「月12万円」で生活する高齢者…日本で老いる「恐しいリスク」

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(※写真はイメージです/PIXTA)

下流老人、老後破産…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後の必要なお金、貯められていますか? 本記事では、『家計調査年報』(令和3年)より高齢者のリアルを追っていきましょう。

人生100年時代「老後はいくら足りないのか?」

老後不安が高まる昨今。「いつまでに何円を貯めなければならないのか?」、具体的なイメージはなかなかできないものです。

“リタイア後に必要なお金の基本は、年金額から生活費を差し引いた差額で考えます。しかし、そこで出てくるのが、「何歳まで生きるか分からない。結局、何年分のお金を用意すればいいの?」という不安です。

「人生100年」とも言われている現代、100歳まで生きることを想定して考えれば、ひとまずは安心です。つまり、65歳から年金生活を送るとして、100歳までは35年間ありますから、(年金の月額マイナス1カ月当たりの生活費)×12カ月×35年で計算してみるのです。非常に大まかではありますが、この金額が分かるだけでもずいぶん違ってきます。”金融広報中央委員会『そこが知りたい!くらしの金融知識』

実際のところ、現在の高齢者はどのような資金繰りで暮らしているのか? 総務省統計局『家計調査年報』(令和3年)より高齢単身無職世帯のお金事情を見てみると、実収入は「13万5,345円」、可処分所得は「12万3,074円」となっています。そのうち社会保障給付を占める割合は89.0%です。

支出について見てみると、消費支出が「13万2,476円」、税金や社会保険料などの非消費支出が「1万2,271円」。あわせて支出額「14万4,747円」となっており、「9,402円」も不足していることが明らかになっています。

【高齢単身無職世帯の家計収支】

実収入 13万5,345円

 社会保障給付 12万470円

 その他(仕送り等) 1万4,875円

消費支出 13万2,476円

 食料 3万6,322円

 光熱・水道 1万2,610円

 交通・通信 1万2,213円

 ほか

非消費支出 1万2,271円

ざっくりとした老後の赤字額を考えるため、先ほどの『(年金の月額マイナス1カ月当たりの生活費)×12カ月×35年』より、上記の収支を用いて計算してみれば、

(12万470円※ ― 14万4,747円)×12カ月×35年= △10,196,340円

※便宜上、社会保障給付額を年金に相当するものと考えています。

と、赤字分を補うためだけでも1,000万円以上の余剰資金が必要であることが見て取れます。ゆとりのある生活を送りたい場合、さらにお金を貯める必要があるわけですから、確かに「この金額が分かるだけでもずいぶん違って」きたな…と感じるところです。

60歳代の金融資産保有額平均「1,305万円」

高齢者の貯蓄状況、金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査』[単身世帯調査]によると、60歳代の金融資産保有額平均は「1,305万円」。ちなみに中央値は「300万円」です。この金額では、依然として赤字暮らしが続いてしまうことがわかります。

もちろん、上記の計算は概算値。新卒から定年までしっかりと勤め上げた人であれば、厚生年金と国民年金をあわせて20万円程度は受け取ることができますから、日銭に困る、ということは少ないでしょう。加えて人生100年時代、「65歳のときの支出」と「85歳のときの支出」では、金額も内訳も大きく変わります。

コロナ禍、先の見えない日々が続きますが、老後資金は早くから準備するに越したことはありません。たとえば日本年金機構の運営する「ねんきんネット」では、将来受け取れる年金額を試算することができます。「いくら足りないのか?」を把握するためにも、まずは自分が「いくらもらえるのか?」、調べてみるのも一手です。