家や土地を親から子に名義変更するにはいくら?費用や手続きを解説!

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不動産は何らかの事情によって、親から子への名義変更が必要となるときがあります。 親子間の名義変更の最も典型的なケースは相続ですが、場合によっては生前に行うこともあります。

家を親から子に名義変更するにはどのような手続きが必要となり、費用はいくらくらいかかるのでしょうか。
この記事では「親から子への家の名義変更」について解説します。

1. 生前の親が生きてるうちに名義変更する方法

親子間の名義変更では、親が生きているうちにマンションや戸建ての名義を変更したいケースもあります。
名義変更とは、別の表現をすると所有権を移すということです。
生前中に所有権を親から子へ移転させるには、生前贈与または親子間売買の2つのパターンが考えられます。

贈与税を払って生前贈与を受ける

最初に、家の所有権を親から子へ移転させる方法として、生前贈与について解説します。

贈与税

親子間で名義変更をする方法としては、贈与があります。贈与とは、個人同士で財産を無償で与える契約のことです。

贈与は、財産を渡す人を「贈与者」、財産をもらう人を「受贈者」といいます。
贈与を行うと、受贈者に贈与税が発生します。
親から子に贈与を行った場合、子に贈与税が発生するということです。

贈与税は以下の式で計算されます。

  • 贈与税=(贈与財産の合計額※1-110万円※2)×税率-控除額

※1:贈与財産の合計額:1月1日~12月31日の1年間に贈与を受けた財産の合計価格 ※2:基礎控除額

18歳以上の子が直系尊属(祖父母や父母など)から贈与を受けた場合の贈与税の税率と控除額は、下表の通りです。

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例えば、500万円の贈与を受けた場合には、贈与税は以下のように計算されます。

贈与税
 = (贈与財産の合計額-110万円)×税率-控除額
 = (500万円-110万円)×税率-控除額
 = 390万円×15%-10万円
 = 48.5万円

家の贈与財産の価格は、土地は相続税路線価を用いて求めた価格、建物は固定資産税評価額です。

名義変更の必要書類

贈与で名義変更する場合には、以下の書類が必要となります。

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名義変更にかかる費用

家や土地の名義変更を行うには、登録免許税が必要です。
贈与を原因とした登録免許税は、固定資産税評価額に0.4%を乗じて求めます。

  • 登録免許税=固定資産税評価額×0.4%

また、贈与による所有権移転登記を司法書士に依頼した場合には、手数料は3~8万円が相場です。

ローンの名義変更を伴うなら親子間売買をする

次に、家の所有権を親から子へ移転させる方法として、親子間売買について解説します。

親子間売買とは

親がまだ住宅ローンを支払っている場合には、親子間売買を選択することになります。
住宅ローンだけの名義変更というのは基本的にはできませんので、親のローンは子が支払う売買代金によって一括返済をすることが必要です。

子が全額自己資金で親の家を購入できる場合には、売買価格が適正であれば特に問題ありません。
一方で、子も購入にあたり住宅ローンを組む必要があるケースでは、一定のハードルが存在します。

親子間売買では、子が借りたお金を不正に利用する懸念があることから、子に対して融資をする銀行が少ないのが実情です。
親子間売買に融資をする金融機関は一部の銀行に限られており、まずは融資可能な銀行を見つける必要があります。

また、親子間売買で融資を受けるには、「親と子が同居していること」または「子が既に親の家に無償で住んでいること」等の条件が課せられることも多いです。

なお、親子間売買では有償でも著しく低い価格で取引をすると、贈与とみなされる場合があります。
贈与とみなされれば買主(子)に贈与税が発生するため、親子の間であっても適正な価格で取引することが必要です。

また、親子間売買では、売主である親は3,000万円特別控除と呼ばれる節税特例を利用できないこととなっています。そのため、親に売却益が生じてしまうケースでは、親に売却による所得税や住民税が発生します。

親子間売買は不可能ではありませんが、買主の子が住宅ローンを組みにくく、また適正価格で取引する必要があり、さらに売主の親が節税しにくいことが注意点です。

名義変更の必要書類

売買で名義変更する場合には、以下の書類が必要となります。

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名義変更にかかる費用

売買を原因とする登録免許税は、固定資産税評価額に2%(原則税率)を乗じて求めます。

  • 登録免許税=固定資産税評価額×2%

ただし、2026年3月31日までに行う「土地」の売買による所有権移転登記の税率は、1.5%に軽減されています。

また、以下のような要件を満たす中古住宅を売買で購入すると、登録免許税の軽減措置があります。

【登録免許税の軽減措置を受けられる中古住宅の要件】
・床面積が50平米以上
・以下のいずれかに該当すること
 イ.1982年(昭和57年)1月1日以降に建築されたものであること。
 ロ.新耐震基準に適合することが証明されたものであること、または、既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入しているもの(その家屋の取得の日前2年以内に契約の締結をしたものに限る。)

軽減措置が適用される場合の売買の税率は、下表の通りです。

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※土地と建物を同時に登記する場合には、土地についても0.1%が適用されます。

また、売買による所有権移転登記を司法書士に依頼した場合には、手数料は3~11万円が相場です。

2. 死亡後の相続で親の家の名義変更する方法

家系図と家の模型

この章では、例えば父が死亡したときのようなケースで、相続で家の名義変更を行う場合について解説します。

依頼先は司法書士と行政書士のどっち?費用はいくら?

