「餓死に追い込まれる」人もいる一方で悠々と暮らす人も…地域によってもらえる額が違う「生活保護の格差」の知られざる実態

5月10日、厚労省は2月の生活保護申請について、前年同月と比べ20.5%増の1万9321件となったことを発表した。増加は2カ月連続ということで、生活保護について改めて関心が集まっている。

生活保護はどこの地域で受けても全国一律で同一条件。そう思っている人も多いのではないだろうか。実は、生活保護は完全に公平な制度ではない。生活保護を受給しやすい地域もあれば、そうでない地域もあるのだ。

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それどころか、受給できる保護費の額や受給中の生活における自由度が驚くほど異なることもある。届くべき人に、しっかりとした額が支払われないと、生活保護の「不公平感」が広まってしまい、分断やモラルハザードをまねいてしまう。それは本当に、良いことなのだろうか。今回は、あまり知られていない生活保護の「地域格差」について話をしていく。

支給される生活保護費は級地制度によって決まる

生活保護の受給中に支給される生活保護費は、級地制度に基づき地域間で差がある。級地は各地域ごとに1級地から3級地まで3区分に分ける。そこからさらに、1級地-1、1級地-2というように各級内においても2区分に分けられる。

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基本的に数字が小さいほど都市部として位置づけられ、生活保護費は大きくなる。逆に数字が大きいほど地方として位置づけられ、支給される生活保護費の額は小さくなる。各区分の数字においても同様だ。

他の条件が同一であれば、1級地と2級地ないし3級地とでは、1級地の方が支給される生活保護費の総額は大きくなる。また、同じ1級地でも1級地-1と1級地-2では前者の方が生活保護費は大きな額が支給されることになる。

生活保護は最低限度の生活を保障するための制度だ。統計上、都市部ほど物価が高く、地方ほど物価が安い傾向にある。都市部も地方も、一律に同じ額が支給されていては公平性を欠く。それどころか「最低限度の生活を送る権利」について保障ができない可能性もある。国はそう考え、生活保護費の支給額について級地制度を用いているのだ。


級地制度によって格差が生じている現実

しかし、現実は非情である。適正に生活保護費の支給額を決定するための仕組みである級地制度によって地域格差が生じてしまっている。

例えば、1級地-1に属する東京都八王子市において41歳単身者の方が受け取る最低限の生活保護費(生活扶助と住宅扶助の上限額における合計額)はおよそ13万である。

それに対して生活保護費の一番低くなる、3級地-2に属する鳥取県日南町において受け取る生活保護費はおよそ10万となる。東京都八王子市の場合と比べて約3万円も低い金額だ。

「東京都内と地方とでは物価が違うから当然」、そう思われる方も多いだろう。が、必ずしもそうとは限らない。人や店も多く市場競争が街中で起こっている都市部と、人も店も少なく競争の怒りづらい地方とでは、都市部の方が物価の安いことも珍しくはない。

たしかに一部地場の生鮮食品は地方の方が安いかもしれない。しかし、都市部においても千葉の生鮮食品は存在している。さらに、都市部は競争原理が働き、激安店が多く存在している地域もある。それらを総合すると実質的な物価は、都市部の方が安いこともあるわけだ。

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また、飲食チェーン店のメニュー価格やコンビニでの商品価格、スマホの通信料など都市部か地方かに関係なく価格が決まっているものも多い。地方で暮らす人間にとってそれらの負担は都市部で暮らす人間よりも実質的には重い。

それにより、実質的に地方よりも安い生活コストで「悠々自適」に都市部で生活している生活保護受給者も一定数存在しているのだ。

生活保護を受けながら悠々自適な暮らしをしている人がいる一方で、ぎりぎりで生活している人もいる非常な現実がある。地域格差が生じたり、それをいいことに闇のビジネスも横行している。後編記事『生活保護の効率的受給のために「信じられない行動」をする人たちも…「生活保護格差」の知られざる話』では生活保護で起こっている社会問題の事例を詳しく紹介する。