貧乏人を苦しめる天下の悪法「旧車増税」! ムリしてでも増税対象のクルマを買い替えたほうが得なのか?

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この記事をまとめると

■自動車税の納期限である5月31日が過ぎた

■登録した年から13年が経過すると自動車税の重課対象となる

■増税対象の旧車は買い替えたほうが得なのだろうか?

自動車税の重課は最大1万7600円

 自動車税の納期限である5月31日が過ぎたが、あなたは納税済みだろうか。

 ユーザーにとって毎年恒例の憂鬱な納税といえるが、この時期になると新たに自動車税の重課対象となったオーナーから怒りの声が聞こえてくる。一方で、もう新車に買い替える予算もなく、もう何年も重課されているオーナーからすると諦めにも似た心境になっているかもしれない。

 ご存じのとおり、ガソリン車において初めて登録した年から13年が経過すると自動車税の重課対象となり、おおむね15%ほど税額が増えてしまう。通称「旧車増税」と呼ばれる天下の悪法だ。

 さらに令和元年10月1日以降に登録したクルマは自動車税が軽減されたため、新車との差は拡大している。つまり、同じ排気量であっても、自動車税の税率は「13年経過車」、「令和元年9月30日以前登録車で13年に達していないクルマ」、「令和元年10月1日以降に新規登録したクルマ(新車)」の3つにわけることができる。

 もっとも排気量の小さい1リッター以下の自動車税ではどのようになっているのだろうか。具体的にトヨタ・ヴィッツと、その後継モデルであるヤリスを比べてみると以下のようになる。

初代・2代目ヴィッツ:3万3900円

3代目ヴィッツ:2万9500円

ヤリスと3代目ヴィッツ後期:2万5000円

 初代ヴィッツに乗っていると3万3900円の重課となり、ヤリスの1リッター車を新車で買えるユーザーは2万5000円で済む。古いクルマを大事にしていると、8900円も増税になってしまうのだ。

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トヨタ・ヴィッツ(初代)のフロントスタイリング

 自動車税は0.5リッターごとに税率が変わり、最大で6.0リッター以上までの10段階となっている。旧車増税対象車と新車の自動車税(自家用)を比較して整理すると次のとおりだ。

1.0L以下:新車2万5000円 旧車3万3900円

1.0超1.5L以下:新車3万500円 旧車3万9600円

1.5超2.0L以下:新車3万6000円 旧車4万5400円

2.0超2.5L以下:新車4万3500円 旧車5万1700円

2.5超3.0L以下:新車5万円 旧車5万8600円

3.0超3.5L以下:新車5万7000円 旧車6万6700円

3.5超4.0L以下:新車6万5500円 旧車7万6400円

4.0超4.5L以下:新車7万5500円 旧車8万7900円

4.5超6.0L以下:新車8万7000円 旧車10万1200円

6.0L超:新車11万円 旧車12万7600円

 毎年、これだけの差があると知ると気が重くなるかもしれない。とはいえ、もっとも差が多い6リッター超のクラスであっても新車との差は1万7600円に過ぎないともいえる。自動車税が重課されるという理由だけで新車に買い替えたとしても、その差額を回収できるはずもない。ましてエンジン車を買ってしまえば、いまの制度のままでは13年後には増税対象となるのだから意味がない。

 旧車増税を認めるつもりはなくとも、重課された自動車税を払っているほうが新車を買うよりクルマ関係の出費を抑えることができるといえるのだ。

サンクコストバイアスには気をつけたい

 では、燃費性能で比べるとどうなのか?

 初代ヴィッツの時代のカタログ値は10.15モードで、現在はWLTCモードとなっているため比較することは難しいが、カタログ値を振り返ると、初代ヴィッツの1リッター車は19.6~22.5km/Lとなっていた。一方で、ヤリスの1リッター車は19.6〜20.2km/Lであるので、計測モードを無視すればさほど変わらない。

 仮に初代ヴィッツが経年劣化などでカタログ値の半分程度の燃費性能になっていたとしても10km/Lで走ることはできる。新車のヤリスがWLTCモードで走ったと仮定しても、年間に使うガソリン代は倍程度で済むといえる。

 仮に年間5000km走るとして、初代ヴィッツの使うガソリンは500リットルで、ヤリスは250リットル。レギュラーガソリンを160円/Lとして計算すると、年間の燃料代は初代ヴィッツが8万円で、ヤリスが4万円だから、その差は4万円となる。

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トヨタ・ヤリスのフロントスタイリング画像はこちら

 自動車税と燃料代に絞って年間維持費・ランニングコストを比較すると、初代ヴィッツはヤリスに対して5万円程度を多めに払うという計算になる。あらためていうが、この程度の金額差を埋めるためだけに新車に買い替えるというのは、愚の骨頂だ。

 もっとも旧車にこだわって大事にしているのではなく、単なる移動手段として所有しているのであれば、修理代などのコストも考慮していく必要がある。

 メンテナンスコストや、故障のたびに修理工場に持ち込む手間などを考えれば、手がかからない年式のクルマに乗り換えるほうが、QoL(生活の質)は上がるかもしれない。

 よく「前回の車検で20万もかけて修理したから、まだまだ乗らないともったいない」という話を聞くが、年式によっては「次回の車検ではもっと修理代かかるのでは?」と思うこともある。

車検のイメージ

 修理など過去に要したコストに影響されて将来的な判断が歪んでしまう状態を『サンクコスト(埋没費用)バイアス』と呼んだりするが、移動手段としてのマイカーであれば、サンクコストバイアスがあることを意識して、冷静に判断するのもユーザーの知恵といえる。

 旧車増税の対象になる年式というのは、故障が増えてくるタイミングや純正部品の供給が止まりはじめるタイミングと合致することが多い。その意味では、買い替えを考えるきっかけにするのは、あながち間違っているとはいえないだろう。