夜痛くて寝られない…!なぜ「足がつる」のか。専門家が伝える原因と対策

image

夜中や朝起きるときに突然起こる足のつり。頻発し、安眠できない人も。

一旦涼しくなったと思ったら、再び日中は30度超え。日中と夜の寒暖差が激しい9月に「ある現象」が頻繁に起こり、睡眠の質が低下して困っている人が増えているという。それは熟睡中や、起き抜けに布団の中で「うーん」と伸びをした瞬間などに起こる「足のつり」(「こむら返り」とも呼ばれる)だ。

激痛で、どうしていいかわからないほどの痛みを伴う「足のつり」。その原因とメカニズム、足がつったときの対処法を「こむら返り先生」の異名を取る目黒外科・院長の齋藤陽医師が前後編で解説する。

「足のつり」は、筋肉センサーの誤作動⁉

運動中や高い場所から物を取ろうとつま先立ちしたときに突然、起こる足のつり。日中起きても激痛でパニックになるが、齋藤陽医師が院長を務めるクリニックを訪れる患者さんは、「夜中や明け方になると急に足がつって、激痛で飛び起きる」「朝伸びをしようとしたら足がつって悶絶した」と睡眠時に発生することが多いという。

「睡眠時に足がつる方は若い方よりも中年から高齢者、特に女性に多いですね。患者さんの中にはあまりに頻繁に足がつるのでで『夜、寝るのが怖い』という人もいます」(齋藤医師)


頻繁に足がつることで眠るのが怖くなるケースも……。

そもそも「足のつり」は病名ではない。医学用語では「有痛性筋けいれん」といい、文字通り痛みを伴う筋肉のけいれんのこと。

「足のつりは、筋肉や腱周辺にあるセンサーが誤作動を起こして、筋肉が勝手に収縮してしまう筋肉の暴走状態を言います。

人の筋肉には筋肉の中にある『筋紡錘(きんぼうすい)』と筋肉と腱の境目にある『腱紡錘(けんぼうすい)』という2つのセンサーが備わっています。筋紡錘は、筋肉が急に伸びたという情報を脊髄に送ります。すると脊髄は急激に伸びた筋肉が切れてしてしまうのを防ぐために、筋肉に対して『縮め!』と命令します。

一方、腱紡錘は筋肉やアキレス腱などの腱が急激に伸びすぎないようにするだけでなく、縮みすぎないようにするセンサーの役割を果たします。

通常、この2つのセンサーは、私たちが意識して筋肉に命令しなくても自動的に働きます。しかし、さまざまな理由から腱紡錘が正常に働かなくなってしまうことがあります。筋肉が急激に縮んでも脊髄に情報が伝わらないため、脊髄も『筋肉を伸ばせ!』という命令を出しません。そのため縮んだ筋肉は強く収縮しっぱなしとなり、激痛を伴うけいれん、つまり筋肉がつっぱった状態になるのです」(齋藤医師)


足のつりは、筋肉にある筋紡錘の誤作動によって起こる。出典/目黒外科

この筋紡錘、腱紡錘は自分の意思で動かせる筋肉である随意筋(骨格筋)に備わっている。足以外の部位、例えば無理な姿勢を取ってわき腹がつったりするのも、腱紡錘の暴走によるものでメカニズムは同じだという。

原因は様々。深刻な病気が隠れていることも

では筋肉の収縮を制御するセンサーの誤作動を引き起こす原因は? 

主な原因として、以下のようなものがあるという。

1.筋肉量の減少
2.筋肉疲労
3.血流が悪い
4.体の水分不足
5.冷え
6.電解質異常(主にナトリウム不足)

「足の筋肉量は20代をピークに、加齢によって徐々に減少していきます。これに運動不足が重なると、筋肉量はガクンと減少。心臓から最も遠くにある足には、ふくらはぎの筋肉で流れてきた血液を心臓に押し戻す機能(ポンプ作用)があります。筋肉量が減ってしまうとこのポンプ作用が弱まり、足の血流が悪くなってしまいます。特に女性は、ヒールの高い靴を履いて足の筋肉疲労が増すことや、家事などで立ち仕事が多いこと、冷え性の方が多いことなどから、足の血流が滞りがち。それにより筋肉内の疲労物質も蓄積しやすくなります。


ヒールが高い靴を履くことで、足の筋肉の緊張状態が続き、疲労が増してしまう。

さらに暑い時期は、大量の寝汗をかくことで水分不足となり、血流が悪くなります。また、大量に汗をかくと、筋肉と神経の情報伝達に重要な役割を果たすナトリウムなどの電解質が汗と一緒に体外に流れ出てしまい、これも足がつる原因に。

だったら、足がつるのは夏場だけ!? と思うかもしれませんが、今の時期にも、頻発する人が多いのです。日中は30度近くまで暑くなるものの、夜になると涼しくなります。深夜から明け方、気温が下がってきたところで、足が冷え、筋肉がこわばることで、筋肉の収縮を制御するセンサーの誤作動が起こりやすくなるのです」(齋藤医師)