住民税の金額は「年収」で変わる!?「年収600万円・400万円・250万円」でどのくらい違う?

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住民税(個人住民税)は、その年の1月1日時点で、市町村(都道府県)に住所がある人に対して課税される税金です。個人住民税には、所得に応じて納める「所得割」と、所得に関係なく定額で納める「均等割」があります。
所得割があるため、個人住民税は所得によって異なるといえます。また、所得は収入(年収)から算出されるので、個人住民税は年収によって異なるともいえます。本記事では、年収によって個人住民税の額がどれくらい違うのかを解説します。

住民税額の計算方法

住民税は、所得割と均等割を分けて算出し、最後に合算して求めます。住民税額の計算の手順は、以下のとおりです。なお、環境税が加算されるなど、住民税は地域によって異なる場合があります。

1.収入から必要経費などを控除し、所得金額を求める
2.所得金額から所得控除をし、課税所得金額を求める
3.課税所得金額に税率10%を乗じ、その額から調整控除・税額控除をして、所得割額を求める
4.所得割額と均等割額(5000円)を足し、住民税額を求める

上記手順に記載された「必要経費」「所得控除」「調整控除」「税額控除」の内容は、以下のとおりです。

・必要経費:「収入」が給与収入なら「給与所得控除」、年金収入なら「公的年金等控除」など
・所得控除:基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除など
・調整控除:人的控除(基礎控除、配偶者控除など)ごとに定められた金額
・税額控除:住宅ローン控除、寄付金控除など

年収600万円、400万円、250万円のときの住民税の計算例

以下では、年収600万円、400万円、250万円のとき、住民税はいくらになるのか、前章の手順に従い計算します。なお、計算するに当たり、以下の条件を設定します。

・家族構成:夫婦と子ども2人(19歳と16歳)
・収入:収入は夫の給与収入のみ(妻と子ども2人には所得が無い)
・所得控除:基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除
・税額控除:特になし

所得金額の計算

まずは所得金額を計算します。所得金額は、収入から給与所得控除額を差し引いて計算します。給与所得控除額の算出には、図表1の速算表を利用します。
図表1
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東京都主税局 「個人住民税」
速算表から算出した給与所得控除額、収入から給与所得控除額を差し引いた所得金額は、図表2のとおりです。
図表2

image筆者作成

算出された所得金額によって、所得割、均等割が非課税となる場合があります。例えば、東京23区内の場合、非課税となるのは図表3のような場合です。
図表3
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東京都主税局 「個人住民税」
今回の計算例において、年収250万円の場合が(1)に該当し、所得割・均等割ともに非課税となります。

課税所得金額の計算

次に、課税所得金額を計算します。課税所得金額は、所得金額から所得控除を差し引いて計算します。具体的な計算例は、図表4のとおりです。なお、社会保険料控除および生命保険料控除は、仮の金額を用いています。
図表4
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筆者作成

所得割額の計算

所得割額は、課税所得金額に税率10%を乗じて計算します。計算結果は、図表5のとおりです。
図表5
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筆者作成

住民税額を求める

最後に、所得割額から調整控除額および税額控除を差し引き、均等割と足し合わせて住民税額を計算します。なお、今回の設定で税額控除はありませんので、所得割額から調整控除を差し引いた額を、均等割と足し合わせて住民税額を計算します。調整控除額は、図表6のように計算します。
図表6
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東京都主税局 「個人住民税」
調整控除額を計算すると、図表7のようになります。
図表7

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筆者作成
以上から住民税額を計算すると、図表8のようになります。
図表8
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筆者作成

まとめ

今回は、個人住民税をテーマに、計算方法と年収による住民税額の違いについて解説しました。年収による住民税額の違いについては、図表9のとおりです。
図表9
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筆者作成

会社員の場合、個人住民税は給料から源泉徴収されます。そのため、住民税を納めている意識が無い人もいるかもしれません。個人住民税の「決定通知書」は、毎年5月ごろに送られてきます。本記事を参考に、自身の決定通知書を確認してみることで、住民税の計算方法への理解が深まるのではないでしょうか。

出典

総務省 個人住民税
東京都主税局 個人住民税
全国健康保険協会 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
厚生労働省 令和5年度雇用保険料率のご案内
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー