人気の「ハイブリッド車」は大きく分けて3種類! それぞれのメリットデメリットを解説

異なるものを組み合わせたり、掛け合わせたりすること、したものを意味する「ハイブリッド」。クルマに関しては、長い歴史を持つ内燃機関に、バッテリーやモーターといった電動化技術を掛け合わせ、互いの弱点を補ってより高性能に、低燃費で走れるクルマのことを「ハイブリッドカー」と呼んでいます。

私たちが普通に購入できる、量産型の乗用ハイブリッドカーは1997年10月に誕生したトヨタ「プリウス」からその歴史をスタートしました。それからすでに26年もの月日が流れ、今ではほとんどのカテゴリーにハイブリッドカーがラインアップされるほど、身近な存在です。

ハイブリッド車の嚆矢となったトヨタの初代「プリウス」。その後の自動車産業に大きな影響を及ぼしました

ハイブリッド車の嚆矢となったトヨタの初代「プリウス」。その後の自動車産業に大きな影響を及ぼしました

燃費がいい、環境にやさしいクルマというイメージを持つ人が多いと思いますが、そのほかにもたくさんのメリットがあり、もちろんデメリットもあります。乗る人の住環境やライフスタイルなどによって、相性のよし悪しが変わってきますので、ここでもう一度、それらを再確認しておきましょう。

ハイブリッド車は大きく分けて3種類

実は、ひと口にハイブリッドカーと言っても、大きく分けて3種類の方式があり、それぞれに得意分野が少し異なります。

【1】シリーズ方式 エンジンを発電専用に使う

1つめは「シリーズ方式」です。これは、エンジンを完全に“発電用”として搭載し、バッテリーに蓄電した電力のみを使って駆動するというもの。走行中は電気自動車と変わらず100%モーターで走行するのが特徴です。代表的なモデルは、日産「ノート」などに搭載されている「e-POWER」や、トヨタ「ライズ」の「e-SMART HYBRID」など。

メリットは、電気自動車のようなモーター走行の利点を持ちながら、充電する必要がなく、ガソリン給油で走れること。電気自動車の充電は最低でも30分程度はかかるところを、給油時間はガソリン車と同じなのでものの数分で済みます。時間が節約でき、長距離を走る際にも安心です。

また、ほかのハイブリッドシステムではアクセルを強く踏み込むなど大きな負荷がかかる場合には、モーター走行ではなくエンジンでの走行または両方による走行に切り替わりますが、シリーズ方式ではあくまでエンジンは発電だけを担い、駆動は行わないので、どんなときでもスムースなモーター走行ができるのもメリットでしょう。

デメリットは、ガソリンを燃やして発電するため、走行中にCO2を排出します。また、発電中にはエンジンの音が聞こえるため、静粛性はガソリン車よりは静かですが、電気自動車よりはうるさい、といったところも気になるかもしれません。

ミニバンでは珍しい、100%モーター走行ができるハイブリッドモデルが日産「セレナe-Power」。基本は3列シート8人乗りですが、2列目の中央席が前後にスライドでき、1列目に設置すればアームレスト兼収納ポケットとして、2列目に設置すれば3人がけシートとして使えるのが便利です。

日産「セレナ e-POWER」はミニバンには珍しく、モーター100%で駆動します

日産「セレナ e-POWER」はミニバンには珍しく、モーター100%で駆動します

発進時からモーター走行なので、なめらかでパワフルな加速フィールが持ち味。バッテリーが減ってくるとエンジンが始動して発電しますが、従来よりもそのノイズが抑えられており、静かな室内空間でドライブできるのも魅力です。バッテリーセーブモードやEVモードを賢く使えば、早朝深夜の住宅街で音を出さずに走ることができるなど、ガソリン車ではできない使い方もできるミニバンです。

駆動はモーターですが、発電はエンジンで行うため、通常のガソリン給油が必要

駆動はモーターですが、発電はエンジンで行うため、通常のガソリン給油が必要

【2】パラレル方式 主役はエンジンでモーターがサポート役

2つめは、「パラレル方式」です。これはエンジンが主役で、モーターはアシストに徹するというもの。発進時や強い加速時など、エンジンに大きな負荷がかかる場合にモーターが駆動することで、燃料の消費を抑えています。短い距離ならEV走行が可能なモデルもありますが、基本的にはエンジンで駆動し、EV走行はしないのがパラレル方式の特徴。システムが軽量でコストが抑えられ、エンジン特有の走りも維持できるため、スポーツカーやSUV、スペシャリティカーにも多く採用されています。

メリットは、ガソリン車から乗り換えても違和感がほとんどないため、ハイブリッドカーが初めての人でもなじみやすいことや、走行距離が長く、エンジンだけでは物足りない発進時や上り坂、追い越し加速といったシーンでモーターのアシストが得られ、走りの満足度が高まると同時に、燃費アップも期待できるところです。

デメリットを挙げるなら、モーター走行をしないため、使用シーンによっては思ったほど低燃費にならないことや、静粛性はガソリン車とほぼ変わらないところです。

代表的なモデルは、スバル「インプレッサe-BOXER」。「マイルドハイブリッド」とも呼ばれるパラレル方式ですが、スバルならではの2.0L水平対向エンジンにモーターを組み合わせ、燃費のためというよりは、走りの上質感や楽しさ、運転しやすさを向上させる制御技術が持ち味。

