知らないと損する…親の死後3ヵ月以内にやらないと「絶望」する“相続”の手続き

現実問題として、定年後の人生を決めるのはカネだ。「貧すれば鈍する」ともいうが、資産が減り暮らしが厳しくなれば、心の余裕も失われる。値上げ続きの時代を乗り切るには、どうすればいいのか。

「人生の垢」をおカネに換える

自宅に眠っているモノを売れば、予想外の資産が生まれることもある。

「『ひかりのくに』『キンダーブック』といった昔の絵本や児童書に、実は高値がつくんです。子どもが成長したら処分されることが多いため、古い絵本などは希少価値が高くなる。戦前の古い絵本なら、100万円の価格がつくモノもありますよ。

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必ずしも高く買ったから高く売れるわけではないんです。重い百科事典を売りにきても、珍しくないから安値にしかならない。一方、哲学、思想、宗教、易占い、東洋医学、理工学といったジャンルの本は部数も少なく、悪くない値段で買い取ってもらえることが多い。国鉄時代の時刻表、昭和40年代以前の車のカタログも高値がつくケースがあります」(東京書房代表・和田達弘氏)

捨てるタイミングを失い、物置の奥にしまい込まれた「人生の垢」。本以外にも、大金に化けるモノはたくさんある。リサイクルショップ「アシスト」の及川進規氏は語る。

「ヤカンを上に載せる丸型のタイプなどの古いストーブは、レトロなデザインが人気で高値で買い取ってもらえることがあります。売れ筋は’70年代以前のアラジン、パーフェクション、ニッセンで、夏でもいい値段がつくものが多いです。

工夫しだいでおカネは確実に殖える

それ以外でもミシン、ラジカセ、VHSデッキが人気です。’50年代以前の古い扇風機にいたっては、動かなくてもそれなりの値段で買い取ってもらえます」

パソコンやスマホは、壊れていても専門店・業者であれば換金できる。水没して電源が入らない、液晶が割れて画面が見えない、といったモノでも、1万〜4万円程度の値段がつくことがある。

「餅は餅屋」で、モノを売る時も専門性が高い業者のほうが高値はつきやすい。とはいえ専門店は限られた場所にしかないので、ヤフオクやメルカリといったアプリを使ってもいいだろう。メルカリは全国1000ヵ所以上のドコモショップなどで「メルカリ教室」を開いており、使い方を習うこともできる。

ネットを使う場合は、商品に添える「キーワード」によって売れる値段が大きく変わってくる。株式会社ポジティブシンキング代表・堀川一真氏は語る。

「たとえば九谷焼の花瓶を5000円で出品し、なかなか売れないと仰る方がいました。しかしそこに『花鳥文』『本金青粒』という言葉を添えるだけで、10倍の5万円で売れたのです。骨董美術品収集家たちに響くキーワードがあるかないかで、買い取り価格は大きく変わります」

工夫すれば、おカネは確実に殖える。

意外と楽に稼げるお仕事

「朝6時から9時まで、週3で温浴施設が開店する前の清掃をやっています。時給は1100円くらいで、これで月に4万円くらいになる。しかも働いた後は、お客さんがほとんどいない一番風呂にも入らせてもらえるし、併設の食堂でまかないも食べられる。若い学生のバイト君とも毎朝話せて、日々の活力にもなっています」(72歳・女性)

資産を殖やしていくうえで、収入が心もとない人には「働く」という選択肢もある。この女性のように、働くことは収入だけでなく、生きがいにも繋がっていく。

「現在の仕事に満足している人の割合についてのリクルートワークス研究所の調査では、20歳の44・2%から30歳には36・8%まで下がり、50歳の35・9%まで低調に推移しています。ところが60歳は45・3%、70歳にいたっては59・6%が仕事に満足していると答えている。定年後は適度に楽しく働いている人が多いのです」(前出・長尾氏)

では意外と楽で、かつ稼げる仕事にはどんなものがあるのか。概ね55歳以上を対象に求人を紹介している「大田区 いきいき しごと ステーション」の担当者は語る。

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「人気があるのは事務系の仕事ですが、求人が多いわけではなく狭き門になります。年齢が上の方でも身体の負担が少なく、長く続けられる仕事としては、ビルの警備員があります。週3〜4日くらいで、月の手取りは12万〜16万円くらいになります」

コールセンターも就職しやすく、時給が1500円程度と高め。営業の経験などがあり、話し上手なら商品の説明等をする発信業務をすることもあり、時給は2000円以上を期待できる。

ここまで本格的に働くつもりではない、という人は地域のシルバー人材センターを頼ってみてほしい。週1〜2日で短時間の仕事は、ここに集まってくる。

たとえば、保育園での洗濯という募集の例も。週1回、2時間の勤務で、時給は980円。これでも月8000円近く稼げるので、家計の足しにはなるだろう。

マンション共用部分の清掃を朝9時から11時半まで、月2〜4回という募集もある。一回の勤務で2500円と民間の清掃より給料は安くなってしまうが、そこまで苦労せずに、確実に月5000〜1万円の収入が入ってくる。

広報誌の配布、観光ガイド、筆耕、刃物研ぎなど、さまざまな仕事に挑戦することもできる。頑張り過ぎずに、楽しく働いておカネをもらい、家計の赤字を埋めていく。きっと資産だけでなく、幸せも「倍増」できるはずだ。

一気に資産が減る「危ない相続」に要注意

せっかく資産を積み上げても、「危ない相続」に巻き込まれると、すべて台無しになる恐れがある。

「父が亡くなってから半年後、1000万円近い借金があったことを知りました。ところが父の自動車を売却した後だったため、相続放棄もできず借金を背負ってしまった」(64歳・男性)

相続=遺産をもらえるものと思い込んでいると、この男性のような失敗をしてしまう。亡くなった人に多額の借金があることを知ったら、原則死後3ヵ月以内に家庭裁判所に行き、相続放棄の申し立てをする。こうすれば、すべての遺産を放棄する代わりに、借金もチャラにできる。

「ところが3ヵ月を過ぎたり、遺産に手をつけてしまい相続放棄が認められなくなるケースが多いのです。他の家族に『相続放棄する』と言っただけで成立すると思っている人もいますが、これは勘違い。故人の住所を管轄する家庭裁判所に申述書や戸籍謄本などを提出しないと、相続放棄は成立せず、借金を抱えることになります」(相続実務士・曽根恵子氏)

ちなみに司法書士であれば約3万円、弁護士なら約5万円から代理申請を依頼できる。高く感じるかもしれないが、借金をゼロにできることを考えれば必要な出費だろう。

「危険な相続」は借金だけではない。おじ・おばといった遠い親戚に子どもがいない場合、自分にも相続の権利が回ってくることがある。資産がもらえるなら喜ばしいことだが、買い手もつかない空き家を押しつけられることもあるので注意が必要だ。150万円程度で済んだはずの解体費用も、空き家として放置されると500万円程度まで膨らむリスクもある。

「不動産の場合も相続放棄が可能です。とはいえ顔もわからない親戚の場合では、亡くなったことすら知らないケースもあるでしょう。そうすると『死後3ヵ月』は過ぎてしまう可能性が高い。

しかしあきらめないでください。実は相続放棄のルールは厳密には、『自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月』です。厄介な不動産が自分のところに回ってくるとわかったら、とにかく早く相続放棄に動いてください。放置していると、ほとんど関係ないのに「負動産」処分をさせられることになります」(曽根氏)

65歳から楽しく生きるために、おカネの心配から自由になっておこう。

「週刊現代」2023年5月27日号より