宮崎県都城市「家族4人に500万円」で話題も…自治体の移住支援がはらむ「2つの懸念材料」

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宮崎県都城市。
同市は、2022年度「ふるさと納税」寄付金額全国1位というなかなかのやり手(C)PIXTA拡大する

《若い世代が集まれば、税収アップや地価の下げ止まりにもつながる》
 夫婦+子供2人で最大500万円が支給される宮崎県都城市の「移住支援」について、こうした声が上がっている。都城市では、今年4月から4カ月間の移住者数が439人にのぼり、すでに過去最多だった22年度の435人を上回っている。
 人口減による将来的な地域コミュニティー喪失やインフラの機能不全を食い止めようと、各自治体が熱心に「移住支援」に取り組んでいるが、都城市は、自らを“日本トップレベル”と宣言している。
 とくに力を入れているのが子育て支援だ。第1子からの保育料や中学生までの医療費、妊産婦の健診費用を無料にして若年世帯の流入を促し、10年後に現在の人口維持とさらなる増加を目指している。
 だが、人口というパイの奪い合いから、自治体間でふるさと納税のようなバラマキ競争が起こりかねないとの懸念もあり、さらに、その効果にも疑問の声がある。
「給付金や子育て支援のほか、住居の斡旋、最大のネックとなる就職支援に熱心なところはたくさんあります。しかし、地方経済が疲弊する中、それなりの収入が得られて若者の雇用の受け皿になり得るのは医療介護、遠隔勤務が可能なIT系を除いてそれほど多くありません。公務員の正職員枠に簡単に入れるなら話は別ですが、農業に従事しても数年で食べていけるようになるのは難しい。自助努力でお金を生み出す自信のある方、親兄弟が暮らすなど地縁のある方、自然豊かな環境で子育てしたい方、完全リモートワークの方には適しているのでは」(地方再生に詳しい不動産アナリストの長谷川高氏=以下同)

 ポイントは移住先に根を張り続け、自ら地元経済を回せる存在になれるかどうかだという。
「私が仕事でよく訪れる、人口8万人程度の九州のある自治体は、自然減と若者の転出で毎年1000人強が減っていく中、総務省が主導する“地域おこし協力隊”の若者が農林水産業に従事するケースがみられます。しかし、経済的に自立できず“地域おこし協力隊”の任期終了後に土地を離れる方もいます。5年以上の居住ルールなど定められている移住支援の場合も、仕事や地域に馴染んで住み続ける人がどれくらいいるのか、そこが肝心要です」
 地方だから生活費すべてが安いわけではない。
「安い賃料で暮らすことができても、車の維持費や水道光熱費などが都市部と変わらない中で、5年で500万円という金額は決して少なくありませんが、雇用の受け皿となる企業の誘致や、移住者への行政の継続的なフォローが必要だと思います」
 若い人に長く住み続けてもらうのは、そう簡単なことではないのだ。