“腎臓病は安静第一”の常識は昔の話?「積極的に運動したほうがいい」「タンパク質の適正摂取を推奨」の新常識

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腎臓病患者は安静第一で運動してはいけないと言われていたが…(イメージ)

 血液を濾過して尿をつくるほか、身体に必要な水分や電解質、血圧の調整などを司る腎臓。加齢とともに不調をきたしやすい腎機能の改善には、カリウムを多く含むスイカがいいとされてきた。

 しかし、腎機能が衰えた人にスイカの食べすぎはよくないと語るのが、上昌広医師(医療ガバナンス研究所理事長)だ。

「カリウムは健康な人には身体に必要なものです。特に塩分過多の食生活の人は、余分なナトリウムの再吸収を抑制して尿中へと排出する働きがあるため、カリウム摂取は理に適っています。

 しかし、腎機能が低下しカリウムの排出機能が衰えると、高カリウム血症のリスクが生じる。程度問題ではありますが、腎機能が衰えた人が良かれと思ってスイカをたくさん食べ続けることは避けるべきです」

 また、10年ほど前までは腎臓病患者は安静第一で運動してはいけないと言われていたが、最近の常識では腎臓病の患者は積極的に運動をしたほうがいいとされている。

「運動が尿中のタンパク質を増やして腎障害を悪化させるとして、あまり体を動かさないことが原則でした。ところが近年の様々な研究から、適度な運動による腎機能の改善や、タンパク尿の減少、体力や生活の質の向上といった効果が認められてきています」(同前)

 慢性腎臓病患者に対するタンパク質摂取の制限も様変わりしている。

「腎臓が悪い人にとってタンパク質は老廃物を増やし腎臓を傷めるとの理由から摂取が厳しく制限されていました。1980年代に米ハーバード大のブレンナー教授が唱えた『過剰濾過説』という考え方です。

それが、1990年代以降の臨床試験の結果により、タンパク質を摂取しても腎臓への影響は変わらないことがわかってきました。むしろ高齢者はタンパク質の摂取制限が筋力の低下を招き、転倒・骨折・寝たきりのリスクを高めかねないため、適切な摂取を推奨する方向に話が変わっています」

 新たな知見が次々と常識を塗り替えている。

※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号