マスク着脱、きょうから「個人の判断」 強制しないよう配慮必要

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マスク着用の考え方

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新型コロナウイルス対策としてのマスク着用が、13日から屋内外を問わず「個人の判断」に委ねられた。医療機関の受診時や、混雑した電車やバスの乗車時などは引きつづき着用が推奨されるが、日常の生活では基本的にひとりひとりが着用するかを決める。

まだ着けた方がよい場面は

 政府はこれまで、他人とおおむね2メートル以上の距離が取れない場合にマスク着用を推奨してきた。

 13日からは、高齢者ら重症化リスクが高い人への感染を防ぐため、着用の推奨は、①医療機関の受診時②医療機関や高齢者施設への訪問時③通勤ラッシュなど混雑した電車やバスに乗車する時――の三つの場面に限定する。

 また、感染の流行時、重症化リスクの高い人が混雑した場所に外出する場合は、身を守るために着用が効果的だと呼びかける。

 学校では、4月1日から着用を求めないことを基本とする。

 各業界団体は、13日までに感染対策のガイドラインを改訂した。JRや私鉄各社でつくる「鉄道連絡会」は、利用者に対してマスク着用の協力を呼びかける項目を削除した。

加藤勝信・厚生労働相は10日、マスク緩和を前に「これを一つのきっかけに経済や社会活動が元に戻り、さらに発展にもつながっていけばと思っている」と述べた。

重要な感染対策に変わりはない

 一方で、厚労省は「マスクはこれまでと変わらず重要な感染対策の一つだ」と強調する。新型コロナは無症状や発症前の人が感染を広げることが多いためだ。厚労省の専門家組織も、5類移行後の「新たな健康習慣」を公表し、そのなかで「外出時はマスクを携帯し、必要に応じて着用」などと示した。

 このため、政府は不特定多数の人が集まる公共交通機関や飲食店などを念頭に、「事業者が利用者や従業員にマスク着用を求めることは許容される」との考えを示した。

 ただ、どのような場面でも、本人の意思に反してマスクの着脱が強いられることがないよう配慮を呼びかけている。

かつては「アベノマスク」「マスク警察」

 マスク着用は、コロナの流行が本格化した2020年から、手洗い、3密回避などと並ぶ基本的な感染対策の一つとして、政府が呼びかけてきた。

 食事や運動など生活のあらゆる場面で定着し、一時は品薄となった。政府は多額の税金を投入し、「アベノマスク」を全戸配布した。市民同士で着用しない人を見つけ出す「マスク警察」という造語も生まれた。

 22年、オミクロン株の出現などによって感染による重症化率が下がると、熱中症リスクなど着用による負の側面も注目されるようになった。

 とりわけ、子どもの発育への影響を懸念する声が強まり、同年5月、厚労省の専門家組織は「社会的要請が高まっている」として、外しても感染リスクが低い場面を例示。政府も「屋外で会話がなければマスクは不要」と発信するようになった。

 そして今年1月、政府は5月8日からコロナを感染症法上の5類に引き下げることを決定。あわせて基本的な感染対策についても見直し、2月、マスクは5類移行に先立って緩和する方針を示した。(神宮司実玲、枝松佑樹)