日銀・植田総裁が記者会見、金融緩和「続けていくのが適当」…物価2%「簡単な目標ではない」

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記者会見に臨む植田和男総裁(10日、日本銀行本店で)=代表撮影

 日本銀行の植田和男総裁(71)は10日夜、就任して初の記者会見を日銀本店で行い、現在の大規模な金融緩和について「続けていくのが適当だ」と語った。一方で、緩和策が長期化していることから、さらに緩和が必要な場合には、「副作用に配慮しつつ持続的な枠組みを探っていく」と、修正の可能性を示唆した。日銀は、新体制のもとで初めての金融政策決定会合を今月27、28日に開く。

 植田氏は会見で、「物価の安定というミッション(使命)の総仕上げに努力していきたい」と抱負を語った。持続的、安定的な物価上昇率2%を目指す考えも示したが、「そう簡単な目標ではない。有限の時間内で達成する強い見通しは申し上げられない」と語った。

 日銀は現在、短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度に操作している。国債を大量に買い入れ、市場の取引が細るなど機能に悪影響が生じているが、植田氏は「副作用が目立っているから導入がまずかったという結論にはならない」との考えを示した。

 もっとも、日本経済は1998年から長らく物価が持続的に下落するデフレに陥った。植田氏は日銀が20年以上にわたって金融緩和策を続けていることを念頭に、「全体を総合的に評価して、今後どう歩むべきかという観点からの点検や検討があってもよいかと思う」と、述べた。

岸田首相と会談後、取材に応じる日本銀行の植田和男総裁(10日午後、首相官邸で)=源幸正倫撮影岸田首相と会談後、取材に応じる日本銀行の植田和男総裁(10日午後、首相官邸で)=源幸正倫撮影

 会見に先立って植田氏は、首相官邸で岸田首相と会談した。日銀が物価上昇率2%の目標を「できるだけ早期」に実現することを盛り込んだ、政府・日銀による2013年1月の共同声明について意見を交わした。会談後、記者団の取材に応じた植田氏は「考え方は適切で、直ちに見直す必要はないという点で一致した」と明かした。別に取材に応じた岸田氏は、「緊密に連携をしていく」と語った。

 植田氏は国際経済学が専門で東大などで教授を務め、初の学者出身の日銀総裁だ。1998~2005年には日銀で金融政策の決定に関わる審議委員を務めた。