年金は夫婦2人分で月22万円です。夫にもしものことがあったら、ずっと専業主婦だった私1人分の年金額はいくらになるのでしょうか?

image

よく「モデル年金」というものを見聞きすることがあります。これは夫婦2人で年金を受け取る、という想定の額になりますが、夫婦がそれぞれ同額の年金をもらっている、ということなのでしょうか。
もし公的年金を受け取っていた夫婦のうち、例えば夫が亡くなった場合には、妻はどれくらいの年金を受け取れるのでしょうか。

公的年金制度は、国民年金と厚生年金からなる

日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金があります。国民年金と厚生年金には、老後の生活を保障する「老齢年金」だけではなく、障害状態になったときの「障害年金」、被保険者が亡くなったときの遺族に対する「遺族年金」もあります。
今回の本題である「老齢年金」における国民年金は、「20歳以上60歳未満の全ての国民が加入し、一定期間に保険料を納めるなどの受給資格を満たすと、65歳から老齢基礎年金を受け取れる」という制度です。
さらに、会社員などが加入しているのは厚生年金になります。「会社員は老齢厚生年金だけを受け取る」と思っている人もいるかもしれませんが、前述したように、20歳から60歳までは全ての国民が国民年金に加入することになっています。会社員などは給与から厚生年金として社会保険料が引かれていますが、このなかに国民年金も含まれていることになります。
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、受給額が決まる仕組みも異なります。老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間の保険料を全て納付した場合、令和5年度の満額で、65歳から年間79万5000円(68歳以降の人の場合は、79万2600円)を受け取ることができます。
また老齢厚生年金は、厚生年金に加入している期間の収入に応じて、受給額が変わります。さらに老齢厚生年金の受給額(報酬比例部分)の計算式は、平成15年3月以前と4月以降で変わります。


平成15年3月以前

平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月数
平成15年4月以降
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数

平成15年3月までは賞与を含まない給与月額で計算されていましたが、平成15年4月以降は、賞与を含んだ総額を加入期間の月数で割るようになったため、計算に使う数値が変わることになりました。

夫婦2人で月額22万円の年金を受給している場合の給付額の内訳は?

今回のケースでは、夫婦2人が月に22万円の年金を受け取っています。
夫婦ともに68歳以上で、満額の老齢基礎年金を受け取っているとすると、夫婦それぞれが年間で79万2600円を受け取っていることになります。基本的に、公的年金は偶数月に2ヶ月分が支給されるので、1人当たり月額で6万6050円、夫婦2人分では月額13万2100円です。
総額22万円との差額8万7900円は、夫が受け取っている老齢厚生年金の分であると考えられます(※特別支給の老齢厚生年金を受給していた場合、経過的加算が給付される可能性がありますが、今回は、経過的加算は考慮していません)。

image

夫が亡くなったときの妻の給付額は?

前項のように、会社勤めなど厚生年金に加入したことがない妻が、結婚後もずっと専業主婦だった場合、年金として受け取れるのは老齢基礎年金部分のみとなります。
さらに令和5年度に68歳以上であれば、受給額は満額で年間79万2600円となります。では、夫が先に亡くなった場合は、夫が受け取っていた年金を全く受け取れなくなるのでしょうか。
すでに妻が自分の老齢基礎年金を受け取っている場合、妻はそれを基礎年金として受け取りつづけますが、そのほかにも夫が受け取っていた年金の一部を「遺族厚生年金」として受け取ることができます。
遺族厚生年金の額は、夫が受け取っていた老齢厚生年金(報酬比例部分)の額の4分の3になります。今回のケースでは、夫が受け取っていた老齢厚生年金が8万7900円なので、妻はその4分の3に当たる6万5925円を受け取ることになります。
結果として妻の1ヶ月当たりの年金は、自身の老齢基礎年金6万6050円と遺族厚生年金の6万5925円を足した、13万1975円になります。
ちなみに、妻が60歳までに厚生年金に加入していて、老齢厚生年金を受け取っている場合は、妻の老齢基礎年金と老齢厚生年金の額の合計か、妻の老齢基礎年金と遺族厚生年金の額の合計か、どちらか多いほうの合計額を受給することができます。
例えば、遺族厚生年金が老齢厚生年金より高い場合には、妻自身の老齢厚生年金に加え、遺族厚生年金との差額も受け取ることが可能となります。

まとめ

夫婦のうち妻がすでに老齢年金を受給しているときに夫が亡くなった場合、夫の老齢基礎年金は全く支給されなくなりますが、夫の老齢厚生年金の一部は妻が受け取ることができます。
具体的には、夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3の額を、妻が「遺族厚生年金」として受け取ることができるようになります。
昭和61年3月までは、厚生年金に加入する人の配偶者には第3号被保険者の制度がなく、国民年金への加入が任意だった期間があるケースもあります。そのため、自身の老齢基礎年金額を満額受け取っていない人も見られます。
昨今、家計の足しにアルバイトやパートを行っている配偶者も多いと思います。ただし扶養の範囲で働いている場合は、老後に受け取る年金額も少ないことが考えられます。
今後は社会保険の加入要件が幅広くなり、配偶者の扶養を外れる人は増える可能性があります。人生100年時代のライフプランを考えて、扶養範囲以上の収入を得ながら、老後資金についても考えておきましょう。

出典

日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー