年金だけで生きていけますか?日本の高齢者の回答に〈平均月収35万円〉のサラリーマン、絶望「もう、やってられない!」

税金に社会保険料……サラリーマンの負担はどんどん大きくなり、給与の手取り額を知るたびに、思わずため息。だからこそ「老後は年金だけで自由気ままに生きていきたい!」と願うもの。そんな夢のような老後を送っている高齢者は、いまの日本にどれくらいいるのでしょうか?

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給与明細をみた「日本のサラリーマン」…手取り額に思わず驚愕

ペーパーレスの時代、まじまじと給与明細をみることが少なくなったかもしれませんが、いまだに紙でもらっているにせよ、スマホで見られるにせよ、いま一度、確認をしてみましょう。

日本のサラリーマン(正社員/平均年齢43.5歳)の平均給与は、月収で35.3万円、年収で579.8万円。ただこれは額面であり、手取りはもっと少ないという事実は誰もが知っているでしょう。

*厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

仮に月収35万円だとすると、所得税・住民税2.4万円、健康保険料が1.7万円、年金保険料が3.2万円。さらに失業保険料などが引かれて、実際の手取りは27.4万円ほど。手取り額は額面の78%ほどになります。

特に「結構高いなぁ」と感じるのは、年金保険料かもしれません。

現在、厚生年金保険料は、毎月の給与と賞与に保険料率をかけて算出します。現在の保険料は18.3%。給与に対しては「標準報酬月額」、賞与に対しては「標準賞与額」をかけます。そして加入者と会社で双方折半するのです。

月3.2万円、1年で38.4万円。仮に同じ金額を40年間天引きされたとしたら1,500万円を超えます。

――そんなに引かれるんだ!

思わず、驚きの声を挙げてしまうような金額。日本の年金制度は「積立方式」ではなく、いま現役世代が払っている保険料でいまの年金受給に給付される「賦課方式」。保険料の納付状況によって将来の年金額は変わりますが、納付した分がダイレクトに受給額に反映されるわけではないので、「将来のためだから仕方がない」と割り切れない難しさがあります。

「保険料、たかっ!」と不満をこぼしながらも、いまを生きる高齢者を支えている現役世代。大変な思いをしている分、できれば「老後は楽をしたい」と考えるのは当然のことかもしれません。

では現在、年金をもらっている高齢者に聞いてみましょう。

――年金だけで生きていけますか?

年金だけで生活できない高齢者、急増…悠々自適な老後は夢のまた夢

厚生労働省『令和4年 国民基礎調査』によると、所得のうち年金収入だけに頼って生活している世帯は、44.0%。「年金だけで生きていけてるわ」と回答する高齢者は半数を割っています。この数値を確認できるのは、同調査の2013年から。そこで「年金100%」の割合を経年でみていくと、「2013年57.8%→2022年44.0%」と、10年あまりの間に10ポイント近くも減少していることがわかります。ちなみに同調査は2020年は中止。また2021年に急減しているのは、コロナ禍の給付金など、年金以外に収入があったためと考えられます。

【総所得に占める年金の割合】

総所得の100%:44.0%

総所得の80~100%:16.5%

総所得の60~80%:13.9%

総所得の40~60%:13.5%

総所得の20~40%:8.5%

総所得の20%未満:3.6%。

出所:厚生労働省『令和4年 国民基礎調査』

【「収入は100%年金」の高齢者世帯の割合】

2022年:44.0%

2021年:24.9%

2019年:48.4%

2018年:51.1%

2017年:52.2%

2016年:54.2%

2015年:55.0%

2014年:56.7%

2013年:57.8%

昨今、「収入は年金100%」という高齢者が減少していますが、その分増えているのが、高齢の就業者。厚生労働省『労働力調査』によると、2013年、高齢就業者は596万人でしたが、2022年には912万人と、1.5倍になりました。その分、「収入は年金だけじゃない」という高齢者が増えたことになります。

株式会社リクルートの調査機関ジョブズリサーチセンターが行った『シニア層の就業実態・意識調査2023』(個人編)によると、「高齢者が仕事をしたい理由」として最も多く聞かれたのが「生活の維持のため」で41.9%。逆をいえば「生活を維持さえできれば、仕事なんてしない」という人が相当数いるといえるでしょう。

また前出の『国民生活基本調査』では、高齢者世帯の生活意識として、「生活が苦しい(「大変苦しい」と「やや苦しいの合計)」が48.3%。「ゆとりがある(「ややゆとりがある」と「大変ゆとりがある」の合計)」はわずか6.6%。「悠々自適な老後」を手に入れるのは、かなり高いハードルのようです。

私たちが思っている以上に厳しい状況下にある、日本の高齢者。今後、年金財政はますます厳しくなり、受給額は減少することが予想されています。また昨今のようなインフレは、年金世代を直撃。一気に生活苦に陥るようなこともあるでしょう。現役世代の老後は、いまよりも厳しいのは確実です。

――いまこんなに苦しい思いをしているのに、将来はもっと苦しくなるなんて……もう、やってられない!

思わず、投げやりな気持ちになるのも仕方がないことかもしれません。現役世代ができることとしたら、自助努力。老後の安泰のためには「年金だけで生きていく」という憧れはとっとと捨てて、コツコツと資産形成に励むしか方法はなさそうです。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

厚生労働省『国民生活基礎調査』

ジョブズリサーチセンター『シニア層の就業実態・意識調査2023』