名義変更の依頼先は、司法書士となります。
行政書士には法律上の登記の代理申請を行う権限がありませんので、登記の代理申請を依頼するなら司法書士です。

相続による移転登記の司法書士手数料の相場は、地域や物件の内容によっても異なりますが、3~11万円程度となります。

名義変更に必要な書類は?

相続による名義変更には、「法定相続」「遺言」「遺産分割協議」と3種類の分割方法があります。
名義変更に必要な書類は、名義変更方法によって若干異なります。
それぞれの方法で名義変更に必要な書類は、下表の通りです。

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法定相続での遺産分割

法定相続とは、法定相続割合で共有の状態で名義変更する方法のことです。
法定相続割合は、下表のように定められています。

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例えば、父親が死亡し、残された相続人が配偶者と2人の子の3人である場合、法定相続割合は、母が50%、1人目の子が25%、2人目の子が25%という割合なります。

遺言による遺産分割

遺言とは、遺言者(被相続人)の生前の最終意思を尊重し、その意思の実現を死後に図る制度のことです。 遺言書が残っている場合には、遺言に従って遺産を分割することになります。

遺産分割協議による遺産分割

遺産分割協議とは、被相続人の死亡後、相続人の意思で分割方法を決める話合いのことです。
法定相続以外の方法で遺産の分け方を決めたい場合や、遺言書があっても遺言書とは異なる方法で分割したい場合には、遺産分割協議によって分割を行います。
遺産分割協議で決めた内容を記載した書面のことを、遺産分割協議書と呼びます。

遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の同意が必要です。
よって、遺産分割協議書は、相続人全員の実印による署名押印が必要となります。

なお、遺産分割協議書は法的な形式要件を満たさないと無効となることから、弁護士や司法書士等に作成を依頼することが一般的です
遺産分割協議書の作成費用の相場は、遺産総額の0.5%~1%程度となっています。

名義変更で生じる税金は?

相続の場合でも、名義変更に必要な税金は登録免許税です。
相続を原因とする登録免許税は、固定資産税評価額に0.4%を乗じて求めます。

  • 登録免許税=固定資産税評価額×0.4%
名義変更で相続税は発生する?

相続税は名義変更をしたから発生するというわけではありません。
名義変更をするか否かに関わらず、一定の要件を満たしていると相続税が生じます。

相続税が発生する要件は、被相続人(死亡した人)が基礎控除額以上の財産を残して死亡した場合です。

財産とは、土地や建物、株式・公社債等の有価証券、預貯金、現金のほか、金銭に見積もることができるすべての財産のことです。
ただし、負債(住宅ローン等の借金のこと)がある場合は、その負債は控除されます。

これらの遺産を全て合計し、負債や葬式費用などを差し引く所定の計算を行って求めた「正味遺産額」が基礎控除額を超えていれば、相続税が発生するということです。

基礎控除額は以下の計算式で求めます。

  • 基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、相続人が配偶者と2人の子で合計3人の場合は、基礎控除額は4,800万円です。

なお、国税庁の「令和3年分相続税の申告事績の概要」によると、2021年の相続税を納税した人の割合は全国で9.3%となっています。

参考:国税庁「令和3年分相続税の申告事績の概要」

全国の90.7%の人は相続税の納税義務がなかった、言い換えると、90.7%の被相続人は遺産が基礎控除額を超えていなかったということになります。
つまり、相続税とは一部の資産家のみに生じる税金であり、多くの人には発生しない税金であるということです。

3. 自分で名義変更する方法

不動産の登記簿

司法書士はあくまでも代理人の立場であり、本来、登記申請は自分でもできる手続きです。
ここでは、自分で名義変更するやり方について解説します。

どこでやる?名義変更の場所は法務局

不動産の名義変更の登記手続きは、対象の不動産を管轄している法務局です。
例えば、大阪市の中央区と旭区、城東区、鶴見区、浪速区、西成区にある不動産は、大阪法務局(本局)が扱っています。

東京に住んでいる人が、大阪市浪速区の不動産を名義変更したい場合、大阪法務局で手続きを行う必要があるということです。

自分で登記を行う場合は、登録免許税も自分で納税する必要があります。
通常は、法務局に行く前に銀行に行って登録免許税を支払います。銀行の窓口で納税を終えると、領収書が発行されますので、その領収書を持参して法務局に行くという流れです。

自分で登記手続きを行う場合には、間違いを防ぐためにも事前に法務局で登記手続きの方法を聞いてから行うことをおすすめします。

相続の名義変更はいつまで?

相続の名義変更は、2024年4月1日より義務化されます。
2024年4月1日以前に発生した相続に関しても義務化の対象となっているため、義務化前に相続が発生しても名義変更は必要です。

相続登記の期限は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権の取得をしたことを知った日から3年以内」となっています。
正当な理由がないにも関わらず、相続登記の申請を怠った場合には、10万円以下の過料が課されます。

まとめ

以上、親から子への家の名義変更について解説してきました。
親から子へ家の名義変更を行うケースは、生前に行う場合と死亡後に行う場合があります。生前に行う方法としては、贈与もしくは親子間売買がありました。

死亡後に相続で名義変更をする場合には、司法書士に依頼するもしくは自分で行うといった方法があります。
親から子への家の名義変更を変更する際の参考にして頂ければ幸いです。