ペットボトルの水、想定より100倍多くプラスチック粒子を含む可能性

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Photo: Sergey Ryzhov (Shutterstock) via Gizmodo US

音もなく、体に積もる、ナノプラよ。

ペットボトル飲料水には、マイクロプラスチック含まれている”というのは、もはや周知の事実。マイクロプラスチックは細菌細胞ほどの大きさで、肉眼で見ることはできません。しかし、この問題はこれまで知られていたよりもはるかに深刻であることが判明。なんと、ペットボトル飲料水には、さらに細かいプラスチック粒子が数十万個も混入しているそうです。

最新技術でナノプラスチック粒子を検出

先日発表された研究論文では、最新技術を使ってボトル入り飲料水1リットルのサンプルを分析。その結果、長さわずか50~100ナノメートル(ウイルスの幅とほぼ同じ)のプラスチックの微粒子を、1リットルあたり25万個近く発見したのです。これは、過去に発表された推定値の約10〜100倍にあたる数値です。

論文著者の1人で、コロンビア大学化学教授のウェイ・ミン氏は「私たちはまったく新しい世界を切り開きました」と環境系ニュースサイトのGristに語っています。これまで、ナノプラスチックを迅速かつ効率的に特定する方法がなかったため、健康や環境への影響に関する研究がなかなか進まなかったのだそう。

今回の分析を手掛けたのは、コロンビア大学とラトガース大学の研究者チーム。まずは3つの異なるブランドのペットボトル飲料水を、超微細な膜を使ってろ過しました。次に、ナノプラスチック粒子の化学結合を認識する2つのレーザーを膜に照射することで、あらゆるプラスチック粒子を数えられるようになります。そして分析の結果、一般的な1リットルのボトルには 24万個のナノプラスチック粒子が含まれていると推定されました。

マイクロプラスチックを研究する、ペンシルバニア州立大学エリー校のシェリー・メイソン准教授は、今回使用された技術を「画期的」だと賞賛しました。「衝撃です。本当に素晴らしいです」と彼女はGristに驚きを伝えています。

プラスチックの成分がわかると、混入経路がわかる

さらに、研究者チームはナノプラスチックを種類ごとに分別することにも成功。驚いたことに、粒子のほとんどはボトルの成分であるポリエチレンテレフタレート(PET)ではなく、ポリアミド(ナイロンの一種)とポリスチレンの粒子だったことがわかりました。飲料水をボトルに充填・精製する過程で汚染物質が混入していたと考えられます。

3社のボトルのうち、2社ではポリアミドが最も多く、1社はPETがより多く検出されました。

人体に健康被害を与える恐れも

ナノプラスチックの怖いところは、小さすぎて消化管や肺まで通過して血管にまで入ってしまうこと。心臓や脳に留まる恐れや、妊娠中の女性の場合は胎盤を通過して胎児に届いてしまうケースも考えられます。ですから今回の発見は、我々人類の健康に大きな意味を持つことになりそうです。

ナノプラスチック粒子が人体にどのような影響を与えるかはまだハッキリわかっていませんが、毒物学者らは「粒子が化学物質を溶出させたり、環境中に浮遊している際に拾った病原体を放出したりする恐れがある」と懸念しています。一部の研究では、DNA や脳、さらには免疫系、生殖系、神経系にダメージを与える可能性も示唆されてというから、ちょっと心配です。

論文の共著者の1人で、コロンビア大学の環境化学者であるベイザン・ヤン氏は、

「私たちは曝露されていることは知っていますが、その毒性は分かっていません。

毒物学者や公衆衛生研究者とさらに協力し、リスクをより明確にする必要があります。今は、できる限り水道水を選んでいます」

と述べています。どうやら、プラスチック汚染に関しては水道水の方が、心配が少ないようですね。

脱プラスチックのきっかけになる可能性

ウェイ氏は今後の研究について、いくつか方向性の候補があると考えています。まず、レーザー顕微鏡技術を使用し、識別できるプラスチックポリマーの数を増やすこと。今回の論文ではまだ7種類にとどまっています。次に、プラスチックで包装された食品や洗濯機の排水など、他の場所でもナノプラスチックがないか探したり、より小さな粒子を検出する技術を開発したりすることも考えられます。

「50~100ナノメートルが現在の検出限界ですが、改良することは決して難しいことではありません」とウェイ氏は語りました。

メイソン氏は、この研究が政治家を動かすこともできると考えています。たとえば、昨年10月に議会に再提出された連邦法案プラスチック汚染からの脱却法」や国連の世界プラスチック条約で言及された「プラスチック削減」を実現するため、プラスチック生産を制限する権限を持つ議員らの背中を押す力があるかもしれません。

「私は、プラスチック化した世界を望んではいません。人類が新たな道を切り開く必要があるのだと、代表者たちに明確に伝える必要があるのです」。