」

まとめ

空き家への課税強化と言われる「空き家対策特措法」の改正。
課税ばかりが注目されがちですが、空き家の適切な管理は、近隣住民に迷惑をかけたり歩行者に危害を加えたりしないようにするためにも非常に重要です。場合によっては所有者が損害賠償責任を負わなければならないケースもあります。
空き家を所有している方、ぜひこの機会に法律の内容をしっかりと理解し、今後の空き家の活用や処分について再確認しましょう