「レーザー」って何の略?実はやたらと長い正式名称

『レーザー』は日常生活でもよく使われる言葉です。しかし、この言葉は略称であり、正式名称が存在します。元となっている言葉や意味を確認しましょう。レーザーと普通の光との違いや、歴史についても解説します。

「レーザー」とは何の略?

『レーザー』は医療分野や加工技術など、さまざまな分野で活用されている技術です。一般的に使われている言葉ですが、本来は正式名称があります。レーザーの正式名称や意味、種類について確認しましょう。

「LASER(レーザー)」の正式名称

レーザーは英語で『LASER』と表記します。英語圏でも『laser beam(レーザー・ビーム)』『laser disc(レーザー・ディスク)』のように使われており、略称が一般的です。

LASERの元となっている言葉は『Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation』で、ライト・アンプリフィケーション・バイ・スティミュレイテッド・エミッション・オブ・ラジエーションと読みます。

正式名称が長いため、通常の会話で使う場合は頭文字のアルファベットをつなげて『LASER』と略されているのです。

レーザーの意味

レーザーの正式名称である『Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation』を日本語に直訳すると、『放射線の誘導放出による光の増幅』です。

誘導放出とは、高いエネルギーを持った電子に対して同じエネルギーを持つ光を当てたとき、刺激によって光が放出される現象を指します。誘導放出によって放出された光が、レーザーです。自然の光とレーザーは種類が異なります。

通常、光は周囲を全体的に照らしますが、レーザーの光は真っ直ぐに伸びるのが特徴です。一定の強度や波長を人工的に作り出し、維持しています。また、レーザー光を生み出すための人工的な装置も、『レーザー』と呼ばれています。

レーザーの種類

レーザーには、いくつかの種類があります。主に、光を放出させる媒介となる物質によって分類されるのが、一般的です。

媒介となる『レーザー媒質』として、固体・液体・気体・半導体が挙げられます。固体レーザーには媒質としてガラスやセラミックが使われ、液体レーザーでは色素粉末を溶かした溶剤が使われるのが一般的です。

気体レーザーには、主にガスが媒質として使用されます。半導体レーザーは、名称の通り半導体が使われているレーザーです。

種類によって、主な使い道は異なります。例えば固体レーザーは金属加工にも使われており、主な種類は『YAGレーザー』です。

レーザー光と普通の光の違いとは?

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(出典) pixta.jp

レーザー装置から出る光と普通の光は、性質が異なります。レーザー光の性質や、活用されている場所を見ていきましょう。

レーザー光の性質

レーザー光には、自然光とは異なる性質がいくつかあります。主な特性は単色性・指向性・コヒーレンスなどです。

単色性とは、光の波長や色が単一であることを指します。指向性は光が一つの方向に進み、真っ直ぐ伸びていく性質です。コヒーレンスは、光の波長がお互いに干渉しやすい状態を指します。日本語にすると、『可干渉性』です。

そのほかにも、レーザーから出た光は収束性に優れ、焦点に光源が集まりやすいという性質があります。

レーザー技術が使われている場所

レーザー技術は、さまざまな場所で使われています。医療分野ではレーザーメスや皮膚治療などに使用され、加工分野での使用目的は主に金属加工や溶接です。

通信分野では衛星通信や航空機などにレーザーが使用され、高速通信を可能にしています。建築分野でもレーザーが使われており、正確な測定が可能です。

ブルーレイやDVD、店舗のバーコードリーダーにもレーザー技術が使われています。身近な場所で活用され、技術の進化に貢献しているといえるでしょう。

レーザーの歴史

レーザー加工

(出典) pixta.jp

レーザーは、いつから使われ始めた技術なのでしょうか?レーザーの開発時期や、原点となる考え方について解説します。

基礎はアインシュタイン

物理学者アルベルト・アインシュタインには、光に関する研究論文があります。1905年の『光量子仮説と光電効果』の論文や、1911年の『光の伝播における重力の影響について』の論文は有名です。

1917年には誘導放出の公式を導き出し、後のレーザー技術につながっています。『光電効果の法則に関する発見』や理論が評価され、アインシュタインがノーベル物理学賞を受賞したのもよく知られる事実です。

アインシュタインが誘導放出の可能性を示唆した論文発表から、実際にレーザーが発明されるまでには30年以上の年月が経過しています。

レーザーの発明・開発

1954年に、レーザーの元になるメーザーが発明・開発され、注目を集めました。メーザーは『Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation』の略称で、マイクロ波を活用した技術です。

誘導放出の理論によってマイクロ波を増幅させている点は、レーザーの原理と変わりません。この技術をベースに、実用性の高いガスレーザーの開発が進められていましたが、1960年に初めて開発されたレーザーは、セオドア・メイマンの開発した固体レーザーの一種であるルビーレーザーです。

ルビーレーザーは現代では美容治療に使用され、シミやホクロ消しの施術に欠かせない技術となっています。

構成/編集部