10月に「年金振込通知書」が送付へ。10月から「年金の手取り額」が変わるのはなぜか年金から天引きされるもの4つとは

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厚生労働省では毎年10月に年金振込通知書の送付について発表しています。この年金振込通知書とはいつ、だれに送付されるものなのでしょうか。

今回は年金振込通知書とはなにか、また年金から天引きされるものとはなにか、なぜ天引きされるのかについて解説します。

年金を受け取っている人にも、将来年金を受け取る世代にも知っておくことで、年度の途中で年金振込通知書が送付されても慌てなくて済むのではないかと思います。

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1. 10月に送付される「年金振込通知書」とは?

年金振込通知書とはどのようなものなのでしょうか。いつ、だれに送られるのでしょう。

1.1 年金振込通知書とは

「年金振込通知書」は、年金の振込額をお知らせするものです。

年金振込通知書は、原則として年に1回毎年6月に金融機関等の口座振込で年金を受け取られている方に対して、6月から翌年4月(2カ月に1回)まで毎回支払われる金額をお知らせするものです。

振込額や振込口座に変更がなければ、その後の支払月には年金振込通知書は送付されません。

年金振込通知書の見本

出所:日本年金機構「年金振込通知書」

2. 年金から天引きされるものとは

年金は、支給額がそのまま振り込まれるのではありません。

原則として年金からは支払うべき金額が差し引かれているので手取り額は支給額よりも少なくなります。この年金から天引きされるものとはどのようなものなのでしょうか。

年金から以下のものを天引きすることを特別徴収といいます。

特別徴収されるものは4つあり、対象になる方は受給している年金の種類や年金額などの一定の条件があります。

年金から各種保険料(税)が特別徴収される方には、市区町村よりお知らせを行っています。

2.1 【介護保険料】

対象者は、65歳以上の方のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給している方であって、年間の受給額が18万円以上の方。

2.2 【国民健康保険料(税)】

65歳以上75歳未満の方(後期高齢者医療保険制度の該当者を除く)のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給している方であって、年間の受給額が18万円以上の方。

なお、国民健康保険料(税)と介護保険料の合計額が、各支払期に支払われる特別徴収対象年金額の2分の1を超える場合には特別徴収の対象とはなりません(2分の1の判定は、各市区町村が特別徴収の要否の審査を行う際に行います)。

2.3 【後期高齢者医療保険料】

75歳以上、もしくは65歳以上75歳未満で後期高齢者医療保険制度に該当する方のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給している方であって、年間の受給額が18万円以上の方が対象となります。

なお、後期高齢者医療保険料と介護保険料の合計額が、各支払期に支払われる特別徴収対象年金額の2分の1を超える場合には特別徴収の対象とはなりません2分の1の判定は、各市区町村が特別徴収の要否の審査を行う際に行います)。

2.4 【住民税】

65歳以上であり、老齢もしくは退職を支給事由とする年金を受給している方で、年間の受給額が18万円以上の方。

3. なぜ年金から天引きされるのか

年金から天引きされるものとは、年金受給者が年金受給やその他の収入を得ることによってかかる税金や保険料です。これらは支払わなければいけません。

年金から天引きされていなければ、年金受給者がそれぞれで金融機関等に支払いに行かなければならなくなり、わずらわしい手間がかかります。

自治体の担当者にとっても、納税のお知らせの発送や納税完了までの追跡、未納の方への納税推進の業務などいくつもの手間が発生してしまいます。

年金から支払うべきものを天引きすることで、納税すべき年金受給者と税を受け取る自治体の双方の手続きを減らすことができます。

4. 10月の手取り額が変わるのはなぜか?

10月から年金手取り額が変わるとはどのようなことなのでしょうか。これは年金から天引きされる金額が変わることが要因となります。

年金から特別徴収される介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税の各種保険料(税)の金額は、市区町村が決定しています。

自治体によって違いがありますが、上記の天引きされる項目のうち住民税や介護保険、健康保険などについては、10月に本決定されることが多いようです。

出所:厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」

たとえば後期高齢者医療の保険料の場合、7月に保険料が決定する自治体が多数を占めています。年度が変わった4月・6月・8月に天引きする金額は、この本決定に間に合わないため、仮に前年の2月と同額を天引きするのです。

この7月に本決定した特別徴収額が年金に反映するのは8月分の年金からとなります。年金の受取りは原則として2ケ月に一度、偶数月と決まっていて、前月前々月の2ケ月が払われます。

このため年金手取り額に反映するのは8月9月分の年金が支払われる10月支給分からとなります。
高齢者で働いていないという方でも、保有する不動産の売却や株の売買などで多額の利益を得たなど、一時的に所得が増える場合もあるでしょう。

1月から12月の1年間の所得に対して、所得税や住民税、その他の保険料が決定されていきますので、すこし時間をおいてから特別徴収額に反映していきます。

所得が減って天引き額が減り、手取り額が増えるという場合も想定できます。

実際の特別徴収額については年金振込通知書のほかに税金や保険料などの決定通知書で確認することができます。

5. まとめ

年金は、支給額が額面通りに受け取るのではなく、支給額から天引きされる税や保険料を差し引いた金額が振り込まれます。

年金受給額から天引きの対象となっている保険料などの金額決定は昨年の所得を反映するため、所得に大きな変化があった場合、年度の途中、10月のタイミングで天引きされる金額の変更が反映され、手取り額が変わることになります。

年金受給の額から天引きされる項目には何があるのか、また天引きの額が決定する時期が1年の途中になることなどを知っておくと、いざ10月に年金振込通知書が送付されてきても、どうしたのだろうと心配することがなくなると思います。

年金の手取り額は、前年の所得が変わることで支払うべき税や保険料の金額が変動します。

年金振込通知書が年の途中に届き、年金の手取り額が多少減ることになったとしても安心していられるように、老後資金を準備しておくことも大切です。

現役のうちから将来のためにすこしずつでも進めていきましょう。

参考資料