猫の腎臓病薬 開発進む 来年後半の治験目指す

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猫の「宿命の病」と呼ばれる腎臓病の治療薬の開発が、現実味を帯びてきた。腎臓病発症の主な原因は尿の通り道の詰まりと組織の炎症。それを改善する可能性があるのがAIMだ。AIM医学研究所(東京)の宮崎徹所長ら研究チームは、来年後半の治験開始を目指している。

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猫は5歳頃から腎機能に異常が出始め、腎臓病で死ぬことが多いが、その理由は長らく不明だった。宮崎所長は東京大大学院医学系研究科教授だった2016年、猫はAIMが先天的に機能しないため、尿の通り道でマクロファージ(貪食細胞)による老廃物の除去がされず、腎臓病になりやすいことを明らかにした。

同研究所は将来の治験を見据え、昨年4月からエルムスユナイテッド動物病院グループ(東京)と学術研究を始めた。進行した慢性腎臓病の猫約10匹を対象に、飼い主の承諾と倫理委員会の承認のもと、AIMを試験投与した。

宮崎所長は「学術的な試験投与とはいえ、想定を上回る良い結果が出た」とした上で、「26年を目標に猫用の医薬品として農林水産省の承認を得たい」と語る。研究成果をまとめた論文が、今年度中にも発表される見込みだ。

獣医師の荒川弘之・同グループ社長は「腎臓病の治療薬は猫の飼い主が待ち望むもので、世界的な需要が見込める」と話す。

◆AIM =人やマウスなど動物の血中にあるたんぱく質。スイスのバーゼル免疫学研究所(当時)の主任研究員だった宮崎徹氏が発見し、1999年に論文で発表。白血球の一種「マクロファージ」を長生きさせる性質が最初に見つかり、その性質を意味する英文の頭文字から命名した。