【墓じまい】みんなが気になる「お墓の引っ越し」どんな手続きが必要?平均費用はどのくらい?

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「墓じまい」をする人が増えています。

核家族化が進むいま。先祖代々のお墓の管理に悩むご家庭も多いでしょう。夫婦ともにきょうだいがいない場合など、お互いの実家の墓守をするケースも増えていくはず。

その夫婦の子どもがまた一人っ子だったら……。維持管理費用やお墓参りが負担となる可能性もありますね。
お墓を生前購入するにあたり、将来の「墓じまい」までを想定する人もいるこんにち。今回は、みんなが気になる墓じまいについて考えていきます。

1. 墓じまい・改葬とは?

一般的に「墓じまい」と呼ばれている行為は、墓石や墓所を撤去して処分すること。「廃墓」とも言います。そのあと別の供養に移す「改葬」までの一貫の流れをまとめて墓じまいと呼ぶことが多いですね。

墓じまいに伴う「改葬」の方法はさまざま。親族たちが通いやすい場所に墓を買い直す、永代供養ができる合同墓地や納骨堂などと契約するといったケースはよく聞きますね。自然葬(樹木葬や散骨)や手元供養などを選択する人もいるでしょう。

2. 墓じまいには自治体の「改葬許可証」が必要

改葬の手続きは「墓地、埋葬等に関する法律」で定められています。

第二章 埋葬、火葬及び改葬

3 この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。

第八条 市町村長が、第五条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。

e-GOV法令検索「昭和二十三年法律第四十八号墓地、埋葬等に関する法律」より引用

つまり、お墓の引っ越しには、自治体から改葬の許可をもらう手続き行う必要があるのです。

3. 墓じまいに伴う「改葬」に必要な手続きとは?

改葬を行う場合、古いお墓を管理する施設(寺院など)が発行する「埋葬証明書」と、改葬先の「受け入れ証明書」「改葬許可申請書」などを提出して自治体の許可を得る必要があります。

自治体により多少の差はありますが、一般的な流れは、おおむね以下のようになります。

  • 新しく墓地を購入するなど改葬先を決め、受け入れ証明書をもらう
  • 現在の墓の管理者(寺院・霊園など)に連絡し、埋葬証明書を発行してもらう
  • 現在の墓がある自治体に「改葬許可申請書」「埋葬証明書」などを提出→改葬許可証を発行してもらう
  • 遺骨の取り出し
  • 改葬先のお墓や納骨堂などに遺骨をおさめる
  • 自治体や、墓地を管理する寺院・霊園などにより手続きやルールの詳細が異なるケースもありますので、必ず確認しましょう。そして何より、家族親族としっかり話し合い、合意を得たうえで墓じまいをおこなうことが大切です。

    4. 【墓じまい】改葬件数は過去最高に

    4.1 改葬件数の推移【グラフ1参照】

    出所:衛生行政報告例(e-stat)をもとに筆者作成

  • 1998(平成10) 7万263件
  • 2003(平成15) 6万8579件
  • 2008(平成20) 7万2483件
  • 2013(平成25) 8万8397件
  • 2018(平成30) 11万5384件
  • 2019(令和元) 12万4346件
  • 2020(令和2) 11万7772件
  • 2021(令和3) 11万8975件
  • 2022(令和4) 15万1076件
  • 厚生労働省が2023年10月に公表した「令和4年度衛生行政報告例」によると、2022年度の全国の改葬件数は過去最高の15万1076件に。1998(平成10年)年からの推移を見ると、この四半世紀の間に約2倍に増えています。【グラフ1】。

    ちなみに改葬件数のトップ3を見ると、都道府県別では、東京都1749件、神奈川県1430件、大阪府7934件。政令指定都市別では神戸市3327件、名古屋市2600件、横浜市2376件。

    また、いわゆる「墓守」がおらず放置されたままのいわゆる「無縁墓」を国や自治体が撤去した件数は3414件でした。

    5. 墓じまいを考える人はどのくらいいるの?

    近年増える「墓じまい」について、みんなの意識調査ものぞいてみましょう。

    5.1 お墓購入予定の人の約半数が「墓じまいを前提」としている【グラフ2参照】

    出所:全石協「これからお墓を購入しようと考えている方の‟お墓の形態”と”お墓の使用期限”についてのアンケート調査」(PR TIMES)2022年9月19日

    全国石製品協同組合(全石協)が2022年9月19日に公表した調査結果では、お墓の購入予定者の48.9%が「七回忌まで」「三十三回忌まで」というようにお墓の使用期限をあらかじめ想定していると回答。ほぼ半数の人が「その先の墓じまい」まで考えてお墓を選んでいることが分かります。

    また、鎌倉新書が2023年3月に公表した「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023年)」によると、購入されたお墓の種類別で最も多かったのは「樹木葬(51.8%)」、次いで「納骨堂(20.2%)」でした。
    樹木葬の首位ランクイン、そして納骨堂が一般墓を上回るのは同調査史上初とのこと。承継者が要らないお墓を選ぶ人が増えている傾向がうかがえますね。

    6. 【墓じまい】お墓の引っ越しにかかる費用はどのくらい?

    SAND555UG/shutterstock.com

    今回は「墓じまい・改葬」に関する各種データを見ていきました。一般墓の中でも永代供養付を選ぶなど、跡継ぎが要らない供養の形を選ぶ人は今後も増えていくでしょう。

    ただし、既にある先祖代々のお墓をしまう場合などは特に、地域の習慣や親族家族の意見も大切にしながら慎重に考えていきたいですね。

    ちなみに鎌倉新書の「第2回改葬・墓じまいに関する実態調査(2020年)」によると、改葬・墓じまい費用は「50万円以内」が40.8%、「51万円以上」が31.6%という結果に。

    また、国民生活センターには「墓を引っ越しする」と連絡したところお寺から高額な“離壇料“を要求されたといった相談が寄せられることも。

    心穏やかにお墓の引っ越しができるケースばかりとは限らないという点も、知っておきたいところです。

    参考資料

    吉沢 良子

    執筆者

    吉沢 良子

    吉沢 良子

    株式会社ナビゲータープラットフォーム メディア編集本部

    LIMO編集部記者/校閲者/編集者

    早稲田大学第一文学部卒。団体職員として7年間勤務ののち、フリーランス校閲・校正者として15年以上の経験を持つ。人文・社会系一般書籍、中学・高校社会科教材、就職試験問題の制作関連業務がメイン。2020年よりLIMO編集部に所属、編集・執筆に携わる。介護離職寸前の状態を経験するも、配置転換や社内初の介護休暇の取得を経てライフワークバランスを模索しながらサバイブするビジネスケアラー。現在は、介護など「シニアを取り巻くくらしとお金」にまつわる記事、およびインターン生によって構成される「LIMO・U23編集部」の運営を担当。実体験と紙媒体での経験を生かし、若者からシニアまで幅広い読者の心に刺さるていねいな切り口で情報発信をしていく。趣味は文房具集めと映画鑑賞。「欲望の翼(90年・香港)」がバイブル。実は「観る将」。(2023年11月17日更新)