スバル「インプレッサ」の「e-BOXER」は走りの楽しさをモーターがアシスト

スバル「インプレッサ」の「e-BOXER」は走りの楽しさをモーターがアシスト

車両後部にバッテリーを配置し、重量バランスにも気を配った「インプレッサ

車両後部にバッテリーを配置し、重量バランスにも気を配った「インプレッサ e-BOXER」

得意の「シンメトリカルAWD」による走破性の高さもスバルの特徴なので、そこを犠牲にしないようなハイブリッドシステムとなっています。ハッチバックタイプの室内は後席にもゆとりがあり、小回り性能もよく市街地からロングドライブまで、バランスよく満足度の高いモデルです。

【3】シリーズ・パラレル式 エンジンとモーターを使い分け、EV走行も可能

3つめは、双方のいいとこ取りをしたような「シリーズ・パラレル方式」。「スプリット方式」とも呼ばれています。走行状態によってエンジンとモーターを最適に使い分け、モーターのみのEV走行も可能です。エンジンが苦手な発進や強い加速、ノロノロ渋滞時などはモーターが担当し、一定速での巡航などエンジンが得意なところを生かすため、効率がよいのが特徴。代表的なモデルはトヨタの「THS2」を搭載するハイブリッドモデルや、ホンダの2モーターハイブリッド「e:HEV」です。

メリットは、燃費のよさはもちろん、欲しいところでの十分な加速フィールや静かさ、高速道路での快適性などが手に入ること。モーター走行がひんぱんに行われ、静粛性もすぐれています。

デメリットは車両重量が重くなってしまうため、機敏なハンドリングやブレーキングにはどちらかというと不利なところ。搭載スペースの関係もあってガソリンタンク容量がどうしても小さくなるので、燃費がよいとはいえ連続した長距離走行では給油回数が増える場合もあるでしょう。

最新のトヨタ「プリウス」は、「ひと目惚れするデザイン」にこだわったというだけあって、流麗なルーフラインでクーペに近いスタイリングがまず魅力的。バッテリーの搭載位置をより低くしたことで低重心となり、スポーティーなハンドリングも実現しています。新たに2.0Lとなったエンジンの余裕も手伝って、走りは発進からなめらかでパワフル。加速と減速のコントロールがしやすく、モーターのみで走行する時間も増えているので、快適さと燃費のよさの、どちらも手に入るハイブリッドカーです。

5代目となる現行「プリウス」はデザインでも注目されています

5代目となる現行「プリウス」はデザインでも注目されています

トヨタが改良を重ねてきたハイブリッドシステム。高燃費と走りのよさの両立を目指してきました

トヨタが改良を重ねてきたハイブリッドシステム。高燃費と走りのよさの両立を目指してきました

ハイブリッド車のメリットとデメリット

では、これらを踏まえてユーザーが実感できるところで、ハイブリッドカー全般のメリットとデメリットを見ていきます。

まずメリットは、やはり低燃費性能。モーターによって、エンジン単体で走るよりも燃料消費が抑えられるため、低燃費で走れます。たとえばガソリンとハイブリッドの両方をラインアップしているトヨタ「RAV4」では、ガソリンモデルの燃費がWLTCモードで15.8km/Lなのに対して、ハイブリッドモデルでは21.4km/Lです(どちらもカタログ数値)。ガソリン車からハイブリッドカーに乗り換えたら、給油する回数が明らかに減ったというユーザーも多いようです。

次に、加速フィールのよさ。エンジン単体では、回転数が上がるにつれて少しずつトルクが強くなるところを、モーターは0km/hから最大トルクが出せるため、エンジンを力強くアシストできます。アクセル操作に対する俊敏なレスポンスも手に入ります。

また、静粛性の高さもメリットのひとつ。最近はガソリン車でも停車中はアイドリングストップによって静かになりますが、走行中でもエンジンが停止する時間が多いハイブリッドカーでは、その間も車内がとても静かです。走行モードが選べるモデルでは、早朝や深夜の住宅街など静かに走りたい場面で「EVモード」を選択すると、音を出さずに走れるのが便利です。

さらに、エンジン車に比べて車両重量が重いことや、バッテリーという重量物が車体下部に搭載されることで低重心になり、乗り心地がよくなったり、上質感がアップしたりするメリットもあります。

また、電気自動車に対してのメリットとはなりますが、やはり長い充電時間がかかるのに対してハイブリッドカーは給油で走れるためエネルギーチャージの時間が短いことも挙げられるでしょう。

一部のハイブリッドカーでは、コンセントが設置されていて家電がそのまま使えたり、非常時に外部給電として使えたりするモデルもあります。出先で電気ポットを使ってお湯を沸かしたり、PCの充電をしたりと、便利に使えるのが魅力です。

ではデメリットを。ガソリン車に比べると開発や生産時のコストがまだまだ高いため、車両販売価格が20〜30万円程度は高くなるということ。エコカー減税によって多少は優遇されているとはいえ、燃費による燃料代の差額だけで価格差を取り戻すのは、相当な距離を走る人でないと難しくなっています。

そして、ハイブリッドカーには高性能のバッテリーが搭載されており、使っているうちに少しずつ劣化します。メーカーやバッテリーの状態にもよりますが、点検や車検時のメンテナンス費用、交換費用はガソリン車よりも高いケースが多くあります。

また、重量が重いということは、タイヤにかかる負荷も大きくなりますので、走行距離や乗り方にもよりますが、タイヤの交換時期が早まる可能性もあることを頭に入れておきましょう。

改めてハイブリッドカーの種類や、メリット、デメリットを知ることで、自分にいちばん合うモデルが選びやすくなります。日々進化し、さまざまなタイプが登場するハイブリッドカーに、今一度注目してみてくださいね。

写真:トヨタ、SUBARU、価格.comマガジン編集部

まるも亜希子

まるも亜希子

2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。誰でも今日からできる交通安全応援プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」でイベント等も開催。