「GAFA」の時代が終わり、突如台頭した「MATANA」の時代がやってくる!その頭文字となった企業が秘めた「ヤバすぎる実力」

マーケットの怪物「MATANA」の誕生

過去20年の株式市場を引っ張ってきた米メガテック企業の代名詞「GAFA」の時代が終わりを告げ、いま注目されているのは「MATANA」である。「MATANAっていったいなんだ?」と思われるかもしれないが、これからの投資を考えるうえで欠くことのできない注目分野だ。

そんな「MATANA」にとある半導体企業が組み込まれた。このことは、日本株投資を考える上で重要な示唆がある。

直近のマーケットの動向を見ても、日本の半導体銘柄は意外な動きを見せてきた。「MATANA」とは何かを紹介する前に、まずは半導体が、いまマーケットでどのように位置づけられているのかという解説から始めよう。

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マーケットは「GAFA」から「MATANA」へ Photo/gettyimages

「アメリカ景気後退」と「半導体」の意外な関係

米国を中心に本格的な景気の後退が懸念され始めている。

ISM製造業指数、非製造業指数ともに予想を下回り、3月の消費者物価指数も想定以上に鈍化するなど、数字にもはっきりと経済の鈍化が見え始めてきた。

株式市場にとっては、景気後退はその先の利下げなどの金融緩和期待を生み出すため、必ずしもマイナス要因だけではないものの、最近では悪い経済指標に対して素直に株式市場が下落する場面も増えてきた。本格的な企業業績の悪化を織り込み始めたのだろう。

悪化が深刻になるのは、まさにこれからだが、そのような環境下では、積極的に成長を狙った銘柄選択をするのは困難だ。しかし、それでもあえて推奨すべき業種および銘柄がある。

それが、半導体関連銘柄だ。

一般論としては、半導体需要は景気のサイクルに大きく左右される景気敏感株の代表選手というのがこれまでの常識であり、違和感を覚えるかもしれない。イメージとしても、景気が良くなればハイテク製品の需要が伸び、その中に組み込まれる半導体の数量も比例して伸びていくのは当然だ。景気が悪化すれば、その逆もまたしかりである。

この前提に沿えば、足元から半導体銘柄に投資をするのは、根拠に乏しいと感じるだろう。しかし、あえて半導体銘柄にポテンシャルを見出すのには、いくつかの理由がある。

コロナ禍で生じた「半導体」の異変

まず、半導体銘柄は、昨年後半に世界的に激しい下落を見せた。

それまでの、コロナ禍でのPCやスマートフォン、遠隔サービスの需要の急増に伴って発生した半導体バブルが崩壊したためである。しかし、米国の主要な半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の推移を見ると、崩壊後に底値を付けて以降、足元では堅調な回復を見せ始めている。

周知のように、昨年からすでに欧米の景気後退懸念は囁かれており、その環境下でもしっかりと反転しているのだ。

図:「SOX指数」と「米国10年債利回り」

この直近の半導体株の堅調さについては、「単に金利がピークアウトしただけで、成長株へと需給がシフトしただけのことだろう」という批判が出るかもしれない。

一般的に、金利の上昇局面では「割安株」が、下落局面では「割高株」が買われやすくなり、半導体は割高株の代表格からだ。

しかし、半導体株はそこまで単純なものではない。

金利下落で追い風の「半導体」

たしかに、直近の動きは金利の動きと明確な逆相関の関係性が見られるものの、コロナショック後は金利の上昇と半導体株の上昇が連動していた。

コロナショック後の期間は、いわゆる景気回復の初期段階に該当するため、実需を伴った業績の成長期待が織り込まれた結果といえるだろう。

足元も、金利自体は頭打ちで乱高下しているだけで、水準を切り下げたわけではない。にもかかわらず、半導体銘柄は明確に上昇のトレンドを描いている。金利の影響がゼロとは言わないものの、何らかの前向きな要素が織り込まれていると考えるのが自然だろう。

加えて、仮に足元の反転が金利の頭打ちによるものだとしても、米国の金利は今後もインフレの鈍化および景気の後退とともに中長期的に下落していく可能性が極めて高い。その際に、割高である半導体銘柄が相対的に有利になるという事実自体に変わりはないだろう。

実際に、日本株市場で東証33業種の業種別指数の予想PERの集計値を順位付けし、トップ10の数値と半導体関連銘柄の数値を比較してみると、半導体関連銘柄は7位にくる(下記の図を参照)。上位20%前後の位置にいるのだから、十分に高PER銘柄といっていいだろう。

図:東証33業種のPER上位10業種と半導体関連銘柄のPER

出所:Refinitiv Datastream

ちなみに、東証の業種分類に半導体の区分は存在しないため、半導体銘柄の定義はFTSE社がグローバル基準で提供しているICBサブセクター分類で半導体、もしくは製造装置に分類されている銘柄群である。

上位の精密機器、電気機器は半導体関連銘柄を多く含むため、半導体関連事業に直接的に関与していなくとも、大枠としては類似した業態と考えていいだろう。

そして、注目すべきはそれら「以外」の業種の顔ぶれだ。サービス業、医薬品、小売業、食料品、陸運、情報通信など、いわゆる内需・ディフェンシブのど真ん中の業種だ。つまり、テック、半導体以外の業種はすべてがディフェンシブ性の高い業種で占められていることになる。

これが意味するところは一体何なのだろうか。

「GAFA」から「MATANA」へ

シンプルに考えれば、もはや半導体銘柄は景気敏感の高リスク株ではなく、内需のディフェンシブ性を有する安定成長株のような体質へと変貌を遂げているのではないかという可能性だ。

考えてみれば、昨今の半導体需要は、ITバブルのような大きなパラダイムシフトは起こりにくいものの、小規模~中規模の技術革新に伴う需要の増大を散発的に生み出してきた。

2010年代前半からのAIブーム、その後の電力向けのパワー半導体、車載半導体、メタバース、そして足元で話題になっているチャットGPTなど、小粒ながらも断続的に様々な分野で革新が起こり、それが途切れずに現在まで続いていることが分かる。

米国ではかつて「GAFA(M)」と呼ばれる同国を代表するテック企業群の呼称があった。それが、今度は「MATANA」という新しい呼称が提唱されており、その中に半導体企業である「NVIDIA」が含まれることとなった。

図:GAFA(M)とMATANA

銘柄の多くはソフトの部分でテクノロジー・サービスを提供する企業であるが、その中で製品としての半導体企業が組み入れられたのは、それだけ米国にとって半導体が必要不可欠な存在としての地位を築いたことに他ならないだろう。

コロナ禍における半導体特需とその後の反動は、いわゆるバブルとしての異常値の動きである。

それが正常化した現在、ディフェンシブ株とともに安定性と成長性が織り込まれた結果として、一時の急騰時についた高いバリュエーションを維持しているのではないだろうか。

だとすれば、景気後退時における需要の減退が軽微にとどまる可能性を示しているのと同義であり、半導体株のディフェンシブ化が近い将来に達成されるのであれば、今後の景気後退時の投資のひとつの選択肢として考えるのも悪くはなさそうだ。

さらに後編記事『「日本の半導体」も大復活へ!「チャットGPT」が引っぱる「日本株の未来」と要注目の「日本株16」を一挙“実名”公開する!』で、アメリカ経済の新エンジンに絡んでいきそうな日本の半導体銘柄を紹介しよう。