え、ダメなの?痩せたい人が「サウナ」で飲んではいけない意外な飲み物

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たくさん汗をかいて気持ちも体もスッキリととのうサウナ。ダイエット効果を期待してサウナに足を運ぶ人も多いのではないでしょうか。日本サウナ学会代表理事で医師の加藤容崇さんの著書「医者が教える 究極にととのう サウナ大全 超絶リラックスとパフォーマンスアップに効く科学的な方法」(ダイヤモンド社)より、効果的なサウナの入り方を一部抜粋してお届けします。

やせるためには「サウナ1時間前〜サウナ中」に糖分NG

「汗を大量にかいて体重が一時的に減ること=ダイエット」だとするなら、「サウナでダイエット」はマユツバです。しかし、サウナはダイエットに全く効果がないかというと、実はそうではありません。サウナに入ることで分泌されるホルモンを足がかりに説明していきます。

サウナに入ると甲状腺ホルモンが分泌される

サウナに入ると色々なホルモンが分泌されます。その中のひとつが「代謝ホルモン(甲状腺ホルモン)」です。甲状腺ホルモンが分泌されるとどうなるのでしょうか。人間は、食事を摂れなくなったときのために、体内にエネルギーを貯蓄しています。でも、それはあくまでも飢餓状態に備えた保険です。

だからふだんは、食事で得たエネルギーを使い、貯蓄分には手をつけません。しかし、甲状腺ホルモンが分泌されると、代謝のスイッチが切り替わります。「食事で得た分」から「貯蓄分」に替わるのです。サウナという危機的環境に置かれることで、「こんなときに食事をしている余裕はない。今こそ、貯蓄エネルギーを使うときだ」と体が判断するからです。

サウナには「ファスティング」と同様の効果がある

ファスティングというのは断食のことで、最近は16時間という短時間の断食が人気のようです。なぜ16時間なのかというと、断食後16時間で代謝のスイッチが「食事で得た分」から「貯蓄分」に切り替わるから。サウナに入ったとき同様、「食事から全然エネルギーが入ってこない。飢餓状態だから貯蓄分を使おう」と体が判断するのです。ファスティングの際の甲状腺ホルモンの変化は非常に特徴的で、これと同様の変化がサウナに入ってわずか20〜30分後に現れます。つまり、本来は約1日かけてやっと得られるファスティング効果を、サウナなら20〜30分で叶えられるということです。

糖分を摂るとファスティング効果が台無しになる

サウナでファスティング効果を得るためには注意点があります。それは、サウナ前〜サウナ中に糖分を摂ると、甲状腺ホルモンが出なくなるということです。「エネルギーがちゃんと入ってきている」と脳が認識して、スイッチを切ってしまうからです。だから、サウナ前にご飯を食べるのはNG。また、サウナーが大好きな「オロポ(オロナミンC+ポカリスエット)」「アクエリアル(アクエリアス+リアルゴールド)」、スポーツドリンクなどにも糖分が入っているため、ファスティング効果を狙うなら控えたほうがいいでしょう。

スポーツドリンクの飲みすぎは心疾患の死亡リスクが8%増える

サウナーが大好きな飲み物といえば「オロポ(オロナミンC+ポカリスエット)」。サウナでは、エナジードリンクとスポーツリンクを組み合わせたサウナドリンクが人気です。しかし、スポーツドリンクは、飲みすぎると体に悪影響を及ぼすこともあります。飲んだほうがいい場面や、注意したほうがいいことなどをまとめます。

スポーツドリンクは糖分が多い

スポーツドリンクなどの成分表を見ても、「糖」という表示はありません。じゃぁ、糖質は入っていないのかというと、「炭水化物」という名前に置き換えられているのです。実は炭水化物の大部分は糖質にあたるので、「炭水化物≒糖質」。それを踏まえて成分表を見ると、ものによっては100mlあたり16gも含まれているものがあります。大さじ1杯強ですから、かなり多いことがわかります。ちなみに、海外のエナジードリンク、スポーツドリンクも大体同じくらいの糖分が入っています。

スポーツドリンクは健康によくないというエビデンス

「スポーツドリンクは健康に悪い」というエビデンスは実は色々あります。例えば、1日の摂取量が355ml増えるごとに、心血管疾患による死亡リスクが8%増えるというもの。せっかくサウナによって心疾患のリスクが減っているのに、サウナ後にスポーツドリンクを飲むことでリスクを上げてしまったら台無しです。また、1日355m1毎日飲む人は、心筋梗塞の発症リスクが男性で20%増加、女性は40%増えるというものもあります。そして、日常的に飲む人は、当然肥満のリスクも上がります。18%上がるということです(*89)。さらに、これは私の専門分野に当たるわけですが、実はがんも増えます。1日355mlを2回飲む場合。これは女性の研究なのですが、大腸がんのリスクが2倍になるという結果が報告されています。

スポーツドリンクを飲んだほうがいい場面

「なんだ、スポーツドリンクって体に悪いんだ。飲むのやめよう」と思ったかもしれませんが、もちろん飲んだほうがいい場面もあります。カナダの小児科学会が発表した報告によると、「60分以上継続して行う運動、あるいは非常に高温多湿下で電解質の喪失が激しい環境」でのみ飲むことが推奨されています(それ以外は水を推奨)。これってなんだか、サウナに近いですよね。サウナは軽い運動に匹敵しますし、高温で、多湿の場合もあります。

そもそも、サウナで失われる体液というのは、水と塩分(電解質)でできています。体液が失われると脱水症になり、めまいや立ちくらみ、頭痛などの症状が現れます。したがって、これらの症状が現れた場合、あるいはそこまでいかなくても、いつもより多く汗をかいたなと思ったときは、スポーツドリンクを飲み、すみやかに水分補給を行ったほうがいいと言えます。

著者メッセージ

スポーツドリンクは失われた水分を速やかに吸収して体内に戻す優れた機能があります。サウナ後のような、速やかな水分補充が必要なタイミングで適切な量を摂取するように心がけましょう。

書籍紹介

医者が教える 究極にととのう サウナ大全 超絶リラックスとパフォーマンスアップに効く科学的な方法」(ダイヤモンド社)

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いつでも、どこでも、誰でも「必ずととのう」最高の入り方をサウナー医師がエビデンスを元に提案!

サウナの入り方に戸惑う初心者から、サウナ慣れしてととのいにくくなってきた熟練者まで! 前著「医者が教えるサウナの教科書」でサウナの理論やその効果を分かりやすく紹介した著者が、「実践篇」として、さらなる研究の成果と最新のサウナ事情を踏まえ、日常のパフォーマンスをあげ、病気を予防し、健康と美をレベルアップする最高のサウナの入り方を提案します。これさえあれば、どんな状況でも必ずととのうことができます!

著者紹介

加藤 容崇

慶應義塾大学医学部特任助教・日本サウナ学会代表理事
群馬県富岡市出身。北海道大学医学部医学科を経て、同大学院(病理学分野専攻)で医学博士号取得(テーマは脳腫瘍)。北海道大学医学部特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院腫瘍センターにて膵臓癌研究に従事。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。専門はすい臓がんを中心にした癌全般と神経変性疾患の病理診断。病理学、生理学にも詳しく、人間が健康で幸せに生きるためには、健康習慣による「予防」が最高の手段だと言うことに気づき、サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。サウナを科学し発信していく団体「日本サウナ学会」を友人医師、サウナ仲間と作り、代表理事として活動中。初の著書「医者がが教えるサウナの教科書」(ダイヤモンド社刊)はロングセラーに。