夜間頻尿の危険信号とは?夜間のトイレ回数1>2回は正常

夜間頻尿の正体【第2回】

夜間頻尿の正体

夜間のトイレ回数は、あなたの健康指標です。

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相談しずらい悩みに答えます!長年患者と向き合ってきた医師が、「夜間頻尿」のメカニズムを解説し、改善策を教える。※本記事は、都田慶一氏の書籍『夜間頻尿の正体』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】いつかは向き合うことになる❝夜間頻尿❞。医師が教える夜間回数を減らす改善策!

まえがき

夜間頻尿はこれらの関係性を加味して考え、抗利尿ホルモンとの関係性を考慮すれば、当初はまさに深淵の中での話のように私には思われました。その深淵とは代謝、発汗と尿量、生体機能の老化、深部体温、睡眠パターン、血漿(けっしょう)浸透圧、抗利尿ホルモンの関係を考察することです。

そこに夜間頻尿の正体が隠されており、その正体に従えば、代謝水準を上げて夜間頻尿を減らすことの重要性を理解できるし、老後の健康の道標 (みちしるべ) となるものが何かがわかると思います。

ここで得た知識をもとに、現実の生活に向けて発信したいことがあります。それは体力を持ち続けるためのルーチンワークなどの自己管理、1日の過ごし方、夜間頻尿の危険信号などについてです。

高齢化に向けていかに夜間頻尿と向き合うかが重要です。夜間頻尿には奥深い意味があり、各方面から見つけた周辺の知見のもとに、クリニックのフィールドワークで得たデータを使い、夜間頻尿の生活指導を考えることが私のライフワークだと思っています。

それが、高齢者の生活改善につながり、当の私の身をもって確かめられるのであれば幸いです。そのような想いで何とか世に残そうと本編を書き綴りました。

もちろん、この生活指導は引き出し豊富で、あらゆる方向から排尿現象を説明できるし日々の生活の変化にさえ補足説明できると考えます。

夜間頻尿の診察は私にとって興味深いものであり、ルーチンワークの一部です。それぞれの患者さんに対する、私の代謝を主眼とする生活指導の説明は当院に特徴的なものです。

最終章[七]では質問に答えるかたちでわかりやすく夜間頻尿について記述したつもりです。それにはちゃんとした根拠があることをこの本編の中で説明していきたいと思います。

また、将来、高齢者になる人も人体の代謝の仕組み、睡眠を理解し、排尿の意味を知れば、パフォーマンスも上がり、充実した人生にすることも可能だと思います。若さの特権に甘えず、己を理解して生活を積み上げて行って欲しいと期待しています。

健康や生活を脅かす夜間頻尿とどう向き合うか

1.夜間頻尿がもたらす日常生活への影響(疫学調査)

▼ 夜間頻尿の定義

夜間頻尿の定義は、「夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状」とされています。若い人は膀胱が柔軟であるし、成人でも筋肉量、活動量が豊富なため0回がほとんどだと思われます。

しかし、高齢者の日常生活では、膀胱の劣化もありますので、1回以内は正常で、2回未満であれば、自分自身が困らなければ異常とはいえません。2回以上が常態化しているとほとんどの人が嫌な思いになるでしょう。

よって、高齢者の夜間頻尿は1>2回が正常と思います。なお、日常の1回排尿量は200〜400㏄といわれ、1日尿量は1000〜2000㏄が目安です。

日本排尿機能学会の疫学調査

日本排尿機能学会の疫学調査(2002年11月から2003年3月、4480名、アンケート形式)では、下部尿路症状の疫学調査で下部尿路症状の日常生活で何が不都合かを調べた結果(右上図)、影響は心の健康、活力、身体的活動、家事・仕事、社会活動などの領域に及んでいました。

問題となった症状の不都合の度合いは、右下図によれば、夜間頻尿、昼間の頻尿、腹圧性尿失禁、尿意切迫感(注1、切迫性尿失禁、尿勢低下の順となり、一般的に蓄尿症状の方が排尿症状より影響が大きい傾向があります。

男性では夜間頻尿が最も困る症状で70%以上が不都合と感じ、女性では夜間頻尿と腹圧性尿失禁が同等という結果でした。このように、夜間頻尿は、高齢者の普段の生活にかなりの困惑、影響を与えます。

生存率にも影響し、骨折等も頻度が上昇するといわれますが、その影響力はそれ以上に及びます。生存率や骨折率の問題は氷山の一角にしか過ぎません。

下部尿路症状のQOLに対する影響

下部尿路症状の日常生活に対する影響

(旧版)男性下部尿路症状診療ガイドラインより


(注1. 尿意切迫感とは、水に触れたり、音を聞いたりなどしたら急に尿意をもよおし我慢できなくなる状態で、過活動膀胱症状の特徴です。過活動膀胱質問票(OABSS)の質問3に該当します。

※本記事は、2023年9月刊行の書籍『夜間頻尿の正体』(幻冬舎ルネッサンス)より一部を抜粋し、再編集したものです。