コロナの次は…『はしか』3年ぶり流行“兆し” 免疫ない人は“ほぼ100パーセント”うつる強い感染力 はしか原因で“寝たきり”の難病患者を取材 母の後悔「ワクチン打てていれば」

極めて強い感染力の感染症「はしか」が3年ぶりに流行の兆しを見せています。なぜこのタイミングで感染が広がっているのか?そして、はしかが原因で発症した難病患者を取材しました。

■3年ぶりに“はしか”流行の兆し ワクチン・検査の問い合わせ増える

大阪市内にある内科医院。保管庫の中に常備されているのは…はしかのワクチンです。

Q.麻疹(はしか)ワクチンは今、いくつぐらい保管を?

【松岡医院 中村容子院長】
「5つぐらいありますね。一応在庫確保はしております」

「はしか」とは、麻疹ウイルスによる感染症です。空気感染で広まり、感染すると39度以上の高熱と発疹が現れます。

この医院では、コロナ禍前は、はしか用のワクチンの在庫は1、2個でした。しかし、5月から常備する数を増やしています。

【松岡医院 中村容子院長】
「週に十数件(問い合わせを)いただいて、『麻疹の抗体の検査はできますか?』とか『ワクチン接種は可能ですか?』とか」

いま、国内ではしかが流行の兆しを見せています。4月下旬、東京でインドから帰国した男性がはしかに感染したのが確認され、その後、その男性と同じ新幹線の車両に乗った男女2人の感染も確認されました。

東京都内ではしかの感染が確認されるのは、3年ぶりで国も危機感を強めています。

5月16日に、加藤勝信厚労相が会見を行いました。

【加藤勝信厚労相】
「免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100パーセント(近くの人が)感染する。母子手帳で過去2回の麻疹(はしか)のワクチン接種歴が明らかでない場合、あるいは、過去に感染したことがない場合は予防接種の検討をいただきたい」

厚生労働省は、ワクチンを2回接種することで感染を防ぐ十分な抗体を得ることができるとしていますが、今の30歳から50歳代は1回しか接種していない人もいる世代です。

さらに新型コロナウイルスの流行とともにはしかワクチンの接種率は低下。数年間ストップしていた海外との行き来が再開されたことも流行への懸念に拍車をかけています。

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■はしかが原因で“寝たきり”の難病に

はしかの恐ろしさは感染力の強さだけではありません。大阪府に住む幸輝さん(30)は、はしかが原因の難病に20年近く苦しんできました。

幸輝さんの母親は、“後悔”を語ります。

【幸輝さんの母】
「あの時私が仕事をしていなければ、保育園に預けていなければ、はしかがはやっていなければ、こんなことにならなかったのかなと思って。それは本当に申し訳ないことをしたなって」

幸輝さんは、はしか患者の10万人に1人が発症するとされる難病「SSPE」亜急性硬化性全脳炎を患っています。

はしかになった後、ウイルスが脳に持続的に感染することで数年から10年ほどの潜伏期間を経て発症します。

幸輝さんは発症からおよそ3カ月で寝たきりになりました。いまは体のほとんどを自由に動かすことが難しく、移動は車いすでの介助が必要です。

そもそも幸輝さんがはしかに感染したのはまだワクチン接種の対象年齢に達していない生後10カ月のころです。当時は大事に至らず、すくすくと成長していきました。

異変が現れたのは、小学6年生の夏でした。

【幸輝さんの母】
「運動会の練習が始まった時に『よくこけるんだ」という話を息子から聞いて」

その後も異変は続き、好きだったゲームが上手くできなくなったり、口数が極端に減ったりする中で検査を繰り返すうちに難病だと分かりました。

【幸輝さんの母】
「(発症から3カ月後に)余命宣告もされたんです。早ければ3~4カ月。長くても2~3年でこの子は亡くなってしまうと。最後に一言、私がはっきりとこの子がしゃべったのを聞いたのが、『俺死ぬのかな』って…」

母親の献身的な支えもあり、大きな発作なども乗り越えながらことし30歳を迎えた幸輝さん。

今、幸輝さんの母が思うこととは…

【幸輝さんの母】
「はしかにかかった後、必ずこの病気を発症するわけではないんです。可能性はすごく低いと思います。でも、はしかの感染者が増えれば、その可能性は増えますよね。なので、感染者を増やさない。ワクチンを打てる体なんだということが分かっていれば、それは是非検討していただきたいと思います」

感染すれば難病につながる恐れもある“はしか”。ワクチン接種などできる備えが必要です。

(関西テレビ「newsランナー」6月6日放送)