厚生年金「月額15万円のはずなのに!」手取りにがっかりするシニア。その理由は?年金から天引きされる税金や保険料とは?大阪市のケースで試算

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将来受け取れる年金はどのくらいの金額かご存知でしょうか。
またその年金には、皆さんが日々働いて受け取っている給与のように引かれるものがあるということをご存知でしょうか。

公的年金からは、いろいろと天引きされるお金があります。額面上の年金額を見たときに「自分はこの金額分の年金を将来受け取れる」と期待していると、実際に受け取った際に、大きな落胆を招いてしまうかもしれません。

実際の受取額と年金の額面との差額が大きいと、その先の老後の計画にもずれが生じてきてしまうことも考えられます。
そうならないためにもまずは、日本の公的年金制度について今一度確認をしていきましょう。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

1. 日本の公的年金制度【厚生年金・国民年金】をおさらい

そもそも日本の年金制度は国民年金と厚生年金の2種類で構成され、いわゆる「2階建て」構造になっています。

年金制度の仕組み上、老後に受け取る年金額は「国民年金」か「厚生年金」のどちらを受給できるかで大きく変わります。そのため、自分がどちらに当てはまるのか確認しておきましょう。

「国民年金」の加入対象者は、日本に住む20歳以上60歳未満の方です。

40年間(480カ月)国民年金保険料を納めることで、将来、満額の国民年金を受け取れます。

ちなみに、2023年度の67歳以下新規裁定者の国民年金は満額79万5000円(年額)。ひと月あたり6万6250円です。

それに対して2階部分の「厚生年金」は会社員や公務員の方が加入対象となります。

厚生年金は、現役時代の年収によって将来受け取る年金額が変わるため、個人の受給額にはばらつきがあります。

では、いまのシニアの人たちはどれくらいの厚生年金を受け取っているのでしょうか。
最新データから、厚生年金の受給額事情に迫っていきましょう。

2. どのくらいのシニア世代が厚生年金を「月15万円」以上受け取れる?

まずは、厚生労働省が発表している「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、男女別の厚生年金の受給額別の受給者数を確認していきましょう。

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

2.1 厚生年金の平均年金月額:14万3965円
  • 【男性】平均月額 16万3380円
  • 【女性】平均月額 10万4686円

※国民年金部分を含む

男女別でみると、男性の厚生年金平均月額は16万3380円、女性は10万4686円。平均年金月額は、14万3965円でした。男女で約6万円の差があります。

受給額分布を1万円刻みで見ると、男性は月17万円~18万円がボリュームゾーン。女性は月9万円~10万円がボリュームゾーンになっているとわかります。

男女全体の厚生年金平均月額は14万3965円でした。

この結果から、平均値を超える15万円以上の年金(月額)をもらっているシニアは全体の半数以下とわかります。なかでも、女性だけでみると、15万円を超えて受給している人は約9%となりました。

厚生年金の金額は現職中の年収と保険料を収めた期間で決まるため、受給金額はグラフのように大きな個人差が生まれています。

厚生年金を受給できる方は、国民年金だけを受け取れる自営業やフリーランスよりも手厚い金額となる傾向にあります。その分だけ、自分の年金見込み額は早めに把握しておくことが将来の準備に役立ってくるでしょう。

3. 年金から天引きされる3つの支払いとは?

年金から天引きされるものは主に3つあります。

  • 税金
  • 介護保険料
  • 健康保険料

これらの金額は居住地や年金支給額によって異なります。今回は、大阪府大阪市に住む女性(76歳)の例をみてみましょう。

3.1 年金からの天引き1.税金(所得税と住民税)

厚生年金が月額15万円の場合、年間収入は180万円です。収入が年金のみの場合は、所得税として年約2850円、住民税として約1万6000円が天引きされます。また復興特別所得税も引かれます。

3.2 年金からの天引き2.介護保険料

年金年額が18万円以上の場合、介護保険は強制的に年金から天引きされます。大阪市を例に挙げると、年金収入が180万円の方の介護保険料は年額10万6841円となります。

3.3 年金からの天引き3.健康保険料

年金から天引きされる健康保険料は、「国民健康保険」か「後期高齢者医療制度」か、どちらに当てはまるかで変わります。

今回は76歳の女性のケースなので、後期高齢者医療制度の保険料が天引きされます。

大阪府後期高齢者医療広域連合の「保険料試算ページ」を用いて計算すると、保険料は年間約5万7300円です。

4. 厚生年金「額面15万円」の場合の手取り額は約13万円(大阪市の場合)

天引きされる税金や保険料を合計すると、年間で約19万円。180万円-19万円=161万円。額面は15万円だとしても、天引きされた後の手取り月額は約13万4000円となります。

※あくまでも大阪市の税率での概算です。また天引きされる金額は年度途中に決定するため、1年を通して同じ手取り金額になるとは限らないのでご注意ください。

試算したところ、15万円を下回る数値が出る結果となりました。額面通り15万円もらえると思っていたら、予想外な受給額に驚くかもしれません。

5. 将来の為にいまからできることを

ここまで、将来受け取れる年金の受け取り額やそこから天引きされる税金などについてみていきました。
年金から引かれるものが多いことに驚かれた方も多いことかと思います。

年金から天引きされるものがあることを知らずに老後の計画を立てているといざというときに困ってしまっているかもしれませんね。

老後の生活を将来の年金の受取額を把握したうえで、今からできることを少しずつでも始めていくことで安心できる老後を迎えられそうですね。

その為に、自分が今からできる準備はどのような方法があるのか知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

執筆者

大庭 新太朗

大庭 新太朗

ファイナンシャルアドバイザー

千葉工業大学卒業後、株式会社LOFTに入社、その後東京海上日動あんしん生命保険に入社し、4年間保険営業を経験。現在は個人向け資産運用のコンサルティング業務を行う。幅広い世代への資産運用のアドバイスにおいて、バランスを考えた提案が強み。一種外務員資格(証券外務員一種)を保有。

監修者

太田 彩子

太田 彩子

LIMO編集部記者/編集者/元公務員

京都府出身。京都教育大学卒業。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」のLIMO編集部で、公的年金制度や金融の情報を中心に執筆中。大学卒業後は教育関連企業での営業職を経て、2010年に地方自治体の公務員として入職。「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「福祉医療」等の業務に従事した。主に国民健康保険料の賦課、保険料徴収、高額療養費制度などの給付、国民年金や国民健康保険への資格切り替え、補助金申請等の業務を担う。特に退職に伴う年金や保険の切り替えでは、手続きがもれることで不利益を被ることがないよう丁寧な窓口対応を心がけた。その後、保険代理店にてマーケティング業務に従事。保険料比較サイトの立ち上げに参加した。乗合保険会社の商品ページだけでなく、保険の知識を普及するためのページ作成にも参加。小学校教諭一種免許、幼稚園教諭一種免許、特別支援学校一種免許取得
はたらく世代のお金の診断・相談サービスを行うマネイロでは、「【計算例付】厚生年金保険料はどのように決まる?ケース別算出方法や受給額を解説」など、お金や年金制度にまつわる記事を発信中。