ダイハツ、認証不正問題で新たに14件の不正発覚 キャストは法規不適合でリコールの可能性

キャストは側面衝突時のドアロック解除不良でリコールの可能性も

型式指定取り消しとなるグランマックスのトラック

ダイハツ工業は、認証不正問題における国土交通省の立ち入り検査を受け、「グランマックス」など3車種が型式指定取り消しとなると発表した。また、1月16日に同省から「是正命令」を受け、「キャスト」と「ピクシスジョイ」の2車種は、リコールが必要な場合は速やかに届出るよう指導を受けた。同省による立ち入り検査は12月21日~1月9日まで実施され、今回新たな不正14件発覚したことも公表した。

立ち入り検査では、46車種142件の不正を対象に実施。新たに発覚した不正は、試験車両のパネル部品を申請とは異なる取り付け方するといった不正が9件、規定と異なる試験装置を使用していた不正が5件確認された。これらの不正行為について、国交省が基準適合性の確認試験を実施し、結果は順次公表する。

キャストとピクシスジョイはリコール対象になる可能性がある。両車種は側面衝突時にドアロックが自動解除されず、法規に適合していない見込み。

型式取り消しとなるグランマックスと、トヨタ自動車「タウンエース」、マツダ「ボンゴ」(いずれもダイハツからのOEM)のトラック3車種は立ち入り検査と第三者委員会の報告を受け、国交省は「悪質な不正」と判断。「オフセット前面衝突試験」と「フルラップ前面衝突試験」において、本来ECU(電子制御ユニット)で作動させるエアバッグをタイマーで作動させるといった不正などを行っていた。

立ち入り検査を受け、ダイハツは1カ月以内に再発防止策を国交省に提出し、その後の実施状況について四半期ごとに報告する。

ダイハツは3車種「型式指定」取り消しで、今後どうなってしまうのか? 大手自動車会社の元エンジニアが考える

ダイハツ不正問題で3車種の認証取消について、大手自動車会社でエンジンの企画・設計・開発に長年携わってきた筆者が掘り下げていく。

国交省、156件の不正確認

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ダイハツ工業のロゴマーク(画像:時事)

 国土交通省は2024年1月16日、ダイハツ工業(大阪府池田市)の立入検査を実施し、新規14件を含む46車種(開発中・生産終了含む)で計156件の不正を確認し、

・不正行為が特に悪質な3車種の型式指定の取消し手続き開始
・ダイハツ工業に対する是正命令の発出
・基準に適合しないおそれのある2車種のリコール届出指導

を行うと発表した。

 型式指定の取り消しは一体何を意味するのか、これを正確に理解している人は多くないだろう。

 今回は、取り消しの影響、今後の展開、ダイハツとトヨタの対応について、大手自動車会社でエンジンの企画・設計・開発に長年携わってきた筆者(大庭徹、技術開発コンサルタント)が掘り下げていく。

型式指定を取り消された理由

自動車の型式認証制度について。型式認証の申請から新規検査までの流れ(画像:国土交通省)自動車の型式認証制度について。型式認証の申請から新規検査までの流れ(画像:国土交通省)

 まず、型式指定とは、自動車会社が新型車を生産・販売する際に、保安基準に適合していることを国土交通大臣が事前に審査し、指定を受ける制度である。この制度は、新規検査時に1台1台提示する必要がないため、大量生産される同一車種の乗用車に広く利用されている。

 わかりやすくいえば、「1式の申請書類が、同一モデル全車を代表する」制度で、指定されると型式指定番号が付与され、自動車検査証(車検証)に記載される。

 今回、国土交通省は、3車種の型式指定を取り消した理由について、

「不正加工により量産車とは異なる車で試験をするという、特に悪質な行為が行われたため」

としている。また、不正な加工について、第三者委員会は報告書のなかで

「本来は制御コンピュータ(ECU)の指示により作動するべきエアバッグ等を、ECUの準備が間に合わなかったため、認証試験ではタイマーにより作動させた」

とした。対象車種は、

・ダイハツ「グランマックス」
・トヨタ「タウンエース」
・マツダ「ボンゴ」

の3車で、いずれもダイハツのインドネシア工場で生産されている。2023年1~11月の国内販売台数は、

・グランマックス:約200台
・タウンエース:約5000台
・ボンゴ:約2000台

だった。

 当該3車種は日本国内では販売できなくなるが、ダイハツは2023年12月20日をもって全車種の生産・出荷を自主的に停止しており、市場に新たな混乱は生じない。

 第三者委員会の報告書によると、国内で生産されている複数の車両で同様の不正が確認されたが、いずれも生産が終了しているため、型式指定を取り消す対象にはならず、こちらも市場に新たな混乱をもたらすことはない。

型式指定再取得への課題

不正行為は、2015年と2022年の件数が多い。2015年についてトヨタ自動車(以下トヨタ)は記者会見で、「(トヨタへの)供給が増えたことが、現場の負担になっていたと認識できず、反省している」と述べた(画像:第三者委員会)不正行為は、2015年と2022年の件数が多い。2015年についてトヨタ自動車(以下トヨタ)は記者会見で、「(トヨタへの)供給が増えたことが、現場の負担になっていたと認識できず、反省している」と述べた(画像:第三者委員会)

 海外での生産・販売再開については、2023年の記者会見でダイハツが説明したとおり、各国の規制当局との交渉により決定する。

 インドネシアとマレーシアでは、ダイハツが第三者認証機関による安全性の再確認結果を両国当局に説明し、承認を得たことから、12月25日に両国工場で生産を再開したことを明らかにしている。

 今回型式指定を取り消された3車種はインドネシアで生産されているが、輸入車として型式指定を受けている日本ではまだ販売を再開できない。販売再開のために型式指定を再申請するには、まず国土交通省の是正命令に応じる必要がある。

 国土交通省はダイハツに対し、1か月以内に「抜本的な再発防止策」を策定し、四半期ごとに実施状況を報告するよう求めている。

 また、国土交通省は現在、道路運送車両法の基準への適合を確認するための試験を実施しており、その結果によって残りの43車種の生産・販売が再開されるか、型式指定が取り消されるかが決まる。