北朝鮮の〝奇妙な兆候〟日本海離島への漂流ゴミにみる 食糧難のはずが…嗜好品の山「地方都市でも富裕層が存在するのでは」識者

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日本海に浮かぶ離島に押し寄せる漂着ごみ(提供写真)

北朝鮮は軍事偵察衛星の打ち上げに失敗したが、「可及的に早い期間内に第2回の打ち上げを断行する」と強気の姿勢を見せている。だが、コロナ禍での鎖国政策が原因の食糧不足で、「餓死者が出ている」という情報もある。北朝鮮ウオッチャーの金正太郎氏は、日本海の離島にある漂着ゴミの〝定点観測地点〟から「奇妙な兆候」を報告する。

北朝鮮のビールやジュース、歯磨き粉のチューブなどもある(提供写真)

北朝鮮のビールやジュース、歯磨き粉のチューブなどもある(提供写真)

日本海に浮かぶ離島には、本州とは比較にならないほど大量の漂着ゴミが押し寄せる。大半が中国や韓国、ロシアの物だが、数%は北朝鮮由来のモノが紛れ込んでいる。今年も離島まで足を運び、冬から春にかけての季節風と海流によって運ばれた漂着ゴミの山の中から、北朝鮮製の生活雑貨や食品容器を拾い出してみた。

フッ素入りの歯磨き粉や、毛の部分を黒く染めた歯ブラシといった日用品のほか、わずか1カ月前の製造日が刻印されたパインジュースのボトルも見つけた。

特に目立つのは、フルーツ系ジュース飲料や、ココア味炭酸ジュースとラベルに印刷されたソフトドリンクのペットボトルだ。「銀河水生ビール」と印字された約1リットル入りのボトルもあった。

韓国・聯合ニュースは今年2月、軍事境界線近くの開城(ケソン)で1日当たり数十人の餓死者が出ていると報道した。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は3月上旬、農業政策幹部らが穀物などの生産不振について一斉に謝罪したと伝えている。

食糧難とは無縁の嗜好(しこう)品のごみばかりが、なぜか日本に漂着している。全部飲み干さず、少し中身が残ったボトルも少なくない。

こうした兆候は何を意味するのか。

宮塚コリア研究所(甲府市)の宮塚利雄代表=朝鮮近代経済史=は「外国のテレビ番組にペットボトルが映し出された影響で、北朝鮮でも同じ物を生産している。昔は、空のボトルが市場で売られるほどだったが、今は一部の地方都市でも富裕層が存在するのではないか」と、北朝鮮の格差社会を象徴すると指摘している。