都城市、移住支援に本腰 ふるさと納税財源に人口増めざす

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移住の相談を受ける都城市のサポートセンター=2023年9月8日午前11時19分、市提供

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Uターンし定食店を承継した本部麻梨愛さん=2023年9月7日午後4時50分、宮崎県都城市平江町、中島健撮影

ふるさと納税で昨年度、全国最多の寄付を集めた宮崎県都城市は今年度、寄付を財源に移住支援を強化している。今年4月から7月までに、市の窓口に相談して移住した人は439人。単純比較はできないものの、過去最多だった前年度の435人をすでに上回っている。

 都城市平江町の定食店「ふくの家」。店内で準備作業をしていたのは、7月末に地元にUターン移住して間もない本部(ほんべ)麻梨愛さん(29)だ。体調を崩した前オーナーから、約30年続いた店を承継した。決め手は、家族で過ごしたなじみの店や味をなくしたくないという思いだった。

 「周りはチェーン店ばかり。地元の食材を使う、ゆっくり過ごせる店が一つでもなくなって欲しくない」

 隣町の看護専門学校を卒業後、大阪市や都内で看護師など医療関係の仕事に就いてきた。県外に出ても、帰るたびに店を訪れていたが、今年5月、引き継ぐかどうか正式に打診された。

 すぐには決心できなかったが、相談に向かった市や商工団体の窓口には、事細かに質問に答えてくれる担当者がいた。「こんなに人が家族的なところは、大阪にも東京にもない」

 病院で調理などの経験があった母久美子さん(54)が看板メニューのバーグカツや手作りソースを習い、本部さんは小鉢の準備や情報発信を担当。2人で店を切り盛りする。

 「ソースが濃いめかな」「おいしかった」など客の生の声が聞けるのがうれしい。まだ引っ越しの荷物は開けないほど忙しいが、「毎日が充実しています」。

 人口16万人足らずの都城市は、移住や出生数を増やすことで10年後の人口増加をめざす目標を掲げ、今年度、移住を後押しする移住応援給付金を拡充した。

 国や県の同様の制度では、東京23区や四大都市圏などから移住してくる場合、単身60万円(県は30万円)、世帯100万円が支給され、18歳未満の子どもを帯同すると1人につき100万円が加算される。

 市は、近隣の三股町や鹿児島県曽於市志布志市から転入する場合を除けば対象となるよう要件を緩和し、国・県の制度に該当すれば上乗せし、それ以外は独自に支給する額を単身100万円、世帯200万円に引き上げた。中山間地域に住む場合の加算もある。

 財源には、ふるさと納税の寄付を充てる。

 市が昨年度受けたふるさと納税の寄付額は195億9300万円。約10年前の2014年度の自主財源比率は34・3%だったが、寄付の増加で今年度には46・7%に高まっている。

 当初予算で事業費約3億7千万円を計上していた給付金は、支給対象者が想定を大きく上回ったため、市は約7億9500万円の原資を追加する補正予算案を市議会に提案した。

 市は今年度、ふるさと納税を活用して、中学生までの子ども医療費無料化や、第1子からの保育料の無料化を始め、子育て環境の整備も進めており、9月補正予算案には、病児保育の利用料を実質無料化する事業費も盛り込んだ。

 本部さんは移住を決めるまで、市の給付金や子育て支援について詳しく知らなかったが、「東京に住んでいて子育てしづらいことは肌で感じていた。サポートがあると家族を持ちやすいと思うし、ありがたいと感じる」と話す。

 池田宜永市長は、8月の定例記者会見で、「人口減対策に大きくかじを切って打ち出していることがインパクトをもって受け止められている」と手応えを語り、「人が増えることは市として大事なこと。社会増を続け、出生数とのバランスをとっていくことで、10年後に人口増に転じたい」と期待を寄せる。(中島